音楽ナタリー Power Push - Miracle Vell Magic
Vellを輝かせる9つの魔法
SNSに投稿した動画をきっかけに一躍脚光を浴び、“新世代のガールズアイコン”と形容されるMiracle Vell Magicが11月23日発売にミニアルバム「Miracles Happen」をリリースした。1人で何役にも扮して洋楽やディズニーの名曲をカバーする動画や、脚本・演出・出演まですべて自身でこなすオリジナルの舞台、メイクのハウツー動画など、彼女の活躍の場は多岐に渡っている。音楽ナタリーではVellのメジャーデビューに際し、彼女を知るための特集を企画。9つのキーワードを軸に「Miracle Vell Magicとは何者か」を紐解いていく。
取材・文 / 真貝聡
- TOPIC 1 自作動画
- 彼女の存在を世に知らしめるきっかけとなったのが、自ら脚本・衣装・出演・撮影・編集を担当する自作動画。映画「アナと雪の女王」の主題歌「Let It Go」をディズニーのキャラクターに扮して歌った動画はおよそ3700万回の視聴回数を記録している。
──VellさんはSNSに上げた自作動画から人気に火が点いたわけですが、動画投稿を始めたのはいつ頃?
私のYouTube公式チャンネルにアップされている動画で一番古いのは2012年のものなんですけど、高校生のときに別のYouTubeチャンネルを持っていて。あまり知られてないけど、本当はそれが最初です。
──そうなんですね。初めて投稿した動画は、どんな内容だったんですか?
何を考えていたのかわからないんですけど……宇宙人になりきって歌う様子を撮りました(笑)。
──ぶっ飛んでますね(笑)。
自分で触覚を付けたシルバーのカツラを被って「ミナサン、コンニチワ」ってカタコトにしゃべっている様子を、パソコンのインカメラを使って撮影しました。あとは一度もカメラから目をそらさずに「リトル・マーメイド」の「Part of your world」を歌う動画を上げてみたり。もはやホラー映像です(笑)。
──それからずっと動画を撮り続けてるんですか?
宇宙人シリーズは5本ぐらい上げていたんですけど、勉強が忙しくなってからは撮らなくなりましたね。大学生になった2012年に、改めてチャンネルを作って再開して。
──ちなみに動画をアップしたときは、学校の友達に伝えていたんですか?
誰にも言わなかったです。ひっそりと自分の部屋で撮影して、こっそりと出して……みたいな感じでした。学校の自分とはまた違う自分を、外の世界に出してみたかったんです。
──動画の反響はすぐにありました?
海外の人からのコメントがたまにありましたが、基本的には全然なかったです。本当に手応えを感じたのは2014年ぐらいからですね。SNSを使い出してから一気に広がり始めて、視聴者も増えていって。
──その頃は、ここまで注目されることを見据えて動画制作をしていたんですか?
あんまり考えていなかったです。ただ単に動画を作るのが楽しくて。なんだろう、撮る過程もすごく楽しいんですけど、撮った素材に対して「さぁ、料理するぞ」と向かう瞬間がものすごく楽しくって。なので「これで有名になってやるぞ!」っていう思いはまったくなかったです。
──そうだったんですね。では世間から注目を浴びるきっかけとなった「Let It Go」の動画についてもお話を聞きたいのですが、そもそもあの動画を撮ろうと思ったきっかけは?
まず「アナと雪の女王」にめちゃくちゃハマって、自分の動画でも「レット・イット・ゴー」を使って何かしたいと思ったんです。だけど、「普通にカバーするだけじゃつまんないな」って考えたときに、自分が得意なことはメイクやいろんなキャラクターになりきることだから、「1人で25のキャラをやってみたらどうかな」って。きっとものすごく大変だけど、でもちょっとがんばってみようと思ったのが始まりです。そこからカフェへ行ってノートにガーッとなりたいキャラを書き出して、今度はメイクや小道具をそろえるために東急ハンズやドン・キホーテへ行って……。
──行動力がありますね。発案から撮影するまで、時間はどれぐらいかかったんですか?
2時間ぐらいで構成を考えて、買い出しは1日のうちに終えて。撮影自体は2日間、編集は1日でやりました。私、1回入り込むと途中で絶対止められないんですよ。一度メイクして撮影を始めたら、そこからは一気に25キャラ全部をやって、気付いたら2日間寝てもいないし、飲まず食わずでした(笑)。
- TOPIC 2 ディズニー
- 「ディズニーと共に人生を歩んできた」と語るほど生粋のディズニーファン。歌唱法やダンス、芝居まで自身が表現するエンタテインメントのすべてはディズニー作品から影響を受けているのだとか。
──そもそもディズニーを好きなったきっかけは?
物心つく前からずっとディズニー映画を観ていて、ディズニーは気付いたらもう、自分の中の一部みたいな感じになっていて。なんで好きになったかわからないという感じです。
──幼少期から身近な存在だったと。
本当に小さい頃からディズニーの世界観の中で育ったというか……もう、自分がディズニーのキャラクターなんだと思って育ってきちゃったなというくらい(笑)。私のベルっていう名前も、「美女と野獣」のベルに由来しているんです。
──では、一番思い入れがある作品は「美女と野獣」?
好きな作品は多すぎるんですけど、ミッキーは自分の中の大スターだから別格として……「美女と野獣」と「塔の上のラプンツェル」が好きですね。
──ではディズニーの音楽の中で、一番思い入れがある曲は?
「Part of your world」です。私が一番好きな曲。なんというか、私は自分の世界から手の届かないところへの憧れをすごく持っていて。この曲はアリエルの外の世界への憧れを歌う曲だからすごく共感できるし、歌うと素の自分に戻れるんです。「自分は夢を追いかける1人の女の子なんだ」って実感できます。
- TOPIC 3 メイク
- 彼女がキャラクターを忠実に再現するために力を入れているのが“なりきりメイク”。アリエルを表現するためにキュートな色合いで表情を演出したかと思えば、オラフになりきる際は顔を真っ白に塗りたくるなど高度なテクニックを見せている。
──先ほどご自身でメイクをするのが得意とおっしゃっていましたが、動画でもメイクの方法を紹介していますね。
メイクに興味を持ったのは3歳の頃。お母さんが私の誕生日に、子供用のメイクセットを買ってくれたんです。小学生になってお小遣いをもらえるようになってからは、百円均一ショップでメイク道具を買ったりもして。
──おませな小学生ですね。
あははは、確かに。小学6年生になると、お母さんのビューラーを使って学校へ行ったりもしていました。そういうメイクの遊びみたいなことはずっとしてましたね。今も、毎朝メイクをするのが楽しみで仕方がないです。スッピンを隠すためのものじゃなく、「メイクは楽しいもの」と思ったままここまで来ました。だから、ある日高校の友達が「メイク面倒臭いわあ」って言ったのを聞いたときは、びっくりしましたね。
──動画では、本格的なステージメイクも披露されています。
動画用に初めてがっつりメイクをしたのは、2013年の秋に撮影した「Part of your world」ですね。そこでセバスチャンとフランダー、アリエルのメイクをしました。セバスチャンなんて顔を真っ赤に塗っただけで当時はすごく低クオリティだったけど、「意外とキャラっぽくなるじゃん?」と思って。七変化に目覚めました(笑)。
──そういったメイクをしていて、家族に驚かれることはなかったですか?
ありますよ! 一番驚いてたのが「Let It Go」で25人キャラに変身していたときですね。メイクを落とすために洗面所と部屋を行き来するんですけど、部屋から出てくる度にまったく違う顔になっているから、それを見ていたお母さんが「今度は何?」って。25回も繰り返すと、さすがに楽しんでいました(笑)。
──そうなんですね。
あとオラフのメイクをしたときのことなんですけど、白塗りにして目の周りを黒く塗っていた最中に、家の猫が逃げちゃったんです。慌てて外へ出たら、見た人が「えぇ!?」って。真っ白の顔のまま近所を練り歩いて、「チャビちゃん! チャビちゃん!」って猫を探して(笑)。そんなこともありましたね。
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- ミニアルバム「Miracles Happen」 / 2016年11月23日発売 / avex trax / 初回限定盤 [CD+DVD] / 3240円 / AVCD-93521/B
- 「Miracles Happen」初回限定盤
- 通常盤 [CD+DVD] / 2700円 / AVCD-93522/B
- 通常盤 [CD] / 2160円 / AVCD-93523
CD収録曲
- Miracles Happen
- Up To You
- Serendip
- Sincerely, your friend
- Chill Out N Love
- Together Better
- Serendip (winter ver.) ※初回限定盤のみ収録
初回限定盤DVD収録内容
- 「Serendip」MV (Story Ver. / Music Only Ver.) + Jacket Making Movie
通常盤DVD収録内容
- 「Serendip」MV (Story Ver. / Music Only Ver.)
Miracle Vell Magic(ミラクルベルマジック)
自作動画のトータル再生回数が1億回を超える、女性アーティスト・クリエイター。通称Vell。高校生時代に本格的に動画投稿を始め、2015年夏にはVell自身が脚本・キャラクター演出を務めた「ようこそ、ユメミルユガミノ国へ。」を上演した。この舞台は1人33役100分というオリジナル作品で、1000名を動員。2016年4月には配信シングル「Miracles Happen」で本格的な音楽活動を開始する。以降も脚本・歌・演技・編集など独自のセンスで自身の活動を展開しており、2016年11月に初のミニアルバム「Miracles Happen」を発表する。