恋愛マスター・みさき
──では、新曲について聞かせてください。1stデジタルシングル「あやふや」は、“付き合う前の失恋ソング”。遊びに誘ってくれるし、「一緒にいると落ち着く」みたいなことは言われるけど恋人ではない……というあやふやな関係を歌っています。
この曲は友達からの恋愛相談がきっかけで、半年前くらいに書いたんです。「私はキープされてるのかな?」「好きって言ってくれるんだけど、彼女はいらないらしい。あきらめるべきかな?」という曖昧な関係に悩んでいる相談で。私はそんな経験したことないけど、もしかしたら、こういう状況って世の中にけっこうあるのかもしれないなと思って、歌詞にしてみました。
──友達の恋愛相談が元になっているんですね。
私は友達から「恋愛マスター」と呼ばれていて(笑)、けっこう恋愛相談されるんですよ。実際に恋愛経験が多いわけではないんですけど、好きな人がいないとがんばれないタイプなので、常に恋していたいというか。好きな人がいれば毎日の楽しみができるし、人生のモチベーションにもなるので。
──しかも歌詞のテーマも見つかる。
そうなんですよ。最初の曲もそうなんですけど、口では言えないことも、曲の中では思いを伝えられるので……。そういえば「あやふや」のテーマになった友達は、結果的にうまくいったんです。「あやふや」がリリースされて「あなたたちのことを歌にしたよ」と伝えるのが今から楽しみです(笑)。
──「あやふや」は歌詞を先に書いたんですか?
この曲はメロディが先です。明るくもない、暗くもない、ちょうど“真ん中”のメロディだったから、曖昧な恋愛の歌詞が合うかなと。メロディに言葉を当てはめると、どうしても言葉数が限られるので難しいんですけどね。「あやふや」は2分くらいの短い曲だし、伝えたいことを込めるが大変でした。
──「この気持ち気づいてるくせ / 知らないフリの君」というサビのフレーズが印象的でした。TikTokでも使いやすそうですね。
サビの1行目からバン!と来る感じにしたかったんです。そこだけで「こういう曲だ」とわかって、「全部聴きたい」と思ってもらえるような曲にしたくて。そこはいつも意識しています。
──エッジの効いたサウンドも新鮮でした。
今までの曲にはなかったアレンジで、私もめちゃくちゃ気に入っています。「みさきっぽくない」という話もあったんですけど、私はこのアレンジが一番いいと思っていて。新しいこともどんどんやってきたいので、「これでお願いします!」と決めました。
──しっかり自分の意思を貫いた。
はい。普段は思ったことを言えないタイプで、あとから後悔することもあるんですけど、音楽に関しては自分の納得いくものしか世に出したくないので。そこは貫き通したいと思ってます。
本間昭光さんからのアドバイス
──2ndシングル「たゆたうままに」は、テレビアニメ「水属性の魔法使い」のエンディングテーマ曲に決まっています。これはどんな曲ですか?
アニメのヒロインのセーラの目線で、“初めての恋”をテーマにした曲ですね。初めての恋って、“好き”が何かもわからないし、やきもちを焼いたときの感情とか、戸惑いもありますよね。そういう心の揺れを大事に書きました。
──タイアップ曲の制作はいかがでしたか?
新鮮でしたね。ヒロインになった気分というか(笑)、アニメの中に入り込めた感じがありました。「水属性の魔法使い」の世界を取り入れることで、自分の経験だけでは書けないことも表現できたのもよかったと思います。
──アレンジはJ-POPの大御所、本間昭光さんですね。
本間さんが手がけたいきものがかりさんの曲なども聴いていたので、自分の曲をアレンジしていただけることになったときはびっくりしました。私はまだ音楽を始めて間もないのに、こんなにすごい方に関わってもらえるんだ!って。アニメには魔法が出てくるし、ファンタジーの要素もあるので、ケルト音楽の要素を取り入れようということになりました。
──3拍子のエキゾチックなリズムも、曲の世界観にぴったりだと思います。
最初はギターを弾きながらメロディを作ったんですけど、そのときからこういうリズムだったんです。いくつかメロディの案を考えて、本間さんに聴いていただいたんですよ。その中から「これがいいんじゃないか」と選んでもらいました。レコーディングも立ち会っていただいたんです。私はこれまで、歌い方について誰にもアドバイスをもらったことがなくて。本間さんに「もっと口を大きく開けて、はっきり歌ったほうがいいよ」とアドバイスをいただきましたし、歌い方もこれまでとはかなり違っていると思います。
──確かに発声のやり方もかなり違いますね。これまではアンニュイな雰囲気がありましたが、「たゆたうままに」はもっと明瞭なイメージだなと。
自分でも「声の色が全然違うな」と思いました。私にとっては新しい歌い方だし、すごく勉強になりましたね。これからは曲に合わせた歌い分けもがんばっていきたいです。
まっすぐ愛せる人になりたい
──ここから表現の幅もさらに広がりそうですね。この先の活動のビジョンは?
まずライブを重ねていきたいです。ファンの方と直接関われる機会をもっと増やしたいし、全国ツアーもやってみたくて。あとはフェスやイベントにも出て、私のことを知らない方にも聴いてもらいたいと思っています。すごく緊張するタイプなんですけど、自分の曲を聴いて皆さんがノッてくれたり、じっくり耳を傾けてくれると「ちゃんと届いてるんだな」と実感できるので。盛り上がれる曲も作っていきたですね。一緒にタオルを回したい! ただ、MCが苦手なんですよ。去年、長崎のフェスに出させてもらって、いろんなアーティストの方のライブを見せてもらったんですけど、皆さん盛り上げるのが本当に上手で。私はまだまだなので、がんばらないと……。
──歌ってるときのほうが自然体でいられるのかもしれないですね。
そうかもしれないですね。どの曲も自分の感情のままに書いているし、そのときのことを思いながら歌えば、ちゃんと届いてくれるはずだという安心感があって。MCになると途端に不安になります(笑)。
──日本武道館のステージに立ちたいという夢もあるとか。
はい。音楽をやっている人は、誰もが一度は立ちたい場所だと思うので。実現できるようにがんばります。
──期待しています! 最後に、音楽以外に好きなことや興味があることを聞かせてもらえますか?
え、なんだろう……? 趣味がなくて困ってるんですよ。家族と一緒にホラー映画を観るのが好きです(笑)。あと、犬が好きです! 犬を飼ってるんですけど、犬って飼い主のことしか考えてないというか、家族のことしか知らないじゃないですか。犬と一緒にいると「こういうふうにまっすぐ愛せる人になりたい」と思うんですよね。
──やっぱり愛ですね。
はい、愛が一番大切です。お父さん、お母さんにも深い愛情を注いでもらったし、自分は愛でできているなって。愛からインスピレーションを受けてるんだと思います、私は。
プロフィール
みさき
2003年3月29日生まれ、長崎県出身のシンガーソングライター。高校在学中、TikTokに投稿した“歌ってみた動画”が次々と話題に。その後、オリジナル曲も発表するようになり、2022年にはテレビアニメ「キングダム」第4シリーズ第2クールのエンディングテーマを担当。2025年にUNIVERSAL SIGMAからメジャーデビューを果たし、6月に「あやふや」、7月に「たゆたうままに」を配信リリースした。