May J.のことならクリスにお任せ
──「I LOVE YOU」はクリス・ハートさん自身がオケを用意されたそうですね。
クリスのライブには何度も出演させてもらっていて、いつもステージの近くでこの曲を聴いて素敵な曲だなと思っていたんです。カラオケでもすごく歌われている曲なので、今回は私のほうから歌わせてほしいとLINEして、クリスにも参加してほしいと頼みました。そしたら「じゃあ僕がアレンジする!」とすごく気合いを入れて取り組んでくれて。実は前からクリスとは一緒に曲を作りたいという話はしていて、クリスがオーケストラを使った曲を作りたいと言っていたので、今回のカバーはオーケストラアレンジになりました。
──歌ってみてどうでしたか?
クリスは私のことをよく知ってくれているので、すごく歌いやすい音源になっていましたね。私の歌が生きる音使い、間の取り方をすべて把握してくれていると感じました。この曲は失恋を引きずっている男性の曲なんですけど、女性はそこまで引きずったりせず、切り替えられると思うので、歌い方はクリスをリスペクトしつつも気持ち的には最後には未来を向いている女性を意識して歌いました。
──そうなんですね。切り替えられるというのは周囲の女性を見ていてそう感じるんですか?
私がそうなんです(笑)。今は悲しいけど、未来は明るいって想像して歌いました。
──クリスさんはMay J.さんのカバーをどう評価されていましたか?
「メイちゃんいいね!」くらいのナチュラルな感じで、「もうちょっとリアクションしてよー」と思うくらいでした(笑)。クリスとはオリジナル曲でまた一緒にやりたいなと思っています。
──中島美嘉さんの「雪の華」には思い入れはありましたか?
もともと大好きな曲で、この曲も私が歌手としてデビューしたいと思ったきっかけの曲だったんです。いつも父がピアノでこの曲を弾いていて、それに合わせて私も歌っていて。
──素敵なエピソードですね。その音源も聴いてみたいです。アルバムではどういったカバーになったと思いますか?
ピアノとストリングスのみのアレンジで、音数が少なく、ごまかしがきかない緊張感のある中で同時録音したんです。でも緊張する分集中もできるし、みんなでバシッと決まったときの盛り上がりもすごいんですよね。3回録った中で2回目が一番よかったんですけど、「うわー! コレだね!」「今のよかったねー!」という感じになって。そのときの空気も入ってくれていたらいいなと思います。
──歌い方で気を付けた点などはありますか?
自分なりにどう歌えばいいか考えて、語尾を伸ばしたり、声を響かせるように歌いました。
──今井美樹さんの「PRIDE」のカバーはボサノバになっていて、これも原曲とかなり印象が違いますね。
そうですね。ボサノバと言うと私の中では語りかけるように歌うイメージなんですけど、私が語りかけるように歌うと、しっかり歌詞が入ってこなかったんです。リズムも守りつつ、声を張ってハッキリと通るように歌って、原曲の芯のある女性の感じを出せるように意識しました。
悪魔との「愛が生まれた日」
──聴いたあとに知ってビックリしたんですけど、「愛が生まれた日」はデーモン閣下とのデュエットでカバーされたんですね。
この曲、実は男性のパートが難しいんですよ。低いところから一気に上がるところがあって、声量があって音域の広い方じゃないと歌えないんです。それで誰がいいかと悩んでいたときに、NHKの「うたコン」という番組でデーモンさんと共演する機会があって。過去に彼のアルバムで1曲デュエットさせてもらったこともあったし(2012年発売「MYTHOLOGY」収録の「REBIRTH-DAY SONG」)、デーモンさんなら歌えるんじゃないかと思ってオファーさせてもらいました。いつかライブで一緒に歌いたいですね!
──レコーディングはどうでしたか?
歌に対してすごく誠実な方でした。純粋に自分と向き合って歌っている姿に感銘を受けました。
──デーモン閣下の歌はどういう特徴があると感じましたか?
“デーモンさん色”がものすごく強い。でも音程は正確で。自分の色の強さと正確さを両立できる人はなかなかいないと思います。
──EXILEの「Lovers Again」はMay J.さんが得意とされるR&Bの楽曲です。
「Lovers Again」はリリース当時から聴いていましたね。当時のR&B楽曲の代表のような1曲だったので、あえて今のR&Bに合わせたアレンジにしてみようと思いました。
──昔と今のR&Bではどういう違いがあるんでしょうか?
当時は打ち込みが多かったと思うんですが、今は生音がかなり入っていて、ピアノだけだったり、シンプルな構成の曲が多いと思います。今回のカバーもピアノとリズムだけにして、レコーディングは私とピアニストの方で同時録音しました。ピアノのリフはテンポがないような感じで一緒に歌うのが難しかったですね。ピアノの音を聴きつつ、しっかりリズムを守って歌いました。
カバーを通して、好きなことや得意なことがハッキリ見えてきた
──CD+DVD盤のDISC2には、ツアー「May J. Tour 2018 -Harmony-」の最終公演のライブ音源も収録されています。こちらはどんなライブでしたか?
ストリングスが入った編成でのツアーは初めてだったのでとっても楽しかったです。私の声と弦楽器のハーモニーが聴きどころですね。ライブではアレンジもかなり変えていますし、そのときにしかない感情を込めたり、楽曲のストーリーをCDとは変えて歌っていたりするので、そういう違いを楽しんでもらいたいなと思います。今年も全国ツアーがあるので、ライブにもぜひ足を運んでほしいです。
──今回のアルバムのようにいろんな楽曲をカバーすることで、May J.さんの歌もどんどん幅が広がって進化しているのかなと思うんですが、いかがですか?
いろいろな楽曲を歌わせてもらうことで自分の引き出しになっていますね。本当に勉強になります。カバーを通して、好きなことや得意なことがハッキリ見えてきた部分もあって、自分の得意な部分をどんどん出していきたいなと思います。具体的には今回の「I LOVE YOU」のように長めの音符で自分の声の響きを生かせるメロディってやっぱり好きだなと思いました。
──なるほど。では、新しい時代に向けての活動のイメージはありますか?
「平成」で得たものはずっと自分の中に残ると思うんですけど、そこからどんどん新しい要素を……もちろん自分のオリジナル楽曲にも取り入れつつ、進んでいきたいですね。