眉村ちあき「SAI」リリース記念、日本音響研究所・鈴木創所長と対談「歌声はフレディ・マーキュリーに近い」 (3/4)

眉村ちあき ソロインタビュー

マユムラーがひっくり返る

──前作「ima」(参照:タイアップ曲から“ぶっ飛び曲”まで、眉村ちあきがやりたいこと詰め込んだ「ima」)から約1年2カ月ぶりのニューアルバム「SAI」が完成しました。

はい! いつも成長記録みたいな感じで、毎年アルバムを出してるんですよ。ブワーッと曲を作って「とりあえず世に放出しないと!」という気持ちでアルバムを出させてもらって。今回も、この1年ちょっとの成長過程をガッツリ感じてもらえるんじゃないかなと思います。最近はタイアップのお話をいただくことが増えていて。

眉村ちあき

眉村ちあき

──「マルコッパ」(テレビアニメ「ちみも」オープニング主題歌)、「未来の僕が手を振っている」(駿台予備学校の受験生応援ソング)など、確かにタイアップ曲が増えてますよね。

テーマをもらって楽曲を書き下ろすときも、ノンストレスでやれるようになってきたんですよ。前は「サビはこんな感じで」とか「この言葉を入れて」みたいなことを言われると「もっと自由に作らせてよ」って思うこともあって。今はオーダーや条件があっても、「オッケー! これを乗り越えたら私の勝ちね!」とゲーム感覚で楽しみながらやれてるんですよ。そういう部分にも成長を感じるし、あと、前回のアルバムに比べると、外に開けてる感じもあります。前作の「ima」は(コロナの)自粛期間も挟んでいたから、お家で聴くのに合う感じとか寄り添う系の曲が多かった気がして。今回は「コール&レスポンスしたら楽しいだろうな」とライブを意識した曲もあるし、そこはかなり違うところなのかなって。

──声出しもOKになりつつありますからね。

そうですよね。あとね、ここ1年くらいはいろんな人に話しかけるようにしてたんですよ。「どんな音楽を聴いてるんですか?」とか「どんな仕事しているんですか?」と聞いて、外からの情報もたくさんもらって。いろいろとインプットしながら曲を作っていた感覚がすごくありますね。

──いろんな人に話しかけるというのは……?

例えば立ち飲み屋で隣にいたおじさんと声をかけたり(笑)。1回、話しかけた相手がマユムラー(眉村ちあきファンの名称)だったことがあるんですよ。私、マスクして帽子かぶってたから、気付かれなくて。音楽の話を振ったら、「眉村ちあきって人がオススメだよ」って、お店のママみたいな人に「音楽かけてよ」って言い出したんです。最後に「私だよー」って正体を明かしたら、ひっくり返ってました(笑)。おじさんだけじゃなくて、いろんな人と話して、友達になったこともありますね。一緒にお出かけしたり、ここにきて青春を感じてます(笑)。

──人とコミュニケーションを取るようになったのは、何かきっかけがあったんですか?

1、2年前ぐらいに、たまたま19、20歳くらいの友達がポツッとできて。その子たちが遊び場に連れて行ってくれて、みんな、初対面でもガンガン話しかけてくれるんですよ。「俺ってこういうところがすごくて」とか「私、こういうことに挑戦してるんだ。ウェイ!」とか、「僕たちなんも怖くないです、ウェイ!」みたいなノリで、「うわ、すご!」と衝撃を受けて。そういう心を忘れてたかもなって思ったんですよね、そのとき。で「小学生に戻ってみよう!」と思ったんです。気になったことは全部聞くし、話しかけたい人には話しかけてみて。それを続けてたら、友達も増えました。

──そこで感じたことを曲にすることもあると。

はい。「平成黎明GAL」はまさに友達と遊んでたときのことを歌っています。まっすぐに「友達って最高だよね」というメッセージを込めて作ったのは初めてだし、すごくいい曲になったなと思います。私、中2くらいのときはめっちゃギャルだったんですよ。目とかも真っ黒にメイクして。その頃が一番無敵でした。高校に入ってからは、面白いと思うことが周りの人とズレちゃって。「なんでそれで盛り上がれるの?」と疑問に思うようになってしまって、宇宙人みたいでしたね。

眉村ちあき

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「肉喰え」は本当にある

──ギャルだった時期から眉村さんの個性が爆発し始めたんでしょうね。今回のアルバムも本当に自由で。サウンドの幅がすごいことになってますね。

そうなんですよ(笑)。いろんなことをやりたくなっちゃうし、すぐ飽きちゃうので。「前回はこういう曲だったから、今回はまったく違う曲にしよう」というのがずっと続いてるから、どうしても取っ散らかっちゃうんです。

──それが眉村さんのよさだと思います。収録曲についても聞かせてください。「肉喰え」「ピカレスクヒーロー」はすでにライブで披露されていた楽曲ですね。

はい。「肉喰え」はバンドで演奏することを前提にしていて。デモはあえて雑に作って、眉村ちあきの音楽隊(バンド)に「19歳くらいの初期衝動で弾いてくれ!」とお願いして。編曲にこんなにスムーズに進んだことはなかったし(笑)、とってもカッコよくなりました。

──「何でもいいから一気飲みして」「噛む数気にせず 肉を喰う」みたいな状況、本当にあったんですか?

ありました(笑)。「暴飲暴食してー! とにかく一気飲みしたいし、肉もバクバク食いたい!」みたいなことがときどきあるんですよ。この曲を作ったきっかけとしては……私、人に嫌なことを言われると、その場しのぎというか、笑顔で「はい」って言っちゃうんです。つまり傷付いてないような顔をするんですけど、そうじゃなくて「は? 何それ? 帰るわ」と感情をむき出しにできる人もいるじゃないですか。

──いますね。うらやましいです。

そういう人を見ると「カッケー!」と思うんですよ。嫌われることを恐れてないというか。私もそうなりたいんだけど、なかなかなれなくて、「今日も笑顔でやりすごしてしまったな」って。そういうときは家で暴飲暴食する!という曲ですね。「ピカレスクヒーロー」は、インスタライブしてるときに作りました。「なんか作ろっかな」というノリで始めたんですけど、いい曲になりそうだったから、「ごめん、インスタライブは止めて集中するわ」って(笑)。コメント欄にかまってられなかったので。

──ファンの皆さんには言いたいことが言えるのかも。

あ、そうかも。「ピカレスクヒーロー」はまだ3回くらいしかライブでやってないんですけど、みんな踊ってくれてます。サビにボーカルがあまりなくて、音ばっかりというのも珍しいですね。