音楽ナタリー Power Push - MIYAVI

気鋭クリエイターと作り上げた新たなビジョン

鋤田さんとのセッション

──アーティスト写真の撮影は鋤田さんによるものでした。ご一緒してみて、いかがでしたか?

僕、何年か前に山本寛斎さんとお会いしたときに鋤田さんのことを知ったんです。「ぶっ飛んだ寛斎さんの衣装を撮ったの日本人なんだ」って。すげーと思って。それで日本人として世界の舞台で、しかも世界のスーパースターと仕事をしているみたいなところで、鋤田さんに対して「こういうふうになりたいな」って感じていたんですね。まさかご一緒できるとは思わなかったので、すごく感動しましたね。

──撮影のコンセプトは、歌磨呂さんが?

アーティスト写真撮影中のファンタジスタ歌磨呂。

そうです。

──具体的にはどういうイメージで?

こちらも「NEW BEAT, NEW FUTURE」ということで、ネオ東京的なイメージで。ネオンライン的なビジュアルで構成しました。暗い感じの雰囲気にいろいろな色が入ってくる、みたいな。例えば映画の「トロン」みたいなSFレトロフューチャー的な雰囲気……なんだけどレトロじゃない感じ。何かアップデートされたものをやりたいなと思って。

──鋤田さんとは事前にどのような打ち合わせをしましたか?

鋤田さんには、僕のほうから大まかなアイデアをお伝えしました。MIYAVIに実際ギターを演奏してもらって撮影しようというのは鋤田さんのアイデアですね。ライブ感を出すのがいいんじゃないかって。最初はわりとビシッとした静的なイメージを思い描いていたんですけど、ギターを弾きながらバリバリ動いてもらったら、すごくアクティブでライブ感のある写真が撮れて。よかったなと思います。

──そうだったんですね。

MIYAVIアーティスト写真(撮影:鋤田正義)

撮影の時間は20分ぐらいだったと思うんですけど、進むにつれて現場にグルーヴのようなものが生まれてきました。モニタに映し出される写真もどんどん素晴らしいものになっていっていきましたね。空気をつかんでる感じで、「さすがだな」って。曲に合わせてMIYAVIが爆音でギターを弾いてて、終わったらみんな拍手。やっぱり鋤田さんだからこそ出せる空気みたいなのがあるんじゃないですかね。すごいしびれました。

──僕も撮影の様子を拝見していたのですが、思わず拍手してしまいました。

僕が想像してるよりもいいものができたというか、僕のイメージし得るものよりも化学変化がすごくて。感激しました。アー写だけじゃもったいないって感じ。あのままミュージックビデオが撮れたんじゃないか。ご高齢なのに、さすがだなと思いました。仙人みたいな感じですよね。

──では、被写体としてのMIYAVIさんをご覧になってどうでした?

左からファンタジスタ歌磨呂、MIYAVI。

なんか、鋤田さんとジャムってるって感じでした。ジャムってくうちに何かがリンクしていって、最後にいい感じになっていった。なんですかね、ああいうグルーヴ感って。言語化できないんですけど……動物的なんでしょうね、たぶん。動物的な感覚なんだと思いました。獣の動きみたいな感じですよね。

──お話を聞いていて、MIYAVIさんと歌磨呂さんの今回のコラボでは、グルーヴ感というものがキーワードになっていると思いました。

そうですね。説明できないところではありますが、MIYAVIとは感覚的な部分でリンクするというか、「いいね」って感覚を共有できているんです。あとMIYAVIと仕事をして思ったのが、音楽っていうのは、すごく魂に近い表現方法だなと。絵を描いたりするのは、チームでやるとなると言葉でいろいろ伝え合わなければいけないし、1つのプロジェクトですごく時間がかかります。でも音楽はバスッと表現していける。すごく魂に近いところにありますよね。そういうのって、うらやましいなと思います。

──取材の時点でまだ完成はしていませんが、ミュージックビデオについても教えていただけますか?

