松尾太陽|ソロデビュー作に刻まれた 1人の“うたうたい”が歌う理由

勢いを止めずに歌って、自分もどんどん上がっていけた

──そして、4曲目はVaundyさんが提供したリードトラックの「Sorrow」です。

まず「Sorrow」というタイトルだけを見て「しっとり系の曲かな?」と思ったんですけど、いざ聴いてみたらすごく清涼感のある曲で。その中にもにじみ出る哀愁みたいなものがあって、心地いい歌だなと思いました。同世代のVaundyさんが作ってくれているから、同じ20代の人に刺さる歌詞でもあるなと思ったし……Vaundyさん、尊敬です。

──Vaundyさんとは、この曲についてのやりとりはあったんでしょうか?

ボーカルのレコーディング前にオケ録りをしたんですが、Vaundyさんとはその場で初対面しました。そのときに「Sorrow」について、いろいろと教えていただいて。「ここの部分はこういう歌い方をしてほしい」みたいな細かなリクエストもありましたね。Vaundyさんと話したことを自分の中でしっかりと噛み砕いてレコーディングに臨めたので、狙った落としどころにしっかり落とせたなと思っています。

──具体的にはどんなふうに歌入れをしたんでしょう?

この曲は、頭から最後までツルッと一気に歌いました。流れが途切れないように、勢いのまま。サビでパーッと景色が開ける感じがするから、流れを止めてしまうとよくないんじゃないかなと思って。あと何より、先ほども少しお話したように、曲を書いてくださったアーティストさんへのリスペクトと僕らしさを半々で混ぜて歌いたいという思いがあったから、そこはすごく意識しました。だからVaundyさんの曲も拝聴しましたし。

──そうだったんですね。通しで歌ったというのは納得したというか。終盤にかけての盛り上がりがすごいし、ラストのパーンと突き抜けるロングトーンもすごく勢いがありますもんね。

そうですね。勢いを止めずに歌って、自分もどんどん上がっていけたんじゃないかなと思います。

──それにしても、太陽さんはキーの高い歌を頻繁に与えられますよね。

そうなんです。Vaundyさん本人も言ってました。「この曲、高いですよね。(キーを)下げようかとも思ったんですけど」って(笑)。

まさに自分のこと

──そして、5曲目の「libra」はShe Her Her Hersが提供した楽曲です。

松尾太陽

僕はてんびん座(libra)なので、「libra」は「まさに自分のことを書いてくださっているな」という曲なんですけど……この曲のデモが届いたときですよ。シーハーズさん、歌詞にプラスして、この曲に対しての思いや僕に対する思いを書いて伝えてくださったんです。歌詞と同じくらいの分量で!

──すごい。そうだったんですね。

「記念すべき1stミニアルバムだから、作品にふさわしい曲にしたいと思っている」ということや、「てんびん座は太陽くんのことで、『乙女座のスピカ』は応援してくださる方のことで」とか。「いろんな人が太陽くんを応援してくれているし、逆に太陽くんは“乙女座”にたくさんの気持ちを届けようとしていて……」とか。そういったことをばーっとたくさん。めちゃくちゃうれしかったですね。

──私も「libra」を聴いて、「てんびん座……太陽さんのことだ」と思い、星座のことを調べてみたんです。そうしたら、太陽さんの生まれた9月23日って、てんびん座の最初の日なんですね。

そうなんです。だから僕、占いによっては乙女座にもなったりするんですよ。

──そういった意味でも、隣り合う乙女座とてんびん座のことを歌うこの曲は、すごくロマンチックに太陽さんのことを表現されているなと思いました。

そうですね。イントロを聴いただけで「夜の歌だな」ともわかりますしね。

松尾太陽

──落ち着いていて、どこか浮遊感のあるメロディですが、歌うときもそういった雰囲気で?

落ち着いた感じは意識しましたし、あとシーハーズさんの作品は、聴いたときに……いい意味ですごく不思議な気持ちになる曲が多いなと思ったんです。世界観に没頭できる感じ。なので、僕もそういうふうに表現してみたいと思ったんですよね。

──そうだったんですね。先ほどからお話を聞いていると、太陽さん、レコーディングに臨むうえで楽曲提供者の皆さんの曲を相当聴き込んだんじゃないですか?

そうですね。そこはしっかり。自分の中に入れてから歌いたいと思っていたので。

誰よりも親近感のあるシンガーに

──6曲目の「Hello」は現状聴けていないのですが、こちらはどんな曲でしょう?

松尾太陽

僕のイメージで言うと邦楽と洋楽をミックスさせたような聴き心地で、どんな環境にも溶け込みやすい曲なんじゃないかなと思っています。ライブでやるときには、ラストナンバーやアンコールにも向いていそう。個人的には、1人でお茶を飲んだりしている時間に聴きたい感じです。しっとりしていて、ロマンあふれる曲なんです。

──ありがとうございます。では最後に。「掌」の中の「誰の悩みだって寄り添える 僕は歌い続ける」という歌詞を見て、ここには太陽さんの意志が込められているのかなと感じたんです。

はい。

──自分が“うたうたい”として歌うことに、太陽さん自身が抱いている思いを教えてもらえたら。

この世の中にはいろんなアーティストさんがいらっしゃるけれど、その中で僕は誰よりも親近感のあるシンガーになりたいんです。物理的な距離というより、楽曲を通して近くに感じられる、そう思ってもらえるシンガーでありたいなと。おこがましいかもしれないけど、弱い人の味方でありたいというか……そういった人たちに寄り添える存在でありたいと思うんです。大きな目標というか、僕が歌う理由はそこにあります。等身大の自分をぶつけて歌いたいと思っているから、聴いてくれる人たちも、何も気負うことなく等身大の自分で僕の歌を聴いてほしいなと思っています。