視線を合わせないからこそ話せることがある
──もう1つの新曲「横顔」についても聞かせてください。
この曲にはあえてクリスマスという言葉を入れてなくて、まるっとウインターソングとして書きました。「こういう曲を作ってみたい」というサウンド的なところから「ブンブンシナイデ」や「Cry」をアレンジしてくれたKAYさんと曲作りを始めて、歌詞とトップラインは「Beautiful」「Yellow」「優しさにふれるたびに」を共作したmiwaflowerさんと一緒に書きました。私はプライベートでよく車を運転するんですけど、実はそういうシーンを歌詞に落とし込んだことがなかったんですね。冬の車って、乗った直後は寒いじゃないですか。そういうことも歌詞にしてみたいなと思って。
──ということは「冷えたハンドルを 握りしめて」いるのは宮﨑さん?
そういうイメージですね。でも、男性と女性どちらともとれるようにはなっているかなと。
──運転席でも助手席でもお相手は“横顔”ですものね。女性がハンドルを握って男性が助手席というのは、上の世代の僕にはちょっと新鮮だし、素敵な構図だなと思います。
「車って言うとどうしても男臭くなるのと、あと昭和感がして、いなたくなるよね」とか言いながら(笑)。私は運転がすごく好きですし、それって自分らしさみたいなところでもあるので、ちょっと思い切って歌詞に取り入れてみました。
──歌の中ではっきり言っているわけじゃないけど、聴いていると位置関係が想像できる感じもいいですよね。「横顔」というタイトルも車を題材にした楽曲ならではですし。
車の中ではお互いが前を向いているから、向かい合うことがないじゃないですか。その位置関係だからこそ話しやすいことってたくさんあると思うんです。私はそういう状況の中で人の考えを聞いたり、自分の悩みを聞いてもらうのが好きなんですよ。
──同じ人と話すにしても、向かい合っているかどうかで話の内容や話し方が変わりますよね。
そう。なんとなく私の感覚なんですけど、視線が合わないからこそ、心理的に近付きやすい瞬間があるんじゃないかなと思います。
──「窓ガラスにそっと 指で書いた 滲んだ文字が 消えて浮かんでを 繰り返す」という歌詞も冬の車内を連想させます。
「そういえば学生の頃にバスに乗ったら、前に乗った人の落書きが浮き出てきたりしたなあ」と思い出したりしながら書きました。miwaさんはそんなに運転される方ではないので、「運転あるある、出してよ」と言われて提案していくんですけど、さっきお話ししたみたいに「どれもなんか男臭いね」「いなたいなあ」と笑ったりして、「でも、そういうもんですよねえ」みたいな会話をしながら歌詞を書いていきました(笑)。
──宮﨑さんはどうして自分は車を運転するのが好きなんだと思いますか?
自分だけの空間っていうのが何より好きなんですよね。そういうときにポッとメロディの断片が浮かんだりする。あと、ちょっとしたデジタルデトックスにもなりますしね。
──いい脳波が出るんですね。
そうだと思います。この曲では「君が好きだった 甘いメロディーが ラジオから流れてる」とも歌っていますけど、ラジオで懐かしい曲がかかったりする瞬間だったり、季節外れの曲がかかったりするのも楽しいんです(笑)。
クリスマスが大切なものになった
──EPを聴いて、宮﨑さんにとってクリスマスは大切な行事なんだと感じました。
もともとクリスマスシーズンの街の雰囲気は好きだったんですけど、曲を出すのが恒例になってから、ますます大切なものになってきました。クリスマスをきっかけにみんなで集まって、楽しんで笑顔になれる瞬間がいいんですよね。
──一番のクリスマスの思い出は?
実はあんまりないんですよ(笑)。小さい頃はサンタさんからプレゼントをもらえてうれしいとかはありましたけどね。幼少期の記憶は少ないほうなんですけど、ロンドンで過ごした幼稚園の頃に、クリスマス会で「赤鼻のトナカイ」や「ジングルベル」をみんなと一緒に歌ってパーティをしたのをぼんやりと覚えています。
──やっぱり子供のときの思い出が強いですよね。僕の家は親がわりと丁寧にクリスマスをやる人だったので、庭に植えたもみの木を鉢に移して家に持ち込んで、早くからツリーの飾り付けをしたりしました。
それが楽しいんですよね。オーナメントを1つひとつツリーに飾り付ける作業自体がワクワクするというか。私もクリスマスそのものの思い出よりは、その期間全体の気分の高揚みたいなものが記憶に残っています。
──クリスマスに恋愛のイメージが強い人もいると思いますが、宮﨑さんはファミリー寄りですか?
そうですね。大人になってからは友達同士で過ごすこともありましたけど、それも含めてファミリー感というか。
クリスマスライブは一夜だけのセットリストで
──12月16日にはEX THEARER ROPPONGIでクリスマスライブ「宮﨑薫 Christmas Live Noel in Harmony 2024」の開催が控えています。このクリスマスライブも、ファンの方たちとのファミリーミーティング的な気持ちで?
はい。これまでのクリスマスライブもまさにそういうイメージでやってきたんですよ。ファンの方は友人やパートナーと来てくれるんですけど、今回はお子さんの観覧もOKにしていたりするので、ぜひ家族で遊びに来てほしいですね。
──僕は夏の「宮﨑薫 Birthday Live Gimme Your Love!」(7月に東京・PLEASURE PLEASUREで開催されたバースデーライブ)にお邪魔しましたが、とってもアットホームな雰囲気でした。
あの日はバースデーワンマンだったこともあって、昔から私のライブを観に来てくださっているお客さんが多かったので、特にそういう雰囲気が強かったかもしれませんね。みんなを近く感じられる空間を作ることはいつも心がけています。セットリストにはすごくこだわりますしね。
──クリスマスライブは会場がもっと広いから……。
初めての方もたくさんいらっしゃるんじゃないかな。
──ですね。クリスマスEPの中だと「Baby It's Cold Outside」は特にライブ映えしそうです。
クリスさんはもちろん、この曲に参加してくださった寺地美穂さんをはじめ、THE JAZZ AVENGERSの中園亜美さん、WaKaNaさん、⽶澤美玖さんのサックス女子4人もゲスト出演してくださるんですよ。クリスマスソングにオリジナルも織り込みながら、一夜だけのセットリストで臨みます。ぜひ期待していただきたいですね。
──2024年ももう終わりですが、1年を振り返ってみて何か思われることはありますか?
去年の年末に「これまでで一番変化のあった1年だった」と感じていたんですけど、今年も同じくらい忙しなく動き回ったし、実りのある1年でした。配信シングルやこのEPと、今までで一番リリースも多かったですし、去年からさらにステップアップできたと実感しています。
──では最後に、2025年の目標を教えてください。
この1年、環境が変わったことですごく刺激を受けているので、そういった歩みを止めずにレベルアップしつつ、新しい音楽と出会いたいですね。あとは全国あっちこっちに行きたいです。今年はツアーで東京のほかに、愛知、大阪、宮城に行かせてもらったので、もっといろんなところにお邪魔してライブができたらいいなと思います。
公演情報
宮﨑薫 Christmas Live Noel in Harmony 2024
2024年12月16日(月)東京都 EX THEATER ROPPONGI
出演者
宮﨑薫
バンドメンバー:yas nakajima(Music Director, G, Cho) / 櫻田泰啓(Key) / 李令貴(Dr) / タルタノリキ(Mnp) / 千田大介(B) / miwaflower(Cho)
ゲスト:クリス・ハート / 中園亜美(S.Sax / THE JAZZ AVENGERS) / 寺地美穂(A.Sax / THE JAZZ AVENGERS) / WaKaNa(A.Sax / THE JAZZ AVENGERS) / 米澤美玖(T.Sax / THE JAZZ AVENGERS)
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プロフィール
宮﨑薫(ミヤザキカオル)
1989年生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。幼少期をロンドンで過ごし、音楽に囲まれた環境で育ったことで自然とシンガーへの道に進む。大学時代からピアノとギターで作曲を始め、卒業とともに音楽活動を本格化。地道に送り続けたデモテープが業界関係者の耳に留まり、2012年にメジャーデビューを果たした。2023年3月に父・ASKAとデイヴィッド・フォスターによるコンサート「ASKA featuring DAVID FOSTER PREMIUM CONCERT 2023」にゲスト出演し、12月には約4年ぶりとなる最新EP「Beautiful」をリリースした。2024年は7月から配信シングル「Gimme Your Love」「Cry」「優しさにふれるたびに」を3カ月連続でリリース。11月に初のクリスマスEP「A Timeless Christmas」を発表し、12月には東京・EX THEATER ROPPONGIで自身最大規模となるワンマンライブ「宮﨑薫 Christmas Live Noel in Harmony 2024」を開催する。
Kaoru Miyazaki Official Website
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宮﨑薫 KAORU MIYAZAKI (@kaorumiyazaki_official) | Instagram