けっこうカッコいいのができると思いますよ。こちらも近未来感を出しつつで。気合いの入った、すごく手がかかってそうなビデオを作ってます(笑)。ぜひ観てほしいですね。

左からファンタジスタ歌磨呂、MIYAVI、鋤田正義。

写真家 鋤田正義コメント

僕はかれこそ50年ぐらい写真を撮り続けているんですけど、キャリアを重ねるにつれて、壊していこうという気持ちが自分の中で強くなっているんです。若い頃はカメラの技術を覚えてその通りに撮っていくような感じだったんですけど、今は新しいものを撮ってやろうとか、何かを壊していこうみたいな気持ちをひしひしと感じていて。そういう意味でも、今回のMIYAVIさんとの撮影は、魂のぶつかり合いじゃないけど、自分自身すごくぴったり来てるなと思って。彼は動きながら、どんどん壊していくから。そういう撮影はひさしぶりですね。デヴィッド・ボウイ以来。ボウイは感覚的な人で、自分を壊していこうとする幅があるんですよ。撮影中に髪をくしゃくしゃにしちゃったり。今日の撮影を通じてMIYAVIさんにも同じものを感じました。

デジタル両A面シングル「Afraid To Be Cool / Raise Me Up」 / 2016年4月26日発売 / Virgin Music
「Afraid To Be Cool / Raise Me Up」
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収録曲
  1. Afraid To Be Cool
  2. Raise Me Up
  3. Afraid To Be Cool(Seiho Remix)
  4. Raise Me Up(Jonny Dope Remix)
MIYAVI Japan Tour 2016 "NEW BEAT, NEW FUTURE"
2016年9月19日(月・祝)北海道 札幌PENNY LANE24
2016年9月21日(水)宮城県 Rensa
2016年9月22日(木・祝)石川県 金沢EIGHT HALL
2016年9月24日(土)愛媛県 WStudioRED
2016年9月25日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
2016年9月27日(火)熊本県 熊本B.9 V1
2016年9月29日(木)福岡県 DRUM LOGOS
2016年10月1日(土)大阪府 なんばHatch
2016年10月2日(日)愛知県 DIAMOND HALL
2016年10月10日(月・祝)千葉県 幕張メッセイベントホール
MIYAVI(ミヤヴィ)

1981年大阪府出身のソロアーティスト / ギタリスト。ピックを使わず指でエレクトリックギターを弾く、独自のスラップ奏法で注目を集めている。2010年10月リリースのアルバム「WHAT'S MY NAME?」では、ギターとドラムのみの編成でオリジナルのサウンドを確立。2012年11月にさまざまなジャンルの“サムライアーティスト”とのコラボレーションアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.1」を発表し話題を呼んだ。ほかにも布袋寅泰、野宮真貴、Good Charlotteらの作品への参加など精力的な活動を続け、2013年6月には自身の名を冠した海外デビューアルバム「MIYAVI」をリリース。さらに2014年にはSMAPのシングル「Top Of The World」を作曲し話題を集めた。また同年の12月には俳優として出演したアンジェリーナ・ジョリー監督によるハリウッド映画「UNBROKEN」が全米で公開された。2015年4月にDrew & Shannonをプロデューサーに据えロサンゼルス、ナッシュビルにて制作されたフルアルバム「The Others」を発表。2016年4月には前作から約1年ぶりとなる音源「Afraid To Be Cool / Raise Me Up」を両A面シングルとして配信でリリースした。

ファンタジスタ歌磨呂(ファンタジスタウタマロ)

1979年生まれ。イラストレーション、テキスタイルデザイン、グラフィックデザイン、アニメーションなど多彩なフィールドで活躍するクリエイター。持ち前のポップでカラフルな世界観で日本のみならず海外でも注目を集めている。フリーランスで活動したのち2012年7月に株式会社コトブキサンを設立。近年は、ゆず、livetune、でんぱ組.inc、LM.C、東京カランコロン、AMIAYAなど、さまざまなアーティストのCDジャケットやミュージックビデオのアートディレクションを手がけている。

鋤田正義(スキタマサヨシ)

1938年生まれ。写真家。日本写真専門学校卒業後、棚橋紫水に師事。広告代理店勤務を経て1965年に上京。主にメンズファッション系の撮影に携わる。1969年にアメリカで行われた「Woodstock Music and Art Festival」をきっかけにサブカルチャーに興味を持ち、1972年にはロンドンに渡り、T.Rexやデヴィッド・ボウイ、Roxy Musicらを撮影。中でもボウイのポートレートはアルバム「Heroes」のジャケットを飾った。その後も国内外の錚々たるアーティストを撮影。2012年には40年間撮り続けてきたデヴィッド・ボウイの写真をまとめた写真集「BOWIE×SUKITA Speed of Life 生命の速度」をイギリスのジェネシス出版より発売する。2013年よりイギリスのヴィクトリア&アルバート博物館主催展覧会「David Bowie Is」に参加し、個人では「David Bowie 写真展」ワールドツアーを展開中。