南端まいなが1月27日に配信リリースしたミニアルバム「relief」は、全編ギターとパーカッションのみというシンプルなアコースティック編成で制作された。南端の澄んだ歌声を存分に楽しめる1作だが、シンプルな分、ボーカリストの力量に委ねられる部分は大きい。コロナ禍にあった2020年、20歳になった南端は配信によるアコースティックライブを重ねて、シンガーとして成長するための課題に取り組んでいた。
音楽ナタリー2度目のインタビューとなる今回は、新曲「あなたが止まらない」を含むこのミニアルバムが完成するまでの過程と、その裏側にあった彼女の20歳の1年間について聞いた。
取材・文・撮影 / 臼杵成晃
20歳の南端まいな、お酒を飲む
──昨年2月末のバースデーライブ(参照:南端まいな、カクテルで乾杯!20歳のバースデーコンサート)ではすでにお客さんもマスク姿でしたね。大事な20歳の1年間が大変なことに……。
2月21日に20歳になって、それからすぐにファンの方にお会いできる機会がなくなってしまって……。でもその分、考える時間や勉強する時間が多く取れたので、それはよかったなと思います。
──20歳になった実感はありますか?
一番変わったのは……お酒を飲むようになったことです(笑)。配信ライブが終わったあととか、自分の中でひと区切り、リセットするのにいいですね。ずっとライブに意識を向けて、ライブで気持ちが盛り上がったあと、次の日からはまた新しいことを考えなきゃ、というときに。
──飲むとどうなりますか? 泣き上戸とか笑い上戸とか、いろいろありますよね。
陽気になるのかな? 普段よりもしゃべるようになります。
──南端さんはもともと引っ込み思案なタイプだったように思うので、お酒でいい感じにオープンになっているところもあるのでしょうか。
そうですね。活動にプラスになることもいっぱいあります。20歳になって何かが変わったというよりも、2020年が自分の中ではすごく濃い1年で、いろいろ変わったと思います。
声と表現力で勝負するアコースティックライブへの挑戦
──バースデーライブ以降、ライブは配信のみになってしまいましたし、想定していた活動のプランはやっぱり崩れてしまいましたか?
はい。でもアコースティックライブを定期的にやりたいというのはもともと考えていたことで、2019年から少しずつ始めていたので……配信に変わってファンの方との距離はちょっと遠くなっちゃいましたが、定期的に配信ライブをやれたのはよかったです。
──目の前にお客さんがいて、表情やリアクションがわかる普段のライブとの違い、難しさは感じますか?
勝手が違うので、最初は「みんなは今どういう顔をしているのかな? どういう反応なのかな?」という姿が見えない難しさがあったし、寂しかったです。でも配信だからこそ、観た方が感想を送ってくださったり、普段のライブではわからないことが伝わったりもするんです。
──拍手や歓声などの直接的なリアクションは得られないものの、別の収穫はあると。アコースティックライブがやりたかったのはなぜなんですか?
アコースティックだと単純にサウンドが少ない分、自分の声と表現力で勝負する部分が大きくなりますけど、それは自分の中で足りないと感じていた課題だったので。もっと多くの人に自分の歌を届けるためには、もっともっと表現力を磨かなければいけないと思っていたんです。
──アコースティックライブを集中してやっていく中で、南端さん自身のリスナーとしての傾向、音楽の聴き方が変わったりはしましたか?
変わりました。バラードを聴いているときに「あっ、こういうところは盗みたいな」と意識するようになって、Uruさんとか……あとは前から好きですけど、松任谷由実さんとか宇多田ヒカルさんとか、女性シンガーさんの歌をよく聴くようになりました。
歌いながら勉強できた新曲「あなたが止まらない」
──アコースティックライブを重ねてきたことで気付くこと、見えてきたことも多い?
はい。毎回のライブで、やっぱりちょっとずつ課題が残るんですよ。それを復習して、また「ああ、こういうところが自分は足りていないな」と感じたら見直して……というのを何度も重ねて。課題を見つけて復習して、を繰り返してます。
──その研鑽の現時点での集大成が新作「relief」とも言えますね。オリジナルとカバーの計6曲、すべて声とギターとパーカッションのみという徹底したアコースティック作品です。タイトルは時代に即したものとも取れますが。
そうですね。タイトルの「relief」は、私が声で表現したいこととしての「安心・安堵」という意味合いですけど、やっぱりこんな時代なので、皆さんの心に少しでも寄り添えるような作品にしたいという思いで付けました。
──1曲目の「あなたが止まらない」は新曲で、リリースに先がけてミュージックビデオも公開されました。
思いを寄せる人がいて、その人を思いながら……ちょっとニヤニヤというか(笑)、ふふっとしているような内容の曲です。
──歌詞の内容や曲のテーマについては南端さんから「こういう内容の曲が歌いたい」とスタッフに伝えるんですか?
いえ、内容について自分から言うことはあまりないです。話し合う中で「こういう曲に挑戦したい」という思いをスタッフさんが汲み取ってくださって。今まで歌ってきたオリジナル曲とはちょっとタイプが違っていて、1曲の中で感情が動いていくというか……物語に声を乗せていく感じが難しいなと思ったんですけど、去年1年、いいことも悪いことも含めてたくさん心を動かされて、人から与えられる影響もたくさんあったので、これまで歌ってきた「センチメートル」や「君のピュアネス」「青い風」のような素の自分のままで歌う曲とは違う表現ができたかなと思います。
──なるほど。同じフィクションでも気持ちの乗せ方に違いがあるんですね。
「セツナイノチ」(2019年9月発売のシングル)までのオリジナル曲は、自分自身の歴史や、聴いてくれる方たちにとっての私自身をイメージして書かれていたんですけど、シンガーとしてもっと多彩な表現がしたいと考えたときに、「周りからこう思われているだろう」という私じゃない、20歳の女性が生活の中で感じるリアルな気持ちを歌ってみたかったんです。
──「あなたが止まらない」に挑戦してみての収穫はありますか?
あります。「あなたが止まらない」が完成したあと、これまで歌ってきた曲たちも少し違って見えて。曲の中での気持ちの作り方を改めて理解できるようになりました。「あなたが止まらない」は歌いながら勉強できた曲ですね。
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セルフカバーで見せる成長過程