水瀬いのりが1stアルバム「Innocent flower」をリリースした。劇場アニメ「心が叫びたがってるんだ。」で主人公・成瀬順役を演じ、「第十回声優アワード」で主演女優賞を受賞するなど声優として活躍する一方、2015年にキングレコードより歌手デビューし、順調に声優アーティストのキャリアを重ねている水瀬。3月5日に東京・日本武道館で開催されたライブイベント「KING SUPER LIVE 2017 TRINITY」では、上坂すみれと小倉唯と共に堂々たるパフォーマンスを披露した。
音楽ナタリーでは、幼少期から今に至るまでの人生を振り返ってもらうロングインタビューを実施。人前に出るのが苦手だという彼女のキャラクターを紐解きつつ、自身も制作にも大きく関わった「Innocent flower」についてたっぷり語ってもらった。
取材・文 / 近藤隼人
先生に嫉妬したことが一番古い記憶
──音楽ナタリー初登場ということで、まずは水瀬さんのこれまでのお話から伺っていきたいと思います。水瀬さんはどんな子供でしたか?
子供っぽくない子供だったというか、人の表情をすごく気にしちゃう子供でした。気を許した友達といるときとか、自分が安心できる空間では違うんですけど、基本的に子供っぽく思われないように装うことを意識していた子供時代で。「子供だからってナメられないようにしなきゃ」と思って、1人で電車に乗るときも端っこの席に座りたいとか、椅子がいっぱい空いていても立ちたいと考えていました。
──自意識過剰なタイプだったんでしょうか?
人から見られるうえで、自分に関してマイナスなことはあんまり思われたくない、人と関わりたくないというか……1人っ子だったせいか、友人関係を築くことへのガッツが人一倍なくて、別に1人でも平気なタイプでしたね。「友だち100人できるかな」みたいなことはまったく思わず、かわいげのない子供でした。
──友達とつるまず、1人でいるほうが楽だった?
女子同士の上辺だけみたいな関係が苦手で、男の子を見てるとうらやましかったです。私の周りだけだったのかもしれないですけど、「今日の友達は明日も友達かわからない」という関係が女子にはあって。その子たちはみんなでいる時間を大切にする人たちだったけど、私は男の子っぽい、さっぱりした性格だったので、自分と同じような子たちとだけ集まっていました。
──では、外に出て元気に遊び回るような子供ではなかった?
いえ、男の子に混ざって遊ぶことが多くて、当時流行っていた忍者のアニメのまねをして「口寄せの術!」って叫んだり、近所の公園を駆け回ったりして、女の子らしい遊びはあまりしていなかったです。
──ちなみに、一番古い記憶をたどると、どのような風景が浮かびますか?
幼稚園のときに男子も女子もクラスの子みんなが先生にメロメロで、それに嫉妬していたことです。感情が大きく動いたのはそれが初めてで、めちゃめちゃきれいなマドンナ的な先生が来ると、当時自分が好きだったクラスの男の子もみんな鼻の下を伸ばして駆け寄ってたので、それを見て「ケッ!」と思っていました(笑)。
「魔法少女リリカルなのは」でアニソンにどっぷり
──忍者のアニメのまねをして遊んでいたとのことですが、そのときからアニメに興味があったんですか?
そうですね。アニメが唯一の趣味というか、お料理やお裁縫などそういう趣味はまったくないけれど、アニメを観たり、ゲームをやったりマンガを読んだりすることは好きでした。1人っ子で自分の時間がすごく多かったので、インターネットを通していろんなアニメと声優さんを知って、どんどん声優になりたいという気持ちが大きくなっていきました。
──最初にハマったアニメは?
最初は「犬夜叉」です。幼稚園か小学校1、2年生くらいのときに放送されていて、家に帰って「名探偵コナン」と「犬夜叉」を月曜日に続けて観るのが一番の楽しみでした。そこからどんどん広がって、「セーラームーン」も好きになりました。これはリアルタイムではなくてレンタルで200話全部観て、すごく心が動かされました。
──では、最初に触れた音楽はどのあたりですか?
最初に触れたのは、SPEEDさん、鈴木亜美さん、モーニング娘。さんとかですね。音楽番組を観ていて自分が憧れる対象だったのが、歌って踊る自分より少しお姉さんな人たちで、ダンス&ボーカルグループやアイドルに興味を持って。でも、それもアニメを観る時間にとって変わっていきました。そこからアニメソングにも興味を持って、当時観ていた「魔法少女リリカルなのは」シリーズでアニソンにどっぷりハマりました。
──「歌手になりたい」というよりも「アニソンを歌いたい」という憧れのほうが強かった?
はい。憧れはどちらにも共通してあったんですけど、自分がどちらをやりたいかとなると、歌を1人で歌って、しかもアニメに参加できるアニソン歌手でした。
──単にアニメやアニソンが好きというだけじゃなく、すぐに「自分も声優になりたい」「アニソンを歌いたい」という考え方に?
そうですね。6歳のときに両親が声優というお仕事があることを教えてくれて。そのときから声優になりたいと思っていたんですけど、漠然と思っていただけで。どうやったら声優になれるのか、ずっとわからないまま過ごしていました。
──親は反対するどころか、むしろ率先して声優の道に導いてくれたんですね。
「キャラクターには声を当てている人がいるんだよ」と教えてくれることは、ある意味子供の夢を壊す行為だと思うんですけど、当時の私にとっては「だったら自分もなれるかもしれない」という希望のほうが大きかったです。
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ドライな私に熱が入りました
- 水瀬いのり「Innocent flower」
- 2017年4月5日発売 / KING RECORDS
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初回限定盤 [CD+Blu-ray]
3888円 / KICS-93477 -
通常盤 [CD]
3240円 / KICS-3477
- CD収録曲(共通仕様)
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- 春空
- 夢のつぼみ
- Lucky Clover
- コイセヨオトメ
- 涙のあとは
- いつもずっと
- Starry Wish
- Will
- 星屑のコントレイル
- 旅の途中
- harmony ribbon
- Innocent flower
- 初回限定盤Blu-ray収録内容
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MUSIC VIDEO
- 夢のつぼみ
- harmony ribbon
- Starry Wish
- 春空
- 水瀬いのり(ミナセイノリ)
- 1995年東京都生まれの声優、アーティスト。2010年にソニー・ミュージックアーティスツ主催のオーディション「アニストテレス」でグランプリを受賞し、アニメ「世紀末オカルト学院」で声優デビューした。2013年に「恋愛ラボ」で棚橋鈴音の声を担当し、注目を集める。同年にはNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」で成田りな役を務め、「第64回NHK紅白歌合戦」に「GMTスペシャルユニット feat.アメ横女学園芸能コース」の一員として出演した。2015年12月の20歳の誕生日にキングレコードよりシングル「夢のつぼみ」をリリースし、ソロ歌手としてデビュー。以降、声優および歌手として活躍し、2016年には「第十回声優アワード」主演女優賞を受賞した。2017年4月に1stアルバム「Innocent flower」を発売する。