セルフカバーで見せる成長過程
──その勉強の成果が次の2曲で発揮されているわけですね。2曲目の「Cherry moon」は1stミニアルバム「Clarity」(2019年3月発売。参照:南端まいな「Clarity」インタビュー)の収録曲で、今回はボサノバアレンジに生まれ変わっています。
ボサノバは難しいです。リズム感が全然違いますし、リズムが変わると声の表情も変わってくるというか。配信ライブでも何度も歌っていて、最初は難しいなあと思っていたんですけど、ファンの方もちょっと違う表情の「Cherry moon」を喜んでくれていて、挑戦してみてよかったなと思います。
──「セツナイノチ」はオリジナルバージョンもエモーショナルな雰囲気のあるミディアムバラードでしたが、それがより生々しい表現になっている感じがします。
この曲もライブで何度も歌ってきましたけど、バンドアレンジで歌うのと今回のレコーディングでは全然違うんです。ライブで歌ってきた表現のままで歌うと、なんとなくつまらないんですよ。自分の声に表情がないように感じて。
──バンド演奏との掛け合わせで出していた熱量を、シンプルなアレンジの中で表現しなくてはいけないわけですからね。
はい。そこはどうにかクリアできたと思います(笑)。
血を吐くようなレコーディングでした
──伊藤由奈さんの「ENDLESS STORY」、中島美嘉さんの「ORION」、今井美樹さんの「PIECE OF MY WISH」のカバーが収められていますが、セレクトはどのように?
これまでバラードをしっかり歌うことをしてこなかったんですけど、それは自分の表現力が追いつくまではむやみに歌うべきではないと思っていたからなんです。そろそろ挑戦してみたいということで、去年の8月の配信ライブで、ミニー・リパートンの「Lovin' You」をアコースティックギター1本のアレンジで歌って。次の配信ライブシリーズでは、10月から12月にかけて毎回1曲ずつバラードのカバーに挑戦しました。それがこの3曲です。
──ライブで歌うことを前提に選んだんですね。
はい。むやみやたらといろんな曲をカバーするんじゃなくて、今の自分が歌う意味があるもの、ストーリーとして外れていないものを自分の好みと照らし合わせて、スタッフさんと話し合って選びました。新作をリリースするにあたって、せっかくだからカバー曲のレコーディングにも挑戦してみようということになって。
──ひと口にアコースティックアレンジのカバーといっても、音像や表現方法はそれぞれですよね。「PIECE OF MY WISH」はコーラスの多重録音もありますし。
血を吐くようなレコーディングでした(笑)。
──聴き応えは軽やかですけど(笑)。
長時間のレコーディングで、声質が変わらないように気を付けながら歌っていたので、本当に大変でした。3曲とも誰もが知っている名曲なので、オリジナルの魅力を損なわないように考えつつ、自分なりの気持ちを乗せて歌わなくちゃいけない。それがすごく難しくて。
──伊藤由奈さん、中島美嘉さん、今井美樹さんという、ボーカリストとしての個性がはっきりある方々のヒットソングだから、寄せすぎず離れすぎずといったバランスも必要でしょうしね。
そうなんです。カバー曲に限らず、この6曲の中にそれぞれ自分で向き合うべき課題があって、そこに1つずつ取り組む作業はすごく充実していて楽しかったです。
21歳はガツガツ貪欲に
──課題をクリアした先にある“シンガー南端まいなの完成形”はどのようなものだと思いますか?
自分でもわからないんです(笑)。去年1年だけでも「こんな自分になるとは思わなかった」というくらいいろんなことを知って、経験させてもらって、この6曲を完成させることができて。どんどん自分の知らない自分が出てくるので、理想の自分のゴールはないんですけど、もっともっといろんなことを知って、吸収していきたいなと思います。
──今のこのピュアな「20歳の南端まいな」のイメージが強いので、30歳、40歳になったときの姿が想像つかないんですよね。ご自身ではどうですか?
想像つかないですね。本当に知らないことだらけで、歌についてはもちろん、1人の人間としても知らないことが山ほどあるので、もっともっと自分を大きくしていきたいです。
──1歩踏み出して広げていきたい気持ちと引っ込み思案な性格が以前であればせめぎ合っていたかと思うのですが、今は踏み出す度胸もついた?
はい。まだ若干引っ込んでるところはあるんですけど(笑)、飛び出していきたい欲がどんどん出てきたので、もっといろんなことを知りたいし経験したいし、ガツガツ貪欲になろうと思っています。気構えだけはあります(笑)。
──1人の人間としての長期的な人生設計、こんな人になりたいという目標は持っていますか?
魅力的な人間になりたいです。大雑把ですけど(笑)。私が魅力的だなあと思う人って……自分の感覚ですけど、誰から見ても魅力的というわけじゃなくて。パッと見ではわからないけど「いろんな経験を重ねたからこそなんだろうな」という芯を感じさせてくれる人が魅力的だなと感じるので、自分もそういう人になりたいなと思います。
──具体的な2021年の目標はありますか?
歌のスキルを確実に上げていきたいです。あと20歳の1年間は「20歳だから」とお祝い的に甘えられていた部分もあると思うんですけど、2月21日で21歳になるので、大人としてしっかりと自分の意見が言えるようになりたいです。