感情を滝に例えて
──歌詞も最初からスムーズに書けました?
そうですね。最初はほとんど英詞で出てきて、日本語の響きにしたらどうなるかなという興味もあるので、英語に合わせるように日本語の歌詞を作っていきます。歌い方は少し英語の発音に寄せて、英語と日本語がうまくなじむように意識して。
──韻の踏み方が独特ですよね。「Waterfall」に出てくる「ほの暗い」と「ホログラム」とか。
詩が好きなんです。小学校低学年のときの担任が詩をいっぱい暗唱させる先生で、3年間で200から300くらいの詩を覚えたことがあって。あの頃は暗唱する意味もわからずにやってたけど、それで染み付いた日本語独特の音の響きや韻の踏み方が、今役に立ってるのかなと思います。
──そもそも「Waterfall」の滝というモチーフは、どこから生まれてきたんでしょう?
自分の中で感情の起伏が、2つの滝のような情景として残ってるんです。1つ目は低いところから、濁った水が音を立てずに落ちて、水底には得体の知れないいろんな生物がうごめいてる感じ。もう1つは、カナダにあるナイアガラの滝のように迫力のある大きな滝で、爆発的な音を立てて高いところから水が落ちるイメージ。私の中にそういう2つの感情があって。
──なるほど、心象風景としての滝なんですね。
そう、その2つはまったく違うものなんですけど、それをどうせなら一緒にしちゃおうと思って作った曲です。だから1番と2番で曲調もメロディも変わっちゃってる。ちょっと不思議な面白い曲ができたなと思います。
まさか世に出すものとは……
──表題曲の「inside you」は、ドラマのために作った曲なんですか?
いえ、これはONE OK ROCKのToruさんと作った曲で、ドラマの話をいただく前からありました。ドラマの監督を務めている関(和亮)さんがこの曲を聴いてくださる機会があって、急展開でドラマ主題歌に決まって。Toruさんと「いつか形にできたらいいね」とは言ってたんですけど、まさかこんなにも早く世に出すことになるとは思ってなかったので驚きました。
──この曲は「あなたの内側を知りたい」という思いを歌っていると思うんですけど、先ほどmiletさんが「人はみんな別々のものだと感じていた」と言ったとき、まさにこの曲のことだなと思いました。
そうなんです。作ってるときからすごく自然に「Tell me what is inside you」というサビのフレーズが出てきました。
──それと同時にこの曲では、他人の内側なんてわかりっこないという絶望も歌われてる気がして。“私”と“あなた”の間に太い境界線が引かれていて、聴けば聴くほど孤独の歌だなと思うんです。
やっぱり人は1人だし、どんなに近くにいる人でも、あるときとんでもない距離を感じて、この距離は絶対に埋まらないなと思う瞬間があると思うんです。私は小さい頃から、すごく親しい人に対して「あれ? この人、私の知ってる人?」と思う瞬間が少なからずあって、そういうときはいつも、誰か知らない人が入り込んでるんじゃないかと思ってたんですよ。
──それはゾクッときますね。
でも考えてみれば、私の中にもいろんな私がいるように、その人の中にも私の知らない人格や感情があるはずで。もしそれが出てきてるとしたら「君は誰?」って……そんなことを考えることが多かったんです。だからこの曲は、本当に思ってることがそのまま出ちゃったなあと思います。
即興で作ると感情を美化できない
──曲を作るようになって、miletさんの内側に変化はありましたか?
デトックス的に出したらすっきり終わり……みたいなことはないですね。感情は消えないし、情景や色になって自分の中にずっと残ってるものだから。それを映像のようにズームして見ると、ちゃんとそのときに感じた感情が戻ってくる。
──表現することで頭の中が整理されるとか、思いが浄化されるとか、そういうことではないんですね。
例えばそれを文章化できたら、原稿用紙何枚みたいな感じでまとめられるのかもしれないけど、私の中の感情は全然対象化できずに得体の知れないまま残ってるんですよね。しかもそういう感情って、膨張したりするんですよ。だから全然かさが減らなくて重いんです、体の中に渦巻いてるものが。
──今はそういうものを曲にしているという感じ?
そうですね。そのまま歌ったほうが自分の感情が乗るし、即興で作ると感情を美化したり変換したりする時間もないので。
──人とセッションすることによって、引き出されるものもあるのでは?
「こんな自分がいたの!?」と思うことはあります。1人で作るのも楽しいんですけど、自分の中から相手に引き出してもらえる部分がたくさんあるので、今はそれが新鮮です。サカイさんのようにポップスが得意な方とやっても楽しいし、Toruさんのようなロックバンドの人とやってもやっぱりすごく楽しかったし。この間オーストラリアの若手プロデューサーとセッションしたんですけど、やっぱり仕事がすごく早くて刺激的でした。13時にスタジオ入りして、18時にはほぼ完成形のデモを聴きながら帰るみたいな(笑)。
──早すぎる(笑)。プロデューサーも燃えるんでしょうね、「この子、新しい引き出しがどんどん開くぞ!」って。
ふふふ(笑)。そう思っていただけたらうれしいですね。これからもジャンルや年代を問わず、いろんな人と楽しんで音楽を作っていきたいです。
ライブ情報
- milet SPECIAL SHOW CASE @Billboard-Live TOKYO
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2019年3月25日(月)東京都 Billboard Live TOKYO
[1st STAGE] OPEN 18:15 / START 19:00
[2nd STAGE] OPEN 20:15 / START 21:00
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2019年3月25日(月)東京都 Billboard Live TOKYO