音楽ナタリー PowerPush - Mellowhead
盟友ボーカリスト3名とタッグ「Kanata」で描く新たな世界
Mellowheadが通算5作目となるオリジナルアルバム「Kanata」を完成させた。このアルバムには片寄明人(GREAT3)、西寺郷太(NONA REEVES)、堀込泰行という3人のボーカリストが参加。幅広いサウンドアプローチのもと、それぞれにエモーショナルな情景を描き出している。
さまざまなバンドで八面六臂の活躍を続ける深沼元昭が、自身の中核を成すプロジェクト・Mellowhead名義でリリースする約6年ぶりのニューアルバム。この作品の成り立ちについて深沼に話を聞いた。
取材・文 / 大山卓也 インタビュー撮影 / 佐藤類
Mellowheadは一番パーソナルな場所
──Mellowheadとしては6年ぶりのアルバムになりますね。
毎年リリースしてるつもりなんですけどね。PLAGUESだったりGHEEEだったりで。
──2009年にMellowheadのアルバム「Daydream weaver」がリリースされて、その翌年にPLAGUESが復活しています。
それからPLAGUESでアルバム3枚、GHEEEで2枚出してて。ちゃんと働いてるんだけど、Mellowheadの順番がなかなか回ってこなかった(笑)。
──この数年、深沼さんの中でMellowheadの位置付けは変わってきましたか?
そうですね、最初はやっぱり“PLAGUESをやってた人が新しく始めたもの”だったから、PLAGUESとの距離感を強く出していこうっていう意識はあったと思う。でも今はPLAGUESもGHEEEもMellowheadも並行してやってますからね。そのぶんファンがMellowheadに求めるものが見えてきたというか、そこは以前より意識してます。
──深沼さんが思う“Mellowheadらしさ”とは?
自分にとって一番パーソナルな場っていうことですね。自分から出てくるものを自分により近い形で出せる場というか。自分自身のいろんな活動──プロデュースだったり、誰かのツアーやレコーディングに参加したりっていうのを経て、自然に出てきたものがMellowheadになる。だからMellowheadの作風っていうのはわりとコロコロ変わってもいいかなって思うんです。単純に言えばサウンドプロダクションの形とか。
──確かに前作からは林幸治(B / TRICERATOPS)さん、小松シゲル(Dr / NONA REEVES)さんを迎えて、いわゆるギターロックバンド編成で活動していますし。(参照:Mellowhead「Daydream weaver」インタビュー)
そう、あのときは大きな転換でしたね。それまでは全部1人で作るっていうことにこだわってたので。
ずっと追いつけないものを追いかけている
──Mellowheadの歌詞についてはどう捉えていますか?
歌詞もパーソナルというか、より自分自身に近いですね。PLAGUESだったら書かないようなことも書く。
──確かにPLAGUESの歌詞はよりスタイリッシュな印象があります。
やっぱりバンドだとバンドのボーカリストが歌うための歌詞になりますからね。特にPLAGUESは若い頃に自分がイメージした「こうあってほしい」っていうバンド像があるし、歌詞のスタイルだって一生懸命考えて編み出したわけだから。それを守りたいっていう気持ちがすごくある。PLAGUESの中だからこそ言えることっていうのはありますね。
──深沼さんが曲を作るとき、歌詞やテーマが先にできることもありますか?
たまにありますよ。歌詞っていうかタイトルですね。タイトルと、それにまつわる自分の中でのストーリーとかシーンがあって、それを使いたくて曲を書くという感じ。
──今回のアルバムで言うと?
「逆光のせい」とかはそうですね。タイトルが先にあって作り始めたんです。なんていうのかな、ブルーな感情、憂いを持ちつつ前に進むっていう、そういう曲が今回アルバムの中で多いんですけど、そのシチュエーションを象徴するタイトルがこれだった。
──「逆光のせい」の歌詞では「この先が何も見えないのは Yes! そう、ここより明るいところへ向かう 逆光のせいに違いないぜ」という前向きな視点が描かれていますね。
うん、Mellowheadの歌詞って「そのまんまだな」って思うことが多くて。いろいろ大変なことがあるけど、そういうのを抱えつつ前を見て進んでいくしかないよね、みたいな。そういう気持ちをすごく素直に書いてますね。
──それに加えてどこか“儚さ”みたいなものも感じます。特に今回のアルバムの歌詞や「Kanata」というタイトルに色濃く出ていると思うんですが。
うんうん。ずっと追いつけないものを追いかけてる感じというか。それはすごくあると思います。
次のページ » ボーカリストが決まってから曲を作り始める
- ニューアルバム「Kanata」 / 2015年4月22日発売 / [CD2枚組] 3780円 / LAVAFLOW RECORDS / DQC-1473~4
- [CD2枚組] 3780円 / DQC-1473~4
収録曲
- 逆光のせい
- その予感
- Silent bliss
- 未完成(feat. 堀込泰行)
- スパムの森
- Come together
- Memory man(feat. 片寄明人)
- 残像の部屋(feat. 西寺郷太)
- 乾いた涙無駄にならないように
- 5秒前のゴースト
- 栞
- 手の温度
- 逆光のせい(reprise / feat. 堀込泰行)
bonus disc
- Better days(feat. 佐野元春 2015 New mix)
- Convertible(feat. 片寄明人 2015 New mix)
- ラハイナ(feat. TURNER CAR 2015 New mix)
- MABATAKI Rewind(feat. 竹内宏美 English ver.)
- Leviathan(未発表曲)
- 未完成(FKNM Vocal ver.)
- 残像の部屋(FKNM Vocal ver.)
- Memory man(FKNM Vocal ver.)
Mellowhead(メロウヘッド)
深沼元昭のソロプロジェクト。PLAGUESのフロントマンとして活躍していた深沼が、バンドの活動休止を機に2002年より始動させる。バンド時代とは趣の異なる宅録スタイルを特徴とし、2003年4月に1stアルバム「Mellowhead」をリリース。2009年からはバンドサウンドを主軸としたスタイルに移行した。また深沼は作家・プロデューサーとして多くのアーティストの作品を手がけるほか、佐野元春 & THE COYOTE BANDにもギタリストとして参加。2007年からはGHEEE、2010年からはPLAGUESでの活動も並行して行っている。