MIYAVI|日本を再発見したサムライギタリスト

リスナーの感情に寄り添う

MIYAVI

──この「NO SLEEP TILL TOKYO」は、歌詞の展開といいBPMのつなぎといい、アルバムとしての一貫した連続性というか物語性が感じられます。

そうですか? 曲順を決めるときにBPMのつながりを意識した程度です。

──そうなんですか? だって今まで以上にアルバム全体の流れがはっきりしているというか。「Stars」で始まって、「No Sleep Till Tokyo」から世の中を見渡して、「Samurai 45」で改めて所信表明をして。さらに「Butterfly」からラストまでの展開といい、明確なドラマが描いているような気がしたのですが。

確かに流れはきれいですよね。バランスが取れているせいかもしれない。歌詞として意識したのは一人称というか自分。いろんな局面において、聴いてくれるみんなが歌いたいと思える曲を作りたかった。すべてがハッピーエンディングな曲じゃないけど、辛いとき、迷ったとき、後ろ向きなとき、聴いてくれる人たちの感情に寄り添えるものにしたかった。

──今や近年のMIYAVI作品では相棒とも言えるレニー・スコルニックが共同プロデュースでクレジットされていますが、サウンドメイキングは主にレニーが?

彼がメインですね。彼はほんまに、よう働いてくれます(笑)。あと、サウンドメイキングで言えば、リズムはまずデモで打ち込んだものをベースに、ドラマーを呼んで全曲で生ドラムを入れて、そのプレイに合わせて打ち込み直しています。ちょうどその時期、向こうでRed Hot Chili PeppersやBeckのライブを観たり、「The NAMM Show」でギターを弾かせてもらった経緯もあって、プリミティブなバンドサウンドのよさを再確認していて、デジタルの部分とどう混ぜていくか試行錯誤しながら進めていきました。やっぱり新しい世代のギタリストとして、そして“From TOKYO”のギタリストとして、ただロックのいい音を目指すのは違うというか。今の時代のビートと共存するギターの音を鳴らしたい。

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俺にも切なくなるときがある

──表題曲の「No Sleep Till Tokyo」については?

すべては“TOKYO”のワンワードに表れていると思います。東京を“TOKYO”という感覚で感じられるかどうか、世界でも東京含めアジアへの視線やフォーカスが今どんどん熱くなってきています。日本人の僕たちも、もっともっとグローバルな見方をしていいんじゃないかなと感じていて。めまぐるしくも、眩しい東京の未来をイメージしながら作りました。

──終盤、「Under The Same Sky」と「We Can't Stop It(Rewind)」の2曲の切なさと美しさにグッときました。

そう言ってもらえるとうれしいです。そう、切なかったんだよ、俺。これまでやってきたことは正しかったのか、自分の役割や天命だと感じてきたことは間違っていなかったのか、そんな迷いや葛藤に襲われた時期に書いたので、この2曲には強い思い入れがあります。

──先ほど感想としてお話した、このアルバムの一貫した連続性というか物語性は、そういうMIYAVIさん自身の切なさが感じられたかもしれません。

ああ、そういう意味ではそうなのかもしれない。いつも前のめりだからそう見えないかもしれないけど、俺にも切なくなるときというか、ちょっと弱いときはあるんですよ(笑)。「Under The Same Sky」で「それでも僕たちは同じ空の下で、同じ世代を生きている」というテーマを歌おうと思ったとき、やっぱり日本語で書こうと思ったんです。サビの歌詞も含めて、自分が歩いてきた道でもあるし、応援してくれているファンに対しての感謝の気持ちでもあるし、過去を振り返ったときの切なさで心がキュッとなる感じを、ネガティブじゃない形で表現したかった。「We Can't Stop It(Rewind)」もそう。走馬灯のような記憶の断片が散りばめられた世界にずっと堕ちていくようなイメージでした。この映画的というかシアトリカルなスタイルの作り方は、自分ではすごく気に入っています。切なさという感情は侘び寂びと言うとベタかもしれないけど、日本人独自の美徳というか美しさの表現でもあるから。

──以前、ファッションデザイナーの山本耀司さんからも、「俺たちの切なさや懐かしさを正しく翻訳する英単語ってないんだよね」というお話を聞いたことがあります。

そうだよね。ギターにアームを付けたのも、鍵盤と鍵盤の間の音階を表現したかったからで、そういった西洋の文化や表現では言い表せられない感情や感覚が、僕たちの文化には根付いている。

──つまり日本語で言うところの「行間を読む」ってやつですか?

うん。そういう意味で言えば、「Under The Same Sky」はネオJ-POPなのかもしれませんね。

MIYAVI

刀を抜かないサムライギタリスト

──改めて今作を見渡してみて、どう感じていますか?

端的に言えば、このアルバムの中にいるギタリストMIYAVIは、決してギターがブッ飛んだプレイをしているギタリストではないと思う。俺はエキセントリックなギタリストとしての俺自身のファンでもある。でも、今はリスナーが聴いたとき、シンプルに歌であり曲として「いいなあ」と感じてもらえるような曲を作りたいとも思っている。そういう意味では、初めて「誰も聴いたことのないサウンド作り」を意識しなかったアルバムとも言えます。「挑戦しないことが挑戦」と言いますか……。今までのアルバムは毎回が実験だったけど、今回は楽曲を聴いてくれる人たちや歌ってくれる人たちのことをイメージしながら作った。成長はしたいけど成熟はしたくないと思ってきたし、エキセントリックなギタリストしての自分が薄まることへの不安もあるので、ちょっと自分の変化に戸惑いを感じる瞬間もあります。でも、多分そういう流れって、無理に抗っても結果がよくないのはわかっているので、身を任せようと思っています。

──もっと言えば、サムライギタリストとして、今作は刀でチャンバラと言うよりも、刀を鞘に収めたまま、裸足で駆け抜けて雨に打たれているようなアルバムだと感じられました。

MIYAVI

そうだね。決して刀を振り回してはいませんね。収めたままではもちろん不安だけど、抜かずに戦わずして勝つことが理想ではあります。

──しかも、「伝えたいサウンド」ではなく「伝えたい歌」が先に立った分だけ、より視野が広がったというか、曲単位の表現の可能性はむしろ上がった気もしますし。

それは周囲からも指摘されます。「変わってきたじゃん?」って。自分自身、さらになんらかの発明が生まれそうな兆しを感じています。今回、ギターのプレイスタイルとしては「WHAT'S MY NAME?」のスラップスタイルと「Fire Bird」のギターサウンドが融合して、歌い手としても自分の声を一番おいしく鳴らせる歌い方とアプローチを見出せた。プラス日本語多めだから、日本のリスナーのみんなには、より伝わりやすいのかなと。これまでのいいとこ取りというか。そして、これが世界で客観的にどう響くのか、今年のツアーは、まずアメリカから始まります。

──新曲を海外で演奏するときも、同じように日本語で歌いますか?

もちろん、そのつもりです。海外のお客さんの反応を見るのが楽しみですね。どの国の人にも、一緒に大声で日本語を歌ってほしいですね。そして、また12月に日本に帰ってくるので、日本のみんなの声を聴きたいです。

イベント情報

MIYAVI「North America Tour 2019 "NO SLEEP TILL TOKYO"」
  • 2019年7月25日(木)カナダ ブリティッシュコロンビア州バンクーバー Vogue Theatre
  • 2019年7月26日(金)アメリカ ワシントン州シアトル Neptune's
  • 2019年7月27日(土)アメリカ オレゴン州ポートランド Crystal Ballroom
  • 2019年7月29日(月)アメリカ カリフォルニア州サンフランシスコ Slim's
  • 2019年7月30日(火)アメリカ カリフォルニア州サンタアナ Observatory
  • 2019年8月3日(土)アメリカ アリゾナ州ツーソン El Rialto Theatre
  • 2019年8月5日(月)アメリカ テキサス州ダラス Trees
  • 2019年8月6日(火)アメリカ テキサス州ヒューストン Scout Bar
  • 2019年8月7日(水)アメリカ テキサス州オースティン Come and Take It Live
  • 2019年8月9日(金)アメリカ メキシコシティ Sala Puebla
  • 2019年8月11日(日)アメリカ テキサス州サンアントニオ Vibes Event Center
  • 2019年8月13日(火)アメリカ イリノイ州シカゴ House of Blues
  • 2019年8月15日(木)アメリカ ミシガン州デトロイト El Club
  • 2019年8月16日(金)カナダ オンタリオ州トロント Queen Elizabeth Theatre
  • 2019年8月17日(土)カナダ ケベック州モントリオール Otakuthon Festival
  • 2019年8月19日(月)アメリカ ニューヨーク州ニューヨーク Sony Music Hall
  • 2019年8月24日(土)アメリカ ジョージア州アトランタ The Masquerade
MIYAVI「"NO SLEEP TILL TOKYO" World Tour 2019 Europe」
  • 2019年10月5日(土) フィンランド ヘルシンキ Tiivistämö
  • 2019年10月6日(日) イギリス ロンドン Islington Assembly Hall
  • 2019年10月8日(火) フランス パリ O'Sullivans Backstage By The Mill
  • 2019年10月9日(水) フランス ボルドー Rock School Barbey
  • 2019年10月10日(木)スペイン バルセロナ Salamandra
  • 2019年10月12日(土)スイス ジュネーブ Moulin Rouge
  • 2019年10月13日(日)フランス リオン Le Transbordeur
  • 2019年10月15日(火)オランダ アムステルダム Melkweg
  • 2019年10月16日(水)ドイツ ケルン Essigfabrik
  • 2019年10月17日(木)ドイツ ベルリン Columbia Theater
  • 2019年10月21日(月)ハンガリー ブタペスト Barba Negra Music Club
  • 2019年10月23日(水)ロシア モスクワ Glavclub Green Concert
  • 2019年10月24日(木)ロシア サンクトペテルブルク Aurora Concert Hall
MIYAVI「"NO SLEEP TILL TOKYO" World Tour 2019 ASIA」
  • 2019年11月1日(金) 香港 Music Zone@E-Max
  • 2019年11月3日(日) 台湾 台北 CLAPPER STUDIO
  • 2019年11月8日(金) 韓国 ソウル WEST BRIDGE with KT 5G
  • 2019年11月10日(日)中国 上海 VAS LIVE
  • 2019年11月13日(水)中国 広州 MAO Livehouse
  • 2019年11月15日(金)中国 成都 Aflame Art Center Hall 1
  • 2019年11月17日(日)中国 北京 TANGO
  • 2019年11月23日(土)タイ バンコク Central Plaza Chaengwattana Hall
  • and more
MIYAVI「"NO SLEEP TILL TOKYO" World Tour 2019 JAPAN」
  • 2019年12月5日(木)北海道 Zepp Sapporo
  • 2019年12月9日(月)宮城県 Rensa
  • 2019年12月10日(火)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2019年12月12日(木)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2019年12月18日(水)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2019年12月21日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
MYV CREW 限定 MIYAVI Birthday Live 2019
  • 2019年9月15日(日)東京都 LIQUIDROOM
MIYAVI「MYV CREW FAN CLUB TRIP IN KOREA」