何も言うことがなかった「ナンバアナイン」

──自作曲やコラボ曲のほかには、ツミキさんやbuzzGさん、蜂屋ななしさん、ハヤシケイさんなど多数のボカロPからの提供曲が収録されています。こういった人選はすべてめいちゃんが？

そうですね。僕が好きな作家さんを選ばせていただいて、オファーをしました。

──先ほど「めいちゃんの書く歌詞は暗い」と言いましたが、実は作家さんの提供曲の歌詞を読んでも、明るさ一辺倒の曲って少ないんですよね。

言われてみれば確かにそうかもしれないですね。サウンドは明るくても歌詞でどこか影がある表現というか……。

──作家さん方とは普段から交流があるんですか？

それが実はあまりないんですよ。もちろん面識がある方もいらっしゃいますが、いろんな作家さんと知り合いというわけではなくて。今回曲をお願いした方々も単純に僕が普段から好きで聴いている方々にお願いした形ですね。

──ということは、作家さん方はめいちゃんが発表した曲からちゃんとアーティストの本質を見抜いて曲を書いていると。

本当にプロの方ってすごいですよね（笑）。お願いする作家さんの名前が出そろったときに、全体的なトラックリストのイメージは自分の中にできていたので、曲に対するイメージは伝えつつオーダーをしているんですけど、歌詞についてはそこまで伝えていなかったので驚きですね。

──提供曲の中で特に印象に残っている曲は？

もちろんどれもお気に入りなんですけど、すごいなと思ったのはツミキさんの「ナンバアナイン」ですね。最初に曲をもらったときから何も言うことがなかったんですよ。「こうしてください」みたいな要望が何も出てこなくて「これでお願いします！」とすぐ伝えました。

「XYZ」はホーム

──アルバムのXYZP盤のDISC 2には「XYZ TOUR」の参加者たちとのコラボ曲が収められています。ライブで共演する機会は多くても、コラボ曲を音源に残すのは今回が初めてですよね。

そうなんです。ライブでは何度も一緒に歌ってきたけど、こうやって音源を残すのはけっこう新鮮で。普段と違って客観的に楽曲と向き合えるから、いろんな発見がありました。ボーカル同士の相性とか、どこで引いて、どこで声を張るかとか。すごく勉強になったし、この経験がきっとライブにも生きるなと。

──コラボ相手として参加しているGeroさん、luzさん、センラさん、あらきさんはめいちゃんにとってどんな存在ですか？

大先輩ですね。Geroさんは僕の憧れの方。luzくんは「XYZ TOUR」に僕を呼んでくれた恩人みたいな先輩で、センラさんとあらきさんはプライベートでよくお酒を飲む先輩ですね。もはや先輩というより飲み仲間かもしれない（笑）。

──めいちゃんは2017年の「XYZ TOUR」初参加以来、毎年ツアーに参加していますが、ご自身の活動の中でこのツアーはどういうものになっていますか？

子供の頃にクリスマスが待ち遠しかった感覚に近いかもしれないですね。「XYZ」の時期が近付くと、なんだかわくわくしてくるんです。いろんな活動をさせてもらっていますけど、僕にとっては1つの“ホーム”だと感じられる居場所になっています。

──昨年6月に開催された「ひきこもりたちでもフェスがしたい！～世界征服I＠メットライフドーム～」には、サプライズとしてめいちゃんの出演があり、オーディエンスを驚かせました（参照：「革命は成った」まふまふ、最強の14人と“世界征服”への大きな一歩踏み出す）。

いろんな先輩方にフックアップしてもらえて、すごく光栄に思っています。ネット発のアーティストが注目されるようになりましたけど、新しい世代の歌い手たちまで含めてみんなが注目されているわけではなくて。僕はいい意味で橋渡しのような存在になれればいいなと思っています。

──大型のライブへの出演に声がかかるなど、新しい世代のボーカリストの中で、めいちゃんが先輩たちからフックアップされた理由はなんだと思いますか？

難しい質問ですね。先輩たちに認められた理由は直接聞いてみないとわからないんですが、僕は歌い手としての活動をコツコツ続けたことでリスナーが増えていったと感じているんです。歌い手って、もともとは“歌ってみた”を投稿する人を指す言葉ですよね。でも最近は“歌ってみた”を投稿している人が少ない。もちろんそれはオリジナル曲を投稿する人が増えたりなどいろんな事情があるんですけど、僕は“歌い手”であるために必要なことをずっと続けているんです。

「歌い手のめいちゃん」であり「肉チョモのめいちゃん」

──めいちゃんが参加しているYouTuberユニット・肉チョモランマについても聞かせてください。肉チョモランマとしての活動もすっかり軌道に乗っていて、YouTuberでの活動がめいちゃんの音楽の入り口になっている方もいるんじゃないですか？

そうなんですよ。むしろ街中では「歌い手のめいちゃん」ではなくて「肉チョモのめいちゃん」と声をかけられることのほうが多いくらい。

──YouTuberとしての活動に限らず、めいちゃんは活動の早い段階から顔を出して活動していますよね。

顔を出していないと、みんな僕がどんな顔か想像するんですよ。それで「絶対イケメンだ」みたいになるのが耐えられなくて。だから自分でハードルを下げておこうと思って、けっこう早い段階から顔を出していたんですよね。YouTuberとしての活動が違和感なく始められたのも顔を出していたおかげだと思いますし、当時の自分の決断を褒めてあげたいですね（笑）。

想像した以上に迷惑をかけた

──活動に脂が乗っている今リリースされるアルバム「大迷惑」は、めいちゃんにとってどんな作品になりましたか？

まさに“してやった”アルバムだと思います。自分が思っていることを自由に書いて、自分のお願いしたい作家さんに曲をお願いして。コラボしたい人にダメもとでオファーしたら受けていただいたりもして。自分が想像した以上にいろんな方が携わってくれて、好き放題言ってたくさん迷惑かけたかなと思います（笑）。もちろん、皆さんに協力していただいたのがすごくうれしかったし、感謝しています。

──めいちゃんがアルバム制作中にかけた一番の大迷惑はなんでしたか？

シンプルに寝坊してレコーディングに遅刻したことですね。あのときは本当に大迷惑をおかけしました（スタッフに向けて謝罪のお辞儀）。