MISIA×Rockon Social Club成田昭次&寺岡呼人インタビュー|三位一体で作り上げたラグビーW杯応援歌 (2/2)

このサウンドはRockon Social Clubじゃないと出せない

寺岡 フェス(2023年8月12日に出演した「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2023 in EZO」)で「傷だらけの王者」を披露したときも、すごく盛り上がりましたね。それまではR&Bの世界が広がっていたのに、最後に僕たちがいきなりステージに上がって……。

成田 ロックサウンドを北海道の大地に響かせました(笑)。

MISIA あのときも「このサウンドはRockon Social Clubじゃないと出せないな」と思いました。もちろんMISIAバンドでも練習して、皆さんがいらっしゃる土壌を作っていたんですが、私たちだけではあのサウンドは作れないので。

成田 僕はだいぶ粗削りですけどね(笑)。MISIAバンドはアカデミックなので、その対比がよかったのかなと。

寺岡 うん。ラグビーワールドカップの放送の中で、この曲がどう聴こえるか楽しみです。試合を観ながら「この歌詞は、こういうシーンをイメージして作ったのかな」とわかりそうだなって。

寺岡呼人

寺岡呼人

MISIA 私も楽しみです。お二人はラグビーの経験はあるんですか?

寺岡 僕はないですけど、昭次さんはあるみたいですよ。

成田 親父がスポーツ全般大好きな人で。野球やサッカーを含め、小さい頃にひと通りやらされた記憶があるんですよ。ラグビーボールも家にありました。

──「傷だらけの王者」は、MISIAさんと寺岡さんとRockon Social Clubの情熱やスキルが1つになってできあがった楽曲だと思います。皆さんの関係性についてもお聞きしたいのですが、寺岡さん、成田さんから見たMISIAさんはどんなアーティストですか?

寺岡 僕は今55歳で、昔の自分にとっての歌の女王と言うと美空ひばりさん、松田聖子さん、ユーミンなどが思い浮かぶんですが、今の日本の歌の女王はMISIAさんしかいないなと。例えば「NHK紅白歌合戦」のトリも、国民みんなが「この人しかいないよな」と思ってしまう。それくらい確固たる地位を築いているのはすごいことですよね。しかもすごい数のライブをやっていて、作品もコンスタントに出し続けていて。常にハードワークをしている方なんだなって。

成田 初めてライブを観させてもらったのは3年くらい前かな。そのあとも何度か観ているんですが、MISIAさんの歌はいつも会場いっぱいに響くんですよ。しかも常に進化しているし、喉のケアなどもすごくストイックで。でも、普段お会いすると、中学生の女の子みたいなあどけなさがある(笑)。そのアンバランスさも魅力だと思いますね。

──では、MISIAさんから見た寺岡さん、成田さんの印象は?

MISIA 寺岡さんはロックからポップスまで、いろんな音楽を作られている方で。実際にお会いすると、いろんなことを楽しんでいて、一緒に仕事をするミュージシャンの中にあるドラマをしっかり引き出しくれるんです。それを音楽になるように導いてくださるのは本当に素晴らしいなと思いますね。「傷だらけの王者」のアレンジを作っていたときもそうでした。イントロをお願いしたら、印象的なギターのリフを入れてくださって。「そう、こういうことがやりたかったんです!」と思ったし、きっと私の中にある“ドラマ”を汲み取って形にしてくださったんだなと。昭次さんのライブも何度か観させていただいたことがあって。たくさんおしゃべりしたわけではないんですが、ギターのことになると、「これは〇年製で、こういう特徴があって」と話が止まらなくなるんです(笑)。

成田 (笑)。

MISIA さっきもお話しましたが、昭次さんのギターサウンドは優しさの中に切なさや悲しみが入っているのを感じるんです。お二人とも大先輩ですし、人生経験も豊富。それがギターや歌の色や味になっているんだなと。言葉で語らなくても、お二人の思いが楽曲の中に出ているというか。それこそがミュージシャンだなと思うし、「傷だらけの王者」が言葉以上に大きなメッセージが伝わる曲になったのは、お二人のおかげですね。

左から寺岡呼人、成田昭次、MISIA。

左から寺岡呼人、成田昭次、MISIA。

希望を見つけて突き進む力強さ

──今回のコラボは、Rockon Social Clubとしても大きな経験になりそうですね。

成田 常に「新しいことをやっていこう」と思っていて、始まりはいつもそこなんです。決まった道を進むのではなく、突然「これをやろう」と思い立って進んでいるというか。今回はMISIAさんとのコラボということで、自分たちだけではできない曲になったし、Rockon Social Clubの1つ先の未来が見えた感じがありました。

MISIA 個人的な感想ですが、Rockon Social Clubはロックと音楽が好きで好きで好きで生まれたバンドだと思うんです。昭次さんは長い間音楽から離れていましたが、今こうやって新しいバンドで活動していらっしゃるのは、音楽が好きという気持ちが心にずっとあったからだろうなと。私も歌手をやっているのでわかるのですが、もし情熱がなくなったら、ダメになるのはあっという間だと思うんです。昭次さんは音楽への気持ちをずっと持ち続けていたからこそ、いろんなきっかけがあって、こうやって花開いているんですよね。

成田 1人では気付けないことが多いと思うんです。自分の中に情熱が残っていたことも、もちろん忘れていたわけではないんですが、仲間が気付かせてくれました。それは財産だし、いくら感謝してもしきれないですね。再始動してここまで到達しましたが、大事なのはこの先だと思ってます。

寺岡 男闘呼組の解散ライブ(参照:男闘呼組が35年ぶりの日比谷野音でラストライブ、トリプルアンコールで成田昭次は感極まって涙止まらず)を配信で観たんですけど、裸に革のベストがイケる50代って、ほかにいないですよね。

成田 イケてるかどうか(笑)。

寺岡 いやいや、イケてましたよ。カッコよくて、美しいバンドだなって。10代でデビューして、30年以上経って熟成されて。ほかにはいないバンドだなって改めて思いましたね。

──「傷だらけの王者」は皆さんにとって、どんな曲になりましたか?

寺岡 こういう素晴らしいコラボができたわけですけど、ずっと前から準備していたのではなくて、わりと急遽決まったんですよ。心の準備が整わないまま制作が始まって、少しずつレコーディングが進んで。ギター、ベース、コーラスを重ねて、曲が完成して、一緒にフェスに出演して。その過程の中でだんだんと「これって、すごいんじゃない?」というストーリーが生まれてきた感覚があるんです。そのことに僕らも感動したし、リリースされて、お客さんや視聴者の皆さんの曲になっていく過程も楽しみですね。

成田 みんなでディスカッションを重ねて、メンバーが増えていって。ラグビーと同じように、この曲にメンバー全員で向かっていった感じがあります。仲間の大切さを改めて感じたし、こんなレコーディングは初めてでした。

MISIA 「傷だらけの王者」は、決してあきらめない、何度だって立ち上がって、どんなときも希望を見つけて突き進む力強さを表現していて。この曲を通して選手の皆さんを一生懸命応援したいし、お互いに力を与え合って、よりよく生きていくための応援歌になればいいなと思っています。

左から寺岡呼人、MISIA、成田昭次。

左から寺岡呼人、MISIA、成田昭次。

プロフィール

MISIA(ミーシャ)

1998年デビューの歌手。「Everything」「アイノカタチ」など数多くのヒット曲を持つ。東京オリンピック開会式では日本国歌「君が代」を独唱。社会貢献活動にも積極的で、長年にわたって国内の子どもたちのサポートやアフリカの子どもたちの教育支援などに従事しており、その功績からアフリカ開発会議(TICAD)などの国際会議の大使も歴任している。2023年にデビュー25周年を迎え、全国アリーナツアー「25th Anniversary MISIA THE GREAT HOPE」を開催。9都市23公演で20万人を動員した。10月には東大寺でのライブイベント「PEACEFUL PARK」、11月からは全国アリーナツアー「星空のライヴ」を開催予定。9月には配信シングル「傷だらけの王者」「愛をありがとう」を2作同時リリースした。

Rockon Social Club(ロックオンソーシャルクラブ)

1年間限りの復活を果たした元男闘呼組のメンバーである成田昭次(G)、高橋和也(B)、岡本健一(G)、前田耕陽(Key)を中心に、プロデュースを担う寺岡呼人(G)と青山英樹(Dr)を加えて結成したロックバンド。2023年1月に発表した1stアルバム「1988」は同世代を中心に若い世代からも大きな話題を呼んだ。9月にMISIA & Rockon Social Club名義でのシングル「傷だらけの王者」とライブBlu-ray / DVD 「ROCKON SOCIAL CLUB 1988」をリリース。同月22日には配信シングル「何処にもいかないから」を発表予定。