ナタリー PowerPush - Mellowhead
新作「Daydream weaver」が提示するバンドサウンドへの回帰とさらなる進化
GHEEEとは気負いの質が違う
——GHEEEが始まったときに、深沼さんはMellowheadからこぼれたギターロック的な部分をGHEEEで発散していくんだろう、と思っていたんですが、今回のアルバムでその予想が見事に裏切られてしまって。正直言って、このアルバムの曲をやるのであれば、PLAGUESでもいいしGHEEEでもいいんじゃないか、という気もするんですが、そのあたりはいかがですか?
いや、GHEEEはね、1/4だからね。ある意味限定された責任しか負ってないというか。やっぱりGHEEEでは俺は真ん中には立ってないつもりだし。もちろんツインボーカルではあるんだけれど、あくまで近藤(智洋)さんがセンターで、俺はなんかギターだけ弾いてたり。そういうちょっと解放された感じを楽しんでいるっていうところもあるし。あとは曲に関しても極力時間をかけないで作っているし。だからサウンド自体は同じギターロックでもすごく違うんだよね。気負いの質が。
——GHEEEは楽しそうですね。
うん、楽しい。Mellowheadは楽しくないときもあるからね。作ってるとボツ曲もいっぱい出るし、やっぱり看板の背負い方が全然違う。だから深沼個人のストーリーとしては、今言ってくれたようなMellowheadとGHEEEの棲み分けっていうのはすごくわかりやすいんだけども、そういう風にならないところに、両者のテンションの持っていき方の違いがあって。バンドサウンドをGHEEEでやってるからMellowheadは違うものを、っていうようなことは今は思わないですね。
——GHEEEの中での深沼さんは1/4だけど、Mellowheadは3人で演奏していても1/3ではないわけですか、やっぱり。
それはやっぱり全然違うよね。PLAGUESのときも自分がリーダーとして、曲をほとんど作っていたし。その重さはMellowheadに引き継がれているんだと思う。
——確かにMellowheadのこのアルバムには、GHEEEや初期~中期PLAGUESとは違う緻密さを感じます。メロディの練り方を含め、非常に丁寧に作られた感じがする。
そこは今までのMellowheadと同じですね。かなりしつこく作ったつもり(笑)。そもそも曲選定の時点でハンパじゃないしつこさなんで。
——5、60曲候補があったなら、やろうと思えば2枚組にもできたでしょうし。
でも曲があるからって全部入れるのもどうかと思うしね。聴く人が集中できる時間帯にきっちり合わせて、ちゃんとベストだと思われるものを作ろうかな、と思って。
——Mellowheadに捨て曲なし、という印象は強いです。
まあね。今までもそういう気持ちで作ってたんですけど、今回はかなり(笑)。
キャッチフレーズはない
——このアルバムに関して、最初に考えていたコンセプトみたいなものがあれば教えていただきたいんですが。
途中まではね、いろんな形の曲、それこそワンマンプロダクションで作ってた曲とか、そういうのもあったんだけれども。結局「やっぱりバンドで作ろう」と思って、自分の考え得る一番素直な形でやったらこうなった。まあなんだかんだ言ってギタリストだからギターロックになるのは当然だし、だからキャッチフレーズ的なものはないんですよね。
——はい。
だからそれまでの「PLAGUESとは違うよ」的な気負いとか、そういうものもとっぱらって作ろうと思ったんです。そりゃあね、バンドでギターロックをやるわけだから、PLAGUESとの違いはある意味不明確になりますよ。でもそんなのもうどうでもいいじゃん、もうPLAGUESにこだわる時期じゃないのかな、と思って。
——規制をとっぱらって今素直にやりたかったことがこれ、ということですね。
これまでMellowheadで打ち込みや四つ打ちっぽいものや、ちょっと音響っぽいものもやったりして。そういうのを全部経験した人間が考え得る、ギターを中心とした形の一番面白い音楽がこれっていう感じじゃないですかね。
——じゃあ今後は当分このスタイルでやっていく?
またこの形に決着が付くときもあるかもしれないけれども。自分のモードとしては、やっぱり今一番やりたいのはこういう音ですね。
——なるほど。じゃあ「今回はちょっとスリーピースでやってみました」というよりはもっと明確な意志があるんですね。
うん、もうちょっと根源的にこういう風にやりたいって思ったんだよね。そのために一度ワンマンプロダクションで作った曲をみんなボツにしてるわけだし。そうしてまで、このアルバムを作りたかった。これを作りたいっていう強い欲望があったんだと思いますよ。あとは、やっぱり、こうしてリリースできるのも聴いてくれる人たちがいるから。本当に幸運だと思うし感謝してます。
CD収録曲
- Stupid diary
- 南ウイング
- Never enough (feat.Lucy)
- Here
- しにがみの夢
- Edge of the bed (feat.竹内宏美)
- Better days (feat.佐野元春)
- Nothing
- Circuit of life
- Red signal
- About a love (feat.Lucy)
- 胸いっぱいの愛
Mellowhead(めろうへっど)
1969年生まれ、福島県出身のアーティスト・深沼元昭のソロユニット。PLAGUESのフロントマンとして活躍していた深沼が、2002年にバンドの活動休止を機に始動させる。バンド時代とは趣の異なる、プロトゥールスを利用した自宅録音により生み出された音世界が特徴。2003年4月に1stアルバム「mellowhead」、翌2004年にはメジャーレーベルからアルバム「Untitled」を発表している。また、深沼は作家/プロデューサーとしてもさまざまなアーティストとのコラボレーションを行っており、近年は佐野元春のセッションに参加するほか、2007年には近藤智洋(ex.PEALOUT)、YANA(ex.ZEPPET STORE)らと新たなバンド・GHEEEを結成。90年代の主流であったギターロックをよみがえらせ、世代を超え支持を集めている。