音楽ナタリー PowerPush - 高橋幸宏 & METAFIVE(小山田圭吾 × 砂原良徳 × TOWA TEI × ゴンドウトモヒコ × LEO今井)
異能集団の誕生とその実態
「Split Spirit」制作の舞台裏
──先の展開まで考えていなかったというMETAFIVEで、今回「攻殻機動隊ARISE」の音楽を担当することになったのはどのような経緯で?
小山田 ちょうど次の「攻殻」のテーマソングをどうしようかと考えていたときにMETAFIVEが動き出して、ぴったりだなと思ったんですよ。「Solid State Society」(2006年にスカパー!で放送された長編アニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」)というのもあるし(笑)、きっと「攻殻」の近未来的なムードにはYMOの影響もあると思って。それで幸宏さんたちに声をかけて。
──もともとはライブありきだし、オリジナル楽曲の音源制作というところまでは当初考えていなかったんですよね。
高橋 この名前で何かを作るということまでは考えてなかったけど、このメンバーで何かやりたいねってのは話していて。だからタイミングがよかったよね。ただテイくんは25周年に向けて個人でもいろいろあるし、みんなそれぞれの活動があるから、全員揃う機会というのはなかなかなくて。
──それが一番心配なグループではありますよね(笑)。ではレコーディングはどのように?
高橋 想像通りだと思いますよ。まず小山田くんが曲を作って、オケのデータを回しながら、あとはそれぞれ自己責任で(笑)。歌入れのときぐらいかなあ? バンドっぽく集まったのは。それでも4人だけだったかな?
小山田 全員では一度も集まってないんですよ、このレコーディング。僕が薄めのデモを作ったら、「ハイ」って手を挙げた人に回して(笑)。「じゃあ僕ここやります」みたいな感じで作っていって、できあがったオケに最終的に幸宏さんとLEOくんが歌詞を書いて歌を入れてくれて。ゴンドウ(トモヒコ)くんとLEOくんと幸宏さんと僕がそこで初めて集まった。
──全体の作業はスムーズでしたか?
高橋 これは超スムーズだったね。「ああ、なるほどね。らしいよね」っていう音がどんどん重なっていくから。LEOくんに作詞を頼んだのも大正解で。以前、僕の作品のときにLEOくんに作詞をお願いしたら、一晩で2パターンできてきたんですよ。今回も早いだろうなと思ったら、やっぱり早かった。日本語の部分は僕のほうで加えたりして、最終的に小山田くんに投げて。レコーディング当日に「この歌詞だったらちょっとメロディ変えてみようか」って相談しながら完成させていきました。
変人の集まり? METAFIVEの実態
高橋 そういえばこれ、ミックスは誰にお願いしたの?
小山田 高山(徹)さんですね。盤にはなってないからリマスタリングはまだだけど。
高橋 きっと盤にするんだったら、まりんがマスタリングやりたがるだろうね。昔びっくりしたのが、THE BEATNIKSがひさしぶりにアルバムを作ったとき(2011年10月にリリースされた、約10年ぶりのニューアルバム「LAST TRAIN TO EXITOWN」。参照:ナタリー - [Power Push] THE BEATNIKS)、NHKの特集番組にまりんがゲストに来てくれたんだけど、そのときに「『EXITENTIALISM 出口主義』(1981年リリースの1stアルバム)のリマスター作りました」って持ってきてくれたんですよ。
──ああ、砂原さんはよく趣味でいろんな作品のリマスタリングをやっていると聞いたことがあります。
小山田 ジャケも全部手作りなんですよね(笑)。自分で紙ジャケまで作ってる。
高橋 「世界に3枚しかありません」って(笑)。昔、正規のマスタリングCDも出てるんだけど、低音の出がイマイチだからって。
──砂原さんのエンジニア的な視点とマニアとしての膨大なデータアーカイブは(笑)、METAFIVEにとって大きいですよね。
小山田 うん。でもね、今回まりんはプレイヤーとしてもすごいんですよ。
高橋 花開いてたね(笑)。
小山田 ライブではかなり手弾きで演奏してるんです。自分のライブでは彼あんまり演奏しないんだけど。今回は完全にプレイヤーですよね。
高橋 YMOのベースラインを完璧にコピー。もう頭に刷り込まれているみたいだね。間違えないもん。細野さんは間違えてたんだけどね、当時は(笑)。エンジニア的な視点はゴンちゃんも持ってるんだけど、今回ゴンちゃんどうするかなと思ったらホーンを入れてきただけで。もっとほかにもいろいろさわってみないの?って聞いたら「いや、これはやんないほうがいいと思いましたから」って。彼も変人だから。
──METAFIVEはある意味変人の集まりですよね(笑)。
小山田 どうかなあ。本当の変人はゴンちゃんしかいないと思う(笑)。
高橋 変人というか、動きが読めない。だからライブのときは緊張するんですよ。何をやり出すかわからないから(笑)。テイくんはわりと客観的ですね。まりんが「テイさん、ここはこうやりませんか」って言っても「いや、僕はここ引っ込んでますから」って。
小山田 でもテイさん、バンド名を付けるときは一番前に出てたよね(笑)。
──ああ、デザイナーとしての側面が。
高橋 テイくんはロゴの形のやりとりが一番長かったかもしれない(笑)。FIVEを英語表記にするかどうかとかね。そこはテイくんが中心になって考えてくれました。この名前に決まる前は「高橋幸宏とクール・ファイブ」って言ってたし、ピチカート・ファイヴってのも考えてたんだけど(笑)。
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- 映画「攻殻機動隊ARISE border:4 Ghost Stands Alone」 / 2014年9月6日(土)より全国上映 ※2週間限定
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(c)士郎正宗・Production I.G / 講談社・「攻殻機動隊ARISE」製作委員会
- FM3ブッダマシーン「GHOST IN THE MACHINE」 / 2013年6月27日発売 / 3132円
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高橋幸宏(タカハシユキヒロ)
1952年生まれ、東京都出身。高校時代からスタジオミュージシャンとして活躍し、武蔵野美術大学在学中の1972年にサディスティック・ミカ・バンドへドラマーとして加入。その後1978年に細野晴臣、坂本龍一とともにYELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO)を結成し国内外に大きな影響を残こし、1983年に「散開」。その後ソロ活動と併行し鈴木慶一とのユニットTHE BEATNIKSや、原田知世、高野寛らと結成したpupaなどで活躍している。また細野とのユニットSKETCH SHOWや、SKETCH SHOWに坂本が加わったHASYMOやYMOなど、名義を使い分け不定期に活動している。ソロとしては、1978年の「Saravah!」以降コンスタントにアルバムを発表。2012年6月に還暦を迎え、それを記念したトリビュートアルバム「RED DIAMOND ~Tribute to Yukihiro Takahashi~」が8月に発売された。2013年7月には、ジェームス・イハなどを迎えた新バンド「In Phase」とともに、バンドサウンドを展開した23枚目のオリジナルアルバム「LIFE ANEW」を発表した。2014年1月には小山田圭吾(Cornelius)、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井の5人をメンバーに迎えたバンド「高橋幸宏 & METAFIVE」として一夜限りのスペシャルライブを実施。このステージが好評を集め、その後も複数のライブイベントに出演し、9月公開の映画「攻殻機動隊ARISE border:4 Ghost Stands Alone」ではエンディングテーマ「Split Spirit」を書き下ろした。
Cornelius(コーネリアス)
小山田圭吾によるソロユニット。1991年のFlipper's Guitar解散後、1993年からCornelius名義で音楽活動を開始する。アルバム「THE FIRST QUESTION AWARD」「69/96」は大ヒットを記録し、当時の渋谷系ムーブメントをリードする存在に。1997年の3rdアルバム「FANTASMA」、続く4thアルバム「POINT」は世界21カ国でリリースされ、バンド「The Cornelius Group」を率いてワールドツアーを行うなどグローバルな活動を展開。2006年のアルバム「SENSUOUS」発売に伴う映像作品集「Sensurround + B-sides」は米国「第51回グラミー賞」最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞にノミネートされた。現在、自身の活動以外にも国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広いフィールドで活動を続けている。