現時点での最高傑作

──ライブのMCで「私はこのメンバーで必ずこれから日本の音楽業界のトップを取りにいきます！」とおっしゃっていましたが、その発言と「ユートピア」の「必ず辿り着くんだ」はつながっていますよね。

完全につながってます。めっちゃ力入ってましたよね（笑）。

──トップを取るためにはきっと企画や戦略も必要になってきますが……。

そこが一番苦手なんです。毎日考えてるんですけど甘くて却下されたりとか、そんなことの繰り返しです。みんなの生活もかかってますから、自分勝手になんでもやっていいわけじゃないし。コンセプトから離れていないかとか、なんでこれをやるべきなのかとか、メリット、デメリットとか。アイデアはけっこういっぱい出るんですけど、その場の思いつきとか口から出まかせばっかりだと怒られちゃうんで（笑）。

──それで今日もノートを作ってこられたんですね。

思いつきじゃなくちゃんと話せるように（笑）。「re:life」と「ユートピア」に関しては、今まで出した作品の中で一番ちゃんと伝えたいことを詰め込めた、現時点での自分の最高傑作だと思っていて、周りのスタッフやバンドメンバーもそう言ってくれるんですよ。「この曲を1人でも多くの人に届けよう」と、みんなで毎日いろいろ考えて奔走してくれているから、その努力が報われるような結果を出したいし、出さなきゃいけないと思ってるし。結果が出せたら皆さんのおかげだと思いますけど、出せなかったら私の責任です。だからもっと考えなきゃ。

──「ユートピア」にも「いつか責任という重り架せられて 泥をかぶるのが僕の役目になった」という一節があります。

昔のバイト先の店長さんを見ていて思い浮かんだフレーズなんです。キャリアや年齢を重ねてくると、どうしても責任を負う立場になりますよね。責任があるからこそ「本当にこれでいいのかな」と自分を疑う気持ちを隠しつつ、周りに反対されても押し通さなきゃいけないことってあると思うんですけど、そのときは前例を無視したやり方だったこともあって非難轟々だったんですよ。その様子を見ていて、「この人が心折れずに明日もがんばれるような曲を作りたいな」と思って書きました。

──“三上ちさこ”という看板を背負っている三上さんも、店長さんに通じる部分がありますよね。昔は「そんなのいらない」と思っていたかもしれないけど……。

今はむしろ背負いたいですね。引き受けていきたい。そのためには皆さんに応援していただかないといけないので、「私は音楽でみんなの生きる力になります」と、この2曲で約束します。騙されたと思って、皆さんの8分間を預けてほしい。私はみんなが聴いてくれないと音楽人として生きていけないし、みんなにとって必要な存在になりたいんです。

これからもワクワクを

──SHADOW盤も楽しみですね。昔の闇とは違って光を知った今の闇ですから。

そのタイミングで話そうと思ってたことなんですけど、ちょっとだけ言っちゃうと、実は1つの曲に2通りの歌詞を書いたんですよ。昔のモードで自分の内側に入って書いたのと、今のSHADOWのイメージで書いたのと。どっちにしようか迷ってるところです。

──今回のジャケット写真は白が基調ですが、コントラストが印象的なアーティスト写真から推測するに、SHADOW盤はダークな感じになるんでしょうか。

そこはお楽しみですね（笑）。ストリーミングの時代になってCDが売れなくなったと言われてひさしくて、明らかにジャケットにお金をかけなくなってきてるなと見ていて思うんですけど、そんな時代だからこそジャケットにこだわって、CDに別の意味を持たせたかったんです。モノって存在するだけで空間を変える力を持ってると思うんですよ。例えば出窓にCDが立てかけてあると「周りをきれいにしようかな」と思ったりするみたいな。それで松田剛さんというアートディレクターとタッグを組みました。Aimerさんの「茜さす / everlasting snow」のジャケットを見て衝撃を受けて、この人ならLIGHT And SHADOWの世界観を表現してくれるんじゃないかと思って。実際、見事に表現してくださったんですけど、手に取らないとわからない、しかもLIGHT盤とSHADOW盤が合わさって初めて立ち現れる仕掛けがあるんです。そういうちょっとしたことで日常に潤いを感じてもらえたらうれしいですね。ワクワクするって楽しいじゃないですか。私もこの職業を選んだからには、これからもワクワクを提供していくつもりです。楽しみにしていてください！