眉村ちあき「SAI」リリース記念、日本音響研究所・鈴木創所長と対談「歌声はフレディ・マーキュリーに近い」 (4/4)

TACOS BEATSからもらった光

──「浜で聴くチューン」(眉村ちあき&TACOS BEATS)は、ビートメイカーのTACOS BEATSさんとの共作ですね。

TACOS BEATSさんは以前すごくお世話になった方なんです。眉村ちあきとして活動を始めたばかりの頃に、10人くらいでいっぱいになるライブハウスに出ていて、そのハコの音響をやってくれてたんですよ。「オリジナル曲だけじゃなくて、カバーもやったほうがいいのかな」とかいろいろ悩んでいたときに「ちあきちゃんはそのままでいいよ」「新曲できたら教えてね」とずっと言い続けてくれたのがTACOS BEATSさんだったんです。

──いい曲を作ってるんだから、そのままがんばれと。

そうです。お客さんは0人とか1人だったから、「私、このままでいいのかな」と不安になるじゃないですか。当時はTACOS BEATSさんの言葉だけが光だったんですよね。TACOS BEATSさんはアイドルの曲のトラックを作ったり、サウンドプロデュースもやってたりしててすごくカッコよくて。「負けたくない」と思って曲を作っていた時期もあったんですよね。そのハコでライブし続けてたら、9人くらい呼べるようになって。キャパが10人だから、ほとんどが私のお客さん(笑)。そのうちに「もっと大きいところでやったほうがいいね」ということでハコを卒業するときがきて。その過程もずっと見守ってもらってたし、会えなくなった時期もすごく応援してくれてたんです。「アーティストとして大きくなったらコラボしたい」と思っていたし、それが実現してめちゃくちゃうれしいですね。「浜で聴くチューン」はTACOS BEATSさんのスタジオに遊びに行ったときにノリで作ったんですけど、「交互に歌詞を書こうよ」という話もして。一緒に作ってるときもずっとワクワクしていたし、いい曲になったなと思います。

眉村ちあき

眉村ちあき

──「Natto」は音数を抑えたディープなトラックが素晴らしいなと。

やった! トラックは1年前くらいに出てきたんですけど、なかなか完成しなくて。アルバム制作の終わり頃になって、「やっぱりあの曲を入れよう!」と思ったんですよね。音数が少なくて、ささやくようなボーカルの曲をやってみたかったというか。アルバムのバランス的にも、そういう曲があったら面白いだろうなと思って。

──トラックメイクも向上してますよね。

そうだったらいいんですけどね。でも、こだわりはどんどん強くなってるし、妥協もしなくなっていて。前は「聴いてて気持ちいいから、これでいっか」という気持ちもあったけど、今は「こうしたらもっとよくなるんじゃないか?」と細かいところにも目を向けられるようになってます。1曲にかける時間も増えてますね。

──音色やリズムもすごく研ぎ澄まされていて。こういうトラックに納豆の歌詞を乗せるのも眉村さんらしいです。

納豆のことを歌ってるなんて、想像つかないですよね(笑)。ホントに毎日食べてるんですよ、納豆。マヨネーズかけてごはんに乗せて、ふりかけと砕いた煎餅も入れて。めっちゃおいしいんですけど、気持ち悪がられるから1人で食べてます(笑)。

ケンカ相手を曲で殴ろう

──「未来の僕が手を振っている」も、アルバムの聴きどころの1つだと思います。真っ当にいい曲だなと。

確かに、こんなにまっすぐな球を投げた感じの曲は今までなかったですね。受験生の皆さんに向けた応援ソングなので、やっぱりストレートにぶつかったほうが響くんじゃないかなって。受験生100人分のアンケートを読んで、実際に3人の方とトークさせてもらったんですよ。皆さん、すごくしっかりしていて。言葉遣いも大人顔負けだったんですけど、やっぱり不安そうではあるんですよね。その感情を落とし込んで作った曲だし、めちゃくちゃ気持ちがこもってますね。私、すぐ影響されるんですよ。受験生とおしゃべりすると本当に受験するような気持ちになったり(笑)。

──共感力が高いんでしょうね。

そうみたいです。友達の悩みも自分の悩みみたいになっちゃうし、ラジオ番組に新卒の子が「明日、入社式です。不安だけどがんばります」ってメールを送ってくれると、自分もちょっと不安になったり(笑)。自分の気持ちがなくならないように気を付けようと思ってます。

眉村ちあき

眉村ちあき

──他者にシンクロすることで曲につながりそうですけどね。アコギ弾き語りの「ぢごくに落ちて心から泣け」には怒りがみなぎってますが、これはどういうきっかけでできたんですか?

さっき「いろんな人に話しかけてる」と言いましたけど、お酒の席で知らない男の人とケンカみたいになったことがあって。私はふざけてるんだろうなと思ってたんだけど、どうやら本気で怒ってたんですよね。私はその場を離れて、友達が代わりに謝ってくれたんですけど、その男の人に「勝ったぜ」とは思ってほしくない。直接やり返すんじゃなくて「曲で殴ろう」と思ったんです。たぶん、その男の人は覚えてないと思うんだけど、この曲を聴いたらギョッとするかも(笑)。それも外からもインプットというか、いろんなことが曲につながるんだなと思いますね。

あなたにとっての“SAI”は?

──アルバムの最後を飾るのは「十二支のアマゾン」です。十二支が順番に登場する組曲みたいな楽曲ですね。

この曲、12分割してNFT化するんですよ。音楽と絵をセットにして販売するので、全部合わせてもちゃんと曲になるように、つなぎ目とかもできるだけナチュラルにして。サウンドはフィーリングで作ることが多かったんですけど、この曲はすごく頭を使いました(笑)。歌詞もいろいろ工夫しましたね。それぞれの動物の性格や生態を調べて、イヌは「散歩行ってごはん食べて遊ぶ寝る」だなとか(笑)。最後はイノシシなんですけど、最後の行動がネズミにつながってたり。NFTの絵も自分で描いたので、ぜひ見てもらいたいです。NFTって、著作権も買った人に行くんですよね。ファンの人に買ってもらって、ウシの絵をTシャツにしたり、ぜひ商売に役立ててほしいです(笑)。

──アイデアが広がりますね。

そうなんですよ。「十二支のアマゾン」も企業の方から「NFTで何かやりませんか?」とお話をいただいたのがきっかけで。「ナントカザウルス」もニッポン放送の「ミューコミVR」の「眉村ちあき怪獣シンガー化計画」からできた曲なんです。私専用のアバターを作っていただいて、それを動かしながら生放送で楽曲を解禁するという企画で。いろいろ面白いことをやらせてもらえてありがたいです。

──企画する方も「眉村さんにお願いしたら、面白くなりそう」と思うんでしょうね。アルバムタイトルの「SAI」については?

いろんな“SAI”があるんですよね。「最高!」ってときに作った曲もあれば、「最悪だな」と思いながら作った曲もあって。「才能を開花させるぞ!」という気持ちもある。ジャケットも色彩豊かで。「あなたにとっての“SAI”はなんですか?」という思いも込めているので、どんなふうに受け取ってもらえるか楽しみです。

──アルバムリリース後、5月21日からは 全国ツアー「CHIAKI MAYUMURA Tour “一切合SAI”」がスタートします。

今まで一番公演数が多かったのが「ima」ツアーの14公演だったんですけど、今回は22カ所なんですよ。もともとライブはガンガンやりたい派だし、ライブ映像がSNSでバズったことも何回かあって。「私のライブって魅力があるのかも」と自信も付いてきたし、「〇〇県にも来てください」というコメントもめっちゃいただけるので「ホントにライブに来てくれるの?」と疑いつつ(笑)、私から会いに行こうかなと。5月から週末は旅人になるので、友達と遊ばない覚悟です(笑)。楽しく回りたいなと思ってます。ツアーって、いろんなことが起きるじゃないですか。それをもとに曲もできるだろうなって。実は次に作りたいアルバムのコンセプトも決まってるんですよ。なので早くツアーに行きたいです(笑)。

──制作も続くわけですね。楽しみです!

私も楽しみです。ただ、「SAI」をリリースしたばかりなので(笑)。まずは全国ツアーとアメリカ公演(5月26~28日にアメリカ・カンザス州で開催されるジャパンカルチャーイベント「Naka-Kon 2023」)をがんばります!

眉村ちあき

眉村ちあき

ライブ情報

CHIAKI MAYUMURA Tour “一切合SAI”

  • 2023年5月21日(日)千葉県 KASHIWA PALOOZA
  • 2023年6月3日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2023年6月4日(日)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya
  • 2023年6月10日(土)広島県 広島セカンド・クラッチ
  • 2023年6月11日(日)山口県 LIVE rise SHUNAN
  • 2023年6月24日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2023年6月25日(日)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
  • 2023年7月15日(土)香川県 DIME
  • 2023年7月17日(月・祝)大阪府 BIGCAT
  • 2023年7月21日(金)東京都 Spotify O-EAST
  • 2023年9月1日(金)宮城県 darwin
  • 2023年9月2日(土)秋田県 Club SWINDLE
  • 2023年9月3日(日)北海道 PLANT
  • 2023年9月16日(土)兵庫県 チキンジョージ
  • 2023年9月17日(日)奈良県 奈良NEVER LAND
  • 2023年9月18日(月・祝)京都府 KYOTO MUSE
  • 2023年9月30日(土)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2023年10月1日(日)愛知県 SPADE BOX
  • 2023年10月13日(金)福岡県 LIVEHOUSE OP's
  • 2023年10月14日(土)長崎県 Studio Do!
  • 2023年10月15日(日)鹿児島県 SR HALL
  • 2023年10月21日(土)沖縄県 桜坂セントラル

プロフィール

眉村ちあき(マユムラチアキ)

アイドル、シンガーソングライター、トラックメイカー、実業家。“弾き語りトラックメイカーアイドル”を自称している。グループアイドルとして活動を行ったのち、2016年に眉村ちあき名義でソロ活動を開始。2017年に株式会社会社じゃないもんを設立し、現在は取締役会長を務めている。2019年にTOY'S FACTORYからメジャーデビューを果たし、2020年には東京・日本武道館でワンマンライブ「日本元気女歌手 ~夢だけど夢じゃなかった~」を開催。TBS「はやドキ!」テーマソングの「この朝を生きている」、日清食品「カップヌードル PRO」CMソングの「顔ドン」、三越伊勢丹のクリスマスムービーのテーマ曲「シュリティカルマジック」、駿台予備学校の受験生応援ソング「未来の僕が手を振っている」などさまざまなタイアップソングを手がけている。2022年2月にアルバム「ima」、2023年5月にアルバム「SAI」をリリース。2023年5月からは全国ツアー「CHIAKI MAYUMURA Tour “一切合SAI”」を開催する。

鈴木創(スズキハジメ)

日本音響研究所の所長で声紋鑑定、音響分析の専門家 。2002年に「イヌ語を翻訳する機械 バウリンガル」でイグノーベル平和賞受賞。テレビをはじめとするさまざまなメディアに出演している。ペットはマイクロブタ。