ナタリー PowerPush - Mellowhead

新作「Daydream weaver」が提示するバンドサウンドへの回帰とさらなる進化

PLAGUESがずっと続いてたらこうなってたかも

Mellowhead

——バンドでのレコーディングはどうでした?

基本的にあの2人の演奏力はハンパじゃないから、ついていくのがたいへん(笑)。自分の曲なのに俺は間違えるからね。2人はほとんど1、2回目のテイクでOKなんだけど。

——ただ、深沼さんの楽曲をスリーピースのロックバンドで演奏するという形は、PLAGUESのそれと非常に近い気がするんですが。

まあね(笑)。PLAGUESがずっと続いてたらこうなってたかもしれないな、と思う部分もあります。今回はそのくらい素直に作ってるし。自分の考えるギターロックをサクッとそのままやってるっていう意識はありますよ。

——なるほど。でもそこで小松さんと林さんの色が出ているから、単なるPLAGUESの延長にはならないわけですね。

そうですね。やっぱりね、曲を作ってるときとか、アレンジとかもそうなんだけど、あの2人が喜んでくれるような曲にしたいな、っていう気持ちもあるわけですよ(笑)。こういうのだったら面白がってやってくれるかな、とか、こういうの小松くんは得意だから、こういうオカズを入れよう、とか。ここでこういうフレーズが乗ったら林くんのベースがビシっとはまるんじゃねえか、とか。そういうところが全体のサウンドに影響するっていうのはあるかもしれないですね。

——それはまさに“バンド”じゃないですか。

うん、パーマネントなバンドではないけれど、音だけじゃなくてスピリットの部分でもすごくバンドになってるとは思います。

——これまでのMellowheadは、こういう音を作りたいとか、こういう世界観を作りたいという欲求が先にあって、それを演奏できる人を連れてくるというスタンスだったと思うんです。

そうですね。

——でも今回のやり方はそうではないですよね。

そうですね。これまでとは違うと思う。今回もワンマンプロダクションで進めていた曲はたくさんあったんだけど、小松くんに叩いてもらったり、林くんに弾いてもらうことを考えたときに、大半の曲をボツにしたんです。次に作るアルバムはそういうんじゃない、と。

——ワンマンプロダクションの曲を捨ててまで、この3人のバンドサウンドでやる曲をアルバムの核にしたい、という思いが強かったということ?

それはやっぱり強かったですね。

以前は変えていくことが成長だと思っていた

Mellowhead

——やはりこういうギターロックサウンドが深沼さんの原点なんでしょうか?

うーん、サウンド的にはやっぱりすごく原点に近いところなんだけど、気持ち的には自分の得意なものを客観的に認められるようになったというほうが大きいですね。「それ、そのままでいいじゃん」って素直に言えるようになった。

——以前は言えなかった?

以前は自分の中で、変えていくことが成長だと思っていたんです。もっと違うもの、新しいものを求めてた。でも逆に今は、自分がいいと思うものをそのままやるのがいいに決まってる、と思えるようになった。そこがすごく違うところですね。以前は原点に戻るということを後退だと感じていた時期っていうのがやっぱあったと思うんですよ。

——Mellowheadは特に、緻密なサウンドプロダクトで新しいものを作ろうという思いが強かったと思うんですけど。今はそうしたテーマからも自由になった感じですか?

そうですね。あとはやっぱりその、なんか、これはすごく思っていることなんですけど。思っているっていうか、たまにその特殊性に気づいてすごい自分で笑えてくるようなところなんですけれど。こんなに長くやっていて、デビューから16年ですけど、今も本気で発展途上って思っているんですよ。本気でこれから一番良くなると思っているし、成長し続けていると思っているんです。そういう中で、原点回帰みたいなことをやるのは成長してないってことなんじゃないか、っていう風に以前は考えたりもしてたんだけど。こういうアルバムを今作れるっていうのも一種の成長だなって。今はそういう風に思えるようになったんですよね。

——じゃあ20代の頃は求められていることはやってたまるか、みたいな反抗心も。

あったと思います。

——ただ、PLAGUESはスタイルこそスリーピースのロックバンドでしたが、そんなにストレートな音だけを出してたわけでもないですよね。どこかメタ的な、ひねくれた部分もあって。

まあね。それは自分がストレートなキャラクターじゃないと思いこんでいたってのもあるし。まあ実際そうなんだけども(笑)。あと、今はいろんな外の仕事をやって、いい感じで力を使えているから、自分の作品に対する力みがないってのもあるかもしれない。

——このアルバムを聴いて、これまでのMellowheadにはやはりどこか力んだところがあったのかな、と気づかされました。

そうそう。だからそのへんがやっぱりPLAGUESの歴史との距離感が出てきたってことなんだよね。いい意味でもうPLAGUESを意識しなくなったというか。「もういいだろ」みたいな、そういう気持ちはあると思う(笑)。

ニューアルバム「Daydream weaver」 / 2009年4月8日発売 / 3000円(税込) / LAVAFLOW RECORDS / DDCO-4001

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CD収録曲
  1. Stupid diary
  2. 南ウイング
  3. Never enough (feat.Lucy)
  4. Here
  5. しにがみの夢
  6. Edge of the bed (feat.竹内宏美)
  7. Better days (feat.佐野元春)
  8. Nothing
  9. Circuit of life
  10. Red signal
  11. About a love (feat.Lucy)
  12. 胸いっぱいの愛
Mellowhead(めろうへっど)

1969年生まれ、福島県出身のアーティスト・深沼元昭のソロユニット。PLAGUESのフロントマンとして活躍していた深沼が、2002年にバンドの活動休止を機に始動させる。バンド時代とは趣の異なる、プロトゥールスを利用した自宅録音により生み出された音世界が特徴。2003年4月に1stアルバム「mellowhead」、翌2004年にはメジャーレーベルからアルバム「Untitled」を発表している。また、深沼は作家/プロデューサーとしてもさまざまなアーティストとのコラボレーションを行っており、近年は佐野元春のセッションに参加するほか、2007年には近藤智洋(ex.PEALOUT)、YANA(ex.ZEPPET STORE)らと新たなバンド・GHEEEを結成。90年代の主流であったギターロックをよみがえらせ、世代を超え支持を集めている。