音楽ナタリー Power Push - MIYAVI

気鋭クリエイターと作り上げた新たなビジョン

MIYAVIが両A面シングル「Afraid To Be Cool / Raise Me Up」を配信リリースした。このシングルのアートワークはファンタジスタ歌磨呂が担当。歌磨呂はジャケット写真から最新のアーティスト写真、ティザー映像、ミュージックビデオに至るまでをプロデュースし、MIYAVIが今年のテーマに掲げる「NEW BEAT, NEW FUTURE」をビジュアル的に演出している。さらにアーティスト写真の撮影は、1970年代から第一線で活躍するフォトグラファーの鋤田正義によるもの。これらの興味深いコラボレーションについて、MIYAVIと歌磨呂へそれぞれ聞いた。

取材 / 望月哲 文 / 望月哲、加藤一陽
撮影(ヘッダ写真除く) / 須田卓馬

MIYAVIインタビュー

一緒に戦える仲間が欲しかった

──約1年ぶりとなる音源「Afraid To Be Cool / Raise Me Up」が配信限定シングルとして4月に発売されました。MIYAVIさんはその際に、2016年のキャッチフレーズとして「NEW BEAT, NEW FUTURE」という言葉を掲げられていましたが、そもそもこの言葉はどういったところから導き出されたものなんですか?

アーティスト写真撮影中のMIYAVI。

ひさびさに音源を出すにあたって、自分自身はもちろん、ファンのみんなとドキドキするような感覚を共有したいなと思ったんです。この世知辛い世の中で、自分が表現するべきものはなんだろうって。そういうことを考えてる中で出てきたのが「NEW BEAT, NEW FUTURE」っていうキャッチフレーズ。僕はギター1本でどうやって世界をひっくり返すかっていうことをテーマにずっと活動し続けてきたんだけど、ここ最近、ビート感みたいなものがすごく気になるようになって。

──それはなぜでしょうか?

時代と共にビートもどんどん進化していて、それを今まで以上に意識することで、何か未来につながるような刺激的な表現ができるんじゃないかと思ったんです。ただ、その世界観を具体的に提示するためには今までと同じやり方じゃ絶対にダメだなって。やっぱり僕はギター弾きでしかないから、自分にはできないようなことをやってくれる人とチームを組みたいなと思って、そこでファンタジスタ歌磨呂くんに声をかけたんです。

──今回のシングルでは、ビジュアル全般のクリエイティブディレクションを歌磨呂さんが手がけています。歌磨呂さんをパートナーに選んだ一番の理由はなんだったんですか?

アーティスト写真撮影中のワンシーン。奥がMIYAVI、手前が鋤田正義。

歌磨呂くんとは感覚的に共感できる部分がすごく多いんですよ。僕は今、ロサンゼルスに住んでるんだけど、彼も数年前からニューヨークに活動の拠点を移していて。「世界進出だ!」みたいに肩ひじ張ったスタンスじゃなくて、お互い海外の“常温感”みたいなものを感じながら活動している感覚があるんですよね。

──“常温感”ですか。

ここ数年、「クールジャパン」みたいな言葉がもてはやされて、日本のアニメやマンガが海外で受け入れられている印象があると思うんだけど、自分からすると、すごく表面的に見えることがあって。本質的な部分が全然理解されてないっていうか。歌磨呂くんは、そういうブームみたいなものとは関係ないところで自分自身の表現を追求しているような印象があるんですよね。日本から見た世界と、世界から見た日本だと、どうしても温度差が生まれてくるんですけど、そういう温度感を知ったうえで、お互い迎合するわけじゃなく、かといって押し付けるわけでもなく、一緒に戦える仲間が欲しかったんです。

──ある意味、出会うべくして出会った盟友というか。

本当にそういう感じですね。あと歌磨呂くんって、どこか孤独というか、自分と共通する匂いを感じるんです。徒党を組まない感じとか。ずっと一緒にやってるドラマーのBOBOくんもそうですけど。すごく心強いし、安心して身を預けられるような気がするんですよ。

──MIYAVIさんが歌磨呂さんの作品に感じる一番の魅力を挙げるとすると?

ひと言で言えば混沌かな。いろんな情報がごちゃ混ぜになってる感じ。それってある意味、すごく日本っぽいなと思うんです。例えば日本語も、ひらがな、カタカナ、漢字ってグチャグチャに混ざってるじゃないですか。テクノロジーやカルチャーも然りで、いろんな要素をミックスすることで常に新しいものを生み出してきた歴史がこの国にはあると思う。そういう視点で見ても彼の作風って、すごく日本っぽいなと思って。あとはあの独特な色彩感覚。新宿とかブルックリンみたいな街に流れるカオスな雰囲気というか。海辺とかに住んでたら、あの感じは絶対に出せないと思う(笑)。

デジタル両A面シングル「Afraid To Be Cool / Raise Me Up」 / 2016年4月26日発売 / Virgin Music
「Afraid To Be Cool / Raise Me Up」
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収録曲
  1. Afraid To Be Cool
  2. Raise Me Up
  3. Afraid To Be Cool(Seiho Remix)
  4. Raise Me Up(Jonny Dope Remix)
MIYAVI Japan Tour 2016 "NEW BEAT, NEW FUTURE"
2016年9月19日(月・祝)北海道 札幌PENNY LANE24
2016年9月21日(水)宮城県 Rensa
2016年9月22日(木・祝)石川県 金沢EIGHT HALL
2016年9月24日(土)愛媛県 WStudioRED
2016年9月25日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
2016年9月27日(火)熊本県 熊本B.9 V1
2016年9月29日(木)福岡県 DRUM LOGOS
2016年10月1日(土)大阪府 なんばHatch
2016年10月2日(日)愛知県 DIAMOND HALL
2016年10月10日(月・祝)千葉県 幕張メッセイベントホール
MIYAVI(ミヤヴィ)

1981年大阪府出身のソロアーティスト / ギタリスト。ピックを使わず指でエレクトリックギターを弾く、独自のスラップ奏法で注目を集めている。2010年10月リリースのアルバム「WHAT'S MY NAME?」では、ギターとドラムのみの編成でオリジナルのサウンドを確立。2012年11月にさまざまなジャンルの“サムライアーティスト”とのコラボレーションアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.1」を発表し話題を呼んだ。ほかにも布袋寅泰、野宮真貴、Good Charlotteらの作品への参加など精力的な活動を続け、2013年6月には自身の名を冠した海外デビューアルバム「MIYAVI」をリリース。さらに2014年にはSMAPのシングル「Top Of The World」を作曲し話題を集めた。また同年の12月には俳優として出演したアンジェリーナ・ジョリー監督によるハリウッド映画「UNBROKEN」が全米で公開された。2015年4月にDrew & Shannonをプロデューサーに据えロサンゼルス、ナッシュビルにて制作されたフルアルバム「The Others」を発表。2016年4月には前作から約1年ぶりとなる音源「Afraid To Be Cool / Raise Me Up」を両A面シングルとして配信でリリースした。