摩天楼オペラ|ここが新たな出発点、満を持して再びメジャーシーンへ

JaYのことだけを考えて書きました(苑)

──ここからアルバムの風景がまた変わっていきます。8曲目「actor」には、シティポップのような手触りがあって。1980年代後半とか90年代のバンドだったら、こういう曲をシングルにしたのかもしれません。

 摩天楼オペラのイメージとは少し違いますね。ただ最初からこういう曲を作りたかったというわけじゃなく、少し“裏”を感じられるメロディがほしくて作ってみたサビパートをみんなにわたしたら、まずJaYが途中でテンポチェンジをやり出して、さらに転調が加わって……。そうやってだんだんと複雑になっていったんです。

彩雨 アレンジにおいて膨らませ方の選択肢が多いと、逆にやりにくくなるんですよね(笑)。最終的にはちょっとミュージカル風になりました。

──確かに。そしてジャジーなピアノの余韻を残しながらこの曲が終わり、インストゥルメンタル曲の「Cee」につながっていく。

JaY(G)

JaY 「Invisible Chaos」のシングルのカップリングに「孤独を知るには一秒も長すぎる」という僕の曲があるんですけど、言ってみれば、それに対する歌詞のないアンサーソングというか。この曲ではたっぷり弾いてますね。

──確かにこの曲は5分半以上あります。でも、さほど長いとは感じられませんでした。

JaY ありがとうございます。それは一番の誉め言葉じゃないかと思いますね。

──褒めて伸ばそうかと思いまして(笑)。曲の終盤にクワイア的なコーラスが出てくるのもこのバンドらしくて象徴的です。そして次に聴こえてくるのがアコースティックな味わいの「見知らぬ背中」。これは苑さんのソロプロジェクト「運命交差点」と印象が重なる曲でもあるように思ったんですが。

 ええ。運命交差点をやったからこそ、こういう曲をこんなふうに歌えるようになった気がします。単純に技術的な意味で。音量を求めるのではなく、やさしく歌うというか、息づかいまで聴かせるような感じというか。

──歌詞は2人の登場人物の運命が交差する物語なんでしょうか?

 それは考えすぎです(笑)。全然そんなストーリーは意識せず、むしろ曲を持ってきたJaYのことだけを考えて書きました。

JaY 実はそういう関係なんですよ、僕ら(笑)。

──特ダネをありがとうございます。

 ははは!(笑) 飲みの席で昔の恋愛話をすることってありますよね。頭の中にちょっと残っていたそんなイメージを膨らませて書いたものですね。

──続いては「SNOW」ですが、サックスのパートがとても効果的だと感じました。

JaY 僕が「ここはサックスを入れたらいい」と提案しました。聴いた瞬間から、そうしたほうがカッコいいはずという確信があったんです。

 そうやって5人以外の要素が入ることも、曲がよりカッコよくなるんであればアリです。

奇跡を起こせる5人だと信じている

──アルバムの最後を飾るのが「The WORLD」。試聴時の印象を書き留めた僕のメモには、ひと言「これぞ!」とあります。

摩天楼オペラ(撮影:土屋良太(artoy))

 はい(笑)。摩天楼オペラらしさが一番に表現された曲です。言ってみればメロスピ方面の曲ですけど、当初はこのアルバムだと内容的に浮いてしまうんじゃないかと思っていました。だけど完成した音源ではちゃんと今の5人の色が出たものになって、しっかりアルバムの雰囲気にハマりました。自分でもバンド力の高さを感じましたね。

──それぞれの個性を発揮しつつ、摩天楼オペラらしさを追求できたアルバムになったと。

 もちろん実際にこのアルバムを作る前から「この5人で(アルバムを)作ったらどうなるんだろう?」という期待度は高かったんですけど、いざ完成したら軽く期待を超えました。次のアルバムの構想がなんとなく浮かぶくらいのイマジネーションが生まれた。それがうれしいですね。もっと前に進みたいし、まだまだ作りたいものが出てくる状態なので。

彩雨 5人でスタジオに入って起きた化学変化が、すごくいい形でアルバムに反映されたと思います。曲の短さ、ギュッと詰め込むコンパクトさ、シンプルさにこの5人ならではのアンサンブルが感じられる気がするんですけど、そうやって今のバンド力について1つひとつ言葉で説明するのもちょっと違うような気がしていて。むしろアルバム全体を通じて、そういう力強さとかこれまでとの明らかな違いを感じてもらえたらうれしいです。

 JaYくんと響くんも加入前からちゃんと自分のサウンドを持っていたので、3人の音に2人の音が加わってどうなるかのイメージはできてたんですけど、実際にそれが合体してアルバムが完成したときには、改めて「ああ、これがバンドの音だ!」と感じました。そういう化学変化がバンドのいいところですよね。違う音同士が重なったときにそういうことが起こるというのが。それが単なる足し算で終わっていない。

──JaYさんと響さんからすれば「自分が加わったことによって摩天楼オペラはこう変わった」という実感も少なからずあるはずだと思うんです。いかがですか?

JaY 僕、それはむしろこれからだと思うんです。今はまだ、この5人になって初めてのアルバムを作ったばかりで、その変化を自覚できるようになるにはまだ早い。変化というより、進化ですよね。だから僕自身はまだ実感できていない。むしろ次のツアーでそこに気付けるんじゃないかなと思います。

 僕は今回、とにかく初めてのことだらけだったので、これまでとの比較というのが難しくはありますね。それこそ僕には「果たして自分がここで通用するのか?」という不安もあったわけですけど、ツアーなどを経て、音楽以外の部分での関係もメンバーと築けたし、そういう意味ではちゃんとなじんで作ることができてよかったなと。結果的に想像していた以上に完成度の高いものになったという感覚があります。

──こうしてお話を聞いていると、バンドがとてもいい状態にあるのがよくわかります。しかもこれから何かが始まっていくような雰囲気も感じます。

 ええ。新しい何かを起こせる状態にあると思うんです、今の摩天楼オペラは。それが何なのかはわからないですけど。バンドを組んだばかりの頃のような勢いというのも実際感じるし、今こそ始まりのときです、何かに向かっての。これが“バンドの奇跡”みたいなものなんだと思う。奇跡を起こせる5人だと信じてますし、だからこそ自分でも、この先にどんな作品が生まれるのか、楽しみでたまらないんです。

摩天楼オペラ

ツアー情報

Human Dignity TOUR
  • 2019年3月2日(土)愛媛県 松山サロンキティ
  • 2019年3月3日(日)高知県 X-pt.
  • 2019年3月5日(火)佐賀県 SAGA GEILS
  • 2019年3月7日(木)熊本県 熊本B.9 V2
  • 2019年3月9日(土)宮崎県 SR BOX
  • 2019年3月10日(日)鹿児島県 SR HALL
  • 2019年3月12日(火)山口県 LIVE rise SHUNAN
  • 2019年3月14日(木)岡山県 IMAGE
  • 2019年3月16日(土)奈良県 奈良NEVER LAND
  • 2019年3月17日(日)和歌山県 和歌山CLUB GATE
  • 2019年3月23日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2019年3月24日(日)富山県 Soul Power
  • 2019年4月6日(土)静岡県 Sunash
  • 2019年4月7日(日)岐阜県 yanagase ants
  • 2019年4月12日(金)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2019年4月14日(日)群馬県 高崎clubFLEEZ
  • 2019年4月20日(土)北海道 小樽GOLDSTONE
  • 2019年4月21日(日)北海道 CASINO DRIVE
  • 2019年4月23日(火)北海道 函館club COCOA
  • 2019年4月26日(金)青森県 青森Quarter
  • 2019年4月27日(土)秋田県 Club SWINDLE
  • 2019年4月29日(月・祝)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2019年5月6日(月・振休)東京都 LIQUIDROOM
摩天楼オペラ presents 12th ANNIVERSARY LIVE
  • 2019年5月5日(日・祝)東京都 LIQUIDROOM
摩天楼オペラ「Human Dignity」
2019年2月27日発売 / KING RECORDS
摩天楼オペラ「Human Dignity」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
4104円 / KICS-93780

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摩天楼オペラ「Human Dignity」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / KICS-3780

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CD収録曲
  1. Human Dignity
  2. Dead by Daybreak
  3. Invisible Chaos
  4. MONSTER
  5. RAINBOW
  6. Sacrifice
  7. 箱の底のMUSIC
  8. actor
  9. Cee
  10. 見知らぬ背中
  11. SNOW
  12. The WORLD
初回限定盤DVD収録内容
  • Human Dignity(ミュージックビデオ)
  • Invisible Chaos(ミュージックビデオ)
摩天楼オペラ(マテンロウオペラ)
2007年に結成されたロックバンド。メンバーは苑(Vo)、JaY(G)、燿(B)、彩雨(Key)、響(Dr)の5人。2010年12月にミニアルバム「Abyss」でメジャーデビューを果たした。叙情的な歌詞とシンフォニックメタルからの影響が強いサウンドが特徴で、国内のみならず海外でもCDリリースやライブ活動を展開。2016年10月に行われたヴィジュアル系バンドの祭典「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powered by Rakuten」に出演するなど、ヴィジュアル系バンドとしての地位を築きつつ、自身主催のヘヴィメタルイベント「鋼鉄祭」でメタルファンからも支持を得た。2018年5月にJaY、2019年1月に響がそれぞれ加入。メジャーレーベルを離れた期間を経て、2月に新体制第1弾となるフルアルバム「Human Dignity」をKING RECORDSからリリースし、メジャーシーンに復帰した。