ナタリー PowerPush - Mellowhead
新作「Daydream weaver」が提示するバンドサウンドへの回帰とさらなる進化
深沼元昭が、Mellowhead名義では4年ぶりとなるオリジナルアルバム「Daydream weaver」を完成させた。宅録ベースの緻密なサウンドプロダクションを得意としていたMellowheadだが、このアルバムはなんとスリーピースのバンドサウンドを主軸とした、ギターロック的要素の濃い作品。深沼の全キャリアを通しての最高傑作と呼べるその内容が、シーンの注目を集めることは確実だ。
制作のスタイルを大きく変えた理由は何なのか? またその手応えは? 深沼元昭本人に、このアルバムにまつわる本音を訊いてみた。
取材・文 / 大山卓也 インタビュー撮影 / 中西求
ベストアルバムのつもりで選曲
——4年ぶりのオリジナルアルバムですね。
こんなに空いたのは珍しいよね。PLAGUES時代からずっと1年に1枚ずつ出してたから、そう考えると、自分のリーダーアルバムが4年出てないっていうのは本当に初めてで。俺としてはその間、GHEEE(別プロジェクト)で2枚出してるからいいだろ、っていうのもあるんだけど。でもちゃんとしたMellowheadのアルバムとしては4年ぶりですね。
——Mellowhead名義の楽曲は作りためていたんですか?
うん、曲自体は5、60曲書いてたし、ほぼ完成に近い形までいった曲もこのアルバムの倍くらいあったから。
——厳選しただけあって、曲のクオリティはどれも非常に高いですね。
気持ち的には、空いた期間に3枚くらいアルバムを出したとして、その3枚から選んでベストアルバムを作ったくらいの感じで。そういうつもりで選曲しましたからね。アルバムとしてのバランスも考えながら。
初期Mellowheadはもう終わった
——今回、半分以上の曲はスリーピースのロックバンドスタイルで演奏されていますが。
うん、ほとんどバンドですね。
——PLAGUESで到達したバンドサウンドにひと区切り付けて、バンドでは表現しきれなかったものを、宅録ベースで1人で作っていくのがMellowheadである、と思っていたんですが、それが今回蓋を開けてみたら、素直なバンドサウンドが主体になっていて。正直驚かされました。
確かに(笑)。うん。
——そのあたり深沼さんの中ではどういう意図が?
今まではMellowheadなりの力みっていうのもあったと思うんですよね。やっぱりPLAGUESとは違う、新しいことをやってますという部分をアピールしたかったし。曲を作っててもPLAGUESに似てくるとやめちゃう、みたいなところもあって。でも今回はそういうのを特に考えずに、自分の作り得る中で一番良い曲を集めて、良いアレンジで、素直に作ったらこうなったということで。まあなんだかんだ言ってもギターロックっぽい楽曲を作るのは得意だし。だからそれを避けることもねえだろ、みたいな(笑)。単純にそういう精神状態にたどり着いたっていうところはあるんじゃないですかね。
——じゃあ今まではギターロック的なものは意識して避けていたわけですよね?
避けてましたね。
——PLAGUESっぽいものは止めようと。
うん。
——ここにきて心境の変化が起きたのはなぜなんでしょう?
あの、単純に時間が経ったというのはあると思うんですよ。いわゆるワンマンプロダクションで、打ち込みバリバリでずっとやってきて。で、アルバムを3枚出して、ベストみたいなもの(「Velocity Days」)を出して。そこまでで、初期Mellowheadはもう終わったな、という実感があったんですよね。うん。だからここからはもうちょっと自分の中でのMellowheadのあり方が変わってもいいんじゃないのかな、と思って。
——なるほど。
で、そうやってMellowheadをやりながら、今のバンドのメンバーとライブをたくさんやって。ライブのアレンジで、もう一度曲を録り直したりとかしていくうちに、これはMellowheadのライブで生まれてきたものだから、このバンドサウンドもMellowheadってことでもういいだろう、と思って。
——バンドメンバーがMellowheadを作っている部分もあると。
うん、例えば俺が自分の作品や他の人のプロデュースでドラムトラックを作ったりするときも、自然と小松(シゲル / Drums from NONA REEVES)くんのフレーズが出てきたりするわけですよ。
——染みついてる?
そう、染みついてる。1人で打ち込みしてても小松くんっぽいオカズが出てきたりするんだよね。そういう意味では、バンドの音と自分がうまいこと同化してきたのかな。だから今回はそのまま小松、林(幸治 / Bass from TRICERATOPS)組でやってもらおうかな、と思って。
CD収録曲
- Stupid diary
- 南ウイング
- Never enough (feat.Lucy)
- Here
- しにがみの夢
- Edge of the bed (feat.竹内宏美)
- Better days (feat.佐野元春)
- Nothing
- Circuit of life
- Red signal
- About a love (feat.Lucy)
- 胸いっぱいの愛
Mellowhead(めろうへっど)
1969年生まれ、福島県出身のアーティスト・深沼元昭のソロユニット。PLAGUESのフロントマンとして活躍していた深沼が、2002年にバンドの活動休止を機に始動させる。バンド時代とは趣の異なる、プロトゥールスを利用した自宅録音により生み出された音世界が特徴。2003年4月に1stアルバム「mellowhead」、翌2004年にはメジャーレーベルからアルバム「Untitled」を発表している。また、深沼は作家/プロデューサーとしてもさまざまなアーティストとのコラボレーションを行っており、近年は佐野元春のセッションに参加するほか、2007年には近藤智洋(ex.PEALOUT)、YANA(ex.ZEPPET STORE)らと新たなバンド・GHEEEを結成。90年代の主流であったギターロックをよみがえらせ、世代を超え支持を集めている。