神奈川・洗足学園音楽大学の現役学生によるアイドルグループ・MARUKADO(マルカド)が、10月15日に東京・日本武道館でフリーライブ「100年のイントロ」を開催する。
私立恵比寿中学のライブ演出などを手がける近藤キネオのプロデュースのもと、2022年に学園内のオーディションにより結成されたMARUKADO。ダンスコース、声優アニメソングコース、音楽・音響デザインコース、ミュージカルコースと専攻するコースごとに異なる特性を持つメンバーが、それぞれの才能を存分に発揮している。洗足学園が今年創立100周年を迎えることから「2024年に日本武道館でワンマンライブ!」と大きな目標を掲げてきた彼女たちだが、学園創立100周年式典の一環として武道館でフリーライブを行うことに。夢が現実となった今、彼女たちの心中に去来する思いは? 音楽ナタリーでは武道館ライブを目前に控えるMARUKADOにインタビュー。本年度での卒業が決定している4年生メンバーとプロデューサー近藤に話を聞いた。
取材・文 / 土屋惠介撮影 / 臼杵成晃
現役音大生10人組、MARUKADOはどんなグループ?
──まずは、MARUKADOとはどんなグループか聞かせてください。
MIHANE(みはね) MARUKADOは全員が現役音大生の10人組アイドルグループです。メンバーは、現役の4年間という限られた時間の中で活動するという決まりがあるんです。洗足学園音楽大学のさまざまなコースから集まったメンバーなので、いろんな個性の子がいますし、その10人が集まったときにはすごいパワーが出るんです。メンバーごとのいろんな組み合わせも見れたりしますし、ホントに個性豊かなグループです。
YALING(ヤーリン) グループ名のMARUKADOには、“丸”と“角”というまったく違う個性や特徴の組み合わせで新しく変化し続ける、という意味が込められています。
REIA(れいあ) グループは2022年に結成されました。学校内でオーディションがあって、まずはそこで選ばれた8人で活動を始めて。昨年10月の追加オーディションでMIRAとHANAが加入して、今は10人で活動しています。
MIRA(みら) 大学の施設で定期公演を行っているほか、地元の川崎に密着した活動もしています。
──プロデューサーの近藤さんは、そもそもどのようなきっかけでMARUKADOを手がけることになったのでしょうか。
近藤 2年前の2022年に洗足学園の関係者の方とお会いして、今年2024年が洗足学園の創立100周年、川崎市制100周年というおめでたい年になるので、何か大きなプロジェクトを発足させたいというお話をいただいたんです。それで洗足学園を見学させていただいたんですけど、施設も人材もそろっていますし、教師陣も豪華で、ホントに素晴らしい素材がめちゃくちゃ詰まった学校だなと思ったんです。今は専攻が19コースあって、それぞれのコースで独自の公演はやっていたものの、学園全体の1つのプロジェクトというのはあまりないようだったので、だったら、全コースからさまざまな特技を持ったメンバーを集めてアイドルグループを作り、そのグループが2024年に日本武道館を目指すのは面白いんじゃないかな、というのが始まりでした。
コロナ禍の青春を“再開”させるために
──では、インタビューに集まっていただいた4年生組の皆さんに、それぞれMARUKADOに入った理由などを聞いていきたいです。まずはリーダーのMIHANEさん。
MIHANE 私は1歳からずっとダンスをやってきて、この大学にもダンスの勉強をするために入学しました。アイドルはキラキラしていて、歌もダンスもトークもなんでもできるというイメージがあったので、ダンスひと筋の私からは遠い世界だと思っていたんですけど、縁があってオーディションを受けることになったんです。MARUKADOの「自分たちで新しいアイドル像を作っていく」というところに魅力を感じて、私も挑戦してみようと思いました。
──アイドルはダンスだけじゃなく歌も歌いますよね。
MIHANE 習ったことはなかったんですけど、もともと歌うことは好きで。MARUKADOに入って、歌もたくさん教えていただけて、人前で歌う経験もできてすごく楽しいです。ダンスにもいい影響がありますし、歌ももっとがんばりたいと思ってます。
──次は、REIAさん。
REIA 私は声優アニメソングコースに所属しているんですけど、もともと「プリキュア」とか女の子がキラキラするアニメがすごく好きで、そこから声優という職業に興味を持ったんです。この学校に入ったのも、声優になりたいという気持ちからでした。でも、周りのみんなとの実力差を感じて、淡々と日々を過ごしていて……。特技もない自分だけど、がむしゃらにがんばれるものを探したいという思いがある中、このオーディションの話をいただきました。MARUKADOに入ってからは毎日忙しいし大変ではあるんですけど、すごく充実していて。人生の中で今が一番楽しいです。
──もともとアイドル自体には興味はあったんですか?
REIA はい、すごく好きでした。「ラブライブ!」が大好きでしたし、東京ドームなどの大きな会場でライブをされている声優アイドルさんに憧れがあったんです。もちろんAKB48さん、乃木坂46さんとかも好きでしたし、IZ*ONEさん、IVEさん、SEVENTEENさんとかK-POPも大好きで。あと、松田聖子さんとか荻野目洋子さんとか昔のアイドルさんの曲もよく聴いています。
──YALINGさんは台湾出身なんですよね。
YALING 大学に入るときに日本に来ました。ホントは美術大学に入りたかったんですけど、友達に「YALINGは日本語がうまいから声優になってみない?」ってオススメされて、この大学を受けたんです。大学には入ったけど、もっと刺激が欲しいなと思ってるときに、学食でこのオーディションのチラシを見て挑戦しようと思いました。
──日本のアイドルは知ってましたか?
YALING そんなに詳しくなかったです。声優さんも全然知らなかったですし。だからホントにアイドルに挑戦!って感じでした。でも、私も今が人生で一番楽しいです。アイドルになれたことで、何より自分が人として成長できたと思います。1つのことを達成したいなら中途半端な気持ちじゃダメだ、一生懸命にならなきゃいけないってことをMARUKADOで学びました。
──最後は、2期生のMIRAさん。
MIRA 私は2歳くらいからピアノ、4歳からバイオリンをやっていて。子供の頃からクラシック畑にいたけど、ずっとアイドルが好きだったんです。小学校低学年のときにKARAさんと少女時代さんが大好きになって、小学校高学年のときに乃木坂46の西野七瀬さんにひと目惚れしました。鏡の前で真似して歌ったり踊ったりするくらい好きだったんですけど、私は引っ込み思案で人前に出るのが苦手だったから、家族や友達に「アイドルをやってみたい」とは言えなくて。その気持ちを隠しながら中学高校とクラシックを学んで、その流れでこの大学に入りました。だけど、殻にこもっている自分が嫌で、20歳のときに韓国に留学したんです。その間に大学ではMARUKADOが結成されていて、ミュージックビデオを観たんですよ。コロナ禍になって日本に帰ったとき、ちょうど2期生オーディションの情報を目にして、思い切って応募しました。MARUKADOがのおかげですごく変われた気がします。
──苦手だった「人前に立つこと」はクリアできたんですか?
MIRA できました。MARUKADOで活動させていただいている中で、人前に出るのが好きになってきたんです。私が話すことでみんなが笑ってくれたり笑顔になってくれたりするのがうれしくて。好きな作曲も生かせる可能性があるグループですし、人生的にもいい方向に進めた感じがします。
近藤 どんなメンバーを集めようか、という部分での僕からの補足なんですが……MARUKADOには「わたしたちと『青春』を再開しよう!」というコンセプトを設定しました。もともと「2024年に武道館を目指す」という目標があったから、オーディションでは結果的に2年後に4年生になる2年生までをメンバーとして選びました。この世代の子たちは、修学旅行とか高校の卒業式とか、大学の入学式とか、一番青春を謳歌できたはずの期間がコロナ禍と重なって、人と密接に絡むことを否定され続けながら生活をしなくちゃならなかった。そんな子たちに、MARUKADOを通じて失われた青春を取り戻してもらいたいというのが狙いとしてありました。
──なるほど。
近藤 あと、今みんなが「自分がアイドルになるなんて思わなかった、できるなんて思わなかった」と言ってたことにも通じるんですが、やっぱり大学生までにアイドルをやらなかった人は、普通そのあともアイドルをやる可能性は低いじゃないですか。だからこそ僕はこのグループを作るとき、あえてアイドルとかけ離れた人生を歩んでいた子たちを集めようと思った。今まで我慢をして自分の思いに蓋をしてきた子や1歩を踏み出せなかった子たちが、大学生になって自分の人生を変えていく。その時間をファンの人と共有して、新しい自分になっていく姿を見てもらおう、という思いがあったんです。
専攻コースもバラバラなMARUKADOならではの個性
──MARUKADOの楽曲やパフォーマンスの特徴については、皆さんどのように感じていますか?
REIA 楽曲は洗足の卒業生の方、洗足にゆかりのある先生方が作ってくださっていて。学校内でコンペをした学生の作品もあります。あと、メンバーが作った楽曲もあるんです。ファンの方からは「みんないい曲だよね」と言っていただけています。
MIHANE ポップな曲、清楚な曲、子供にも楽しんでもらえる曲……どれもジャンルが全然違うんです。その分、パフォーマンスするうえで難易度は高いんですよ。だけどそれ以上に、いろんな音楽を届けられる楽しさが上回りますし、聴いてくださる皆さんの満足度をもっと上げたいという気持ちでパフォーマンスしています。
YALING ライブのとき、私はそれぞれの楽曲の雰囲気に合わせることを考えてパフォーマンスしています。歌うときは「曲の世界観や素晴らしさを見ている方に届けたい!」って気持ちで、お客さんと視線を合わせるように。あと「MARUKADOは素晴らしいんだよ!」という気持ちも込めているので、歌もダンスも力が入っちゃいます(笑)。
MIHANE 曲の雰囲気や世界観をメンバーで共有するために、よくメンバーと話し合いをしますね。そのときにYALINGが「二子玉川の夕焼けを友達と歩いてるときのイメージ」とか独特な表現で伝えてくれるんです(笑)。
REIA そう言われるとイメージしやすいし、歌うたびに「あ、二子玉川」って思い出すんですよ(笑)。
MIHANE そうやっていろんなアイデアが、メンバー10人からいっぱい出てきます。
MIRA みんな専攻コースが違うので、「これはあのメンバーに意見を聞いてみよう」と得意分野で分けることができるんです。しかもみんなが、得意な人に追いつけ追い越せの気持ちでがんばって、そのうえでひとつにまとまっていこうと思えている。それがMARUKADOの強みかなと思います。
──ライブは、しっかりしたパフォーマンスを見せながら熱量が伝わるステージという印象があります。
MIRA 細かい表現に気を使いつつ、でもパワーを前に前に