ナタリー PowerPush - 宮崎薫
9つの物語で紡ぐ私の世界 メジャーデビュー作「9 STORIES」
日本武道館でいつかライブを
──今後こうしていきたいっていう理想の形みたいなものはあるんですか?
ひとつだけずっと思ってることは、とにかく日本武道館でいつかライブをしたいっていうことで。
──お、ここに来て割と大きく出ましたね。
はい(笑)。1人でもバンドででもいいから、武道館のステージに立ちたいです。そのイメージはすごい持ってます。子供の頃からいっぱいライブを観てきた中で、武道館のあの天井の感じとか、そんなに広くなくて近い感じがするところとか、どこに座ってもきれいだなーって思うんですね。憧れのアーティストたちがそこでライブをしてるので、私も絶対あそこに立ちたいっていう気持ちです。……すごいやりたいです。
──卒業して間もないのにこういうプレッシャーをかけるのもなんなんですけど、この歌を聴いて、「私もこういう気持ちを持っていたんだけど表現できなかった」「自分のことを歌ってくれてありがとう」っていう気持ちを持ってくれる人って実際たくさん出てくると思うんですよね。それって、この世界を大きく変えることにはならないですけど、人ひとりの人生は確実に変えることになると思うんです。こうやってアルバムを作ることで、自分がそういうことをしているっていうことをどう感じていますか?
……それは1年目の私にはすごく意地悪な質問ですよね(笑)。
──そうかもしれないね。お願いします。
今はまだ、そういう意識はないですね。でも、確かに自分が音楽に変えられてきた部分もありますし、そういうふうにしていく側になったんだなっていうことは思いますけど……でも、そういう人になったんだっていう意識はまだないっていうか。これからもっともっといっぱい歌を歌っていく中で実感していくのかなっていうふうに思いますけど。
──自分の音楽で人をどうにかしたいとか、何かを変えていきたいとかっていう気持ちよりも、まずは自分自身を確認したいっていう気持ちのほうが大きい?
多分、何かを変えたいとか勇気付けたいとかっていうよりは、今の自分をちゃんと歌にして、聴いてる人と同じ場所にいたいなって思って……。「がんばろう」とかって言ったりするのって、言い方悪いですけど、上からなやり方じゃないですか。でも私は常に同じ立場にいたいから、与えていくっていうよりも、共感してもらうことで何か影響が生まれればいいです。「がんばろうよ」「やってやろうよ」みたいに歌ってくよりは、「家へ帰ろう」もそうですけど、聴いてる人と一緒に楽しくなりたいですし一緒に悲しくなりたいですし、そういう歌を歌いたいなっていうことはすごく思います。
聴いてる人たちと同じところにいたい
──この世界にはいろんな人がいて、2人で話してるつもりだけど実際この部屋にもスタッフなど、いろんな人がいますよね。そうやって自分がいろんな人と同じ世界で同じ息吸って同じ時間を生きてるんだって自分の中で感じたいという気持ちなのか、それとも、自分とほかの人が一緒に交じってるっていう感情をあんまり持つことができなかったから、こうやって音楽をやることでそういう感情を持ちたいなっていう気持ちなのかっていうところはどうですか?
ああ、どうなんだろう……。寄り添える音楽にしたいというか、音楽で人と一緒にいたいと思ったのは最近だと思うんです。きっとそれは去年の3.11のこともあったんですけど、「がんばれ」とかじゃなくて──もちろん、どれだけツラいかとかどれだけ幸せかとかはわからないですけど──聴いてる人たちと同じところにいたい。まずそれを証明したいって強く思ったのは、去年のことが大きいかなって思いますね。
──それは具体的に言うと、私もひとりじゃないしみんなもひとりじゃないっていう感覚?
みんなもひとりじゃないよって思いたいですけど、実際はひとりなんですよね。
──そうですね。
「わかるよ」って言いながらも相手の気持ちはわからない。でも「わかりたい」って気持ちがあるから、自分もそういうふうに支えられてきたし自分もそうありたいというか。そういう気持ちはあったかもしれないですね。
──人って、人のことを知ろうとすれば知ろうとするほど自分とは違うなって思うし、孤立していく生き物だと思うんですよね。でもその事実を肯定することが、自分という存在を証明することにもなり、それを音楽にできるのは素晴らしい存在証明だと思うし。
そうですね。だから3.11のときも、「かわいそうだよね」とか「ツラいよね」とかって言って一緒に泣けないなって思いました。私にはもう計り知れないし……そう、計り知れない、そういう気持ちがありました。わからないけどわかりたい、みたいな。でも、そういう気持ちが多分誰かを支えてるんだと思いますし、そういう気持ちはこれからもすごく大事にしたいんです。
メジャーデビューアルバム「9 STORIES」/ 2012年10月10日発売 / avex trax
収録曲
- 君と空
- ByeBye
- 卒業写真
- Stay
- Gimme your love
- さよなら
- 家へ帰ろう
- タイムカプセルの丘
- Graduation from me
DVD収録内容
- 「君と空」ビデオクリップ
- 「ByeBye」ビデオクリップ
宮崎薫(みやざきかおる)
1989年生まれ。東京出身。幼少の頃をロンドンで過ごし、親の影響で常に音楽が身近にある環境で育ち、自然と人前で歌うようになる。学生時代はクラシックバレエとピアノ、トランペットを学びつつ、手伝いで友人のバンドに参加。都内のライブハウスで活動するも「自分で歌いたい」という気持ちが強くなり、ボーカリストとしての自分を再認識する。19歳のとき、音楽の仕事をすることを改めて決意。楽曲制作と同時にデモテープの作成を始める。2011年には地道に送り続けたデモテープが業界関係者の耳に止まり、イベント出演をきっかけに出会ったスタッフとともに楽曲制作を開始する。2012年、大学卒業と同時に音楽活動を本格的にスタートさせた。同年6月、タワーレコード限定にてインディーズデビュー盤「Graduation from me」をリリース。その後10月にはアルバム「9 STORIES」でavex traxよりメジャーデビューした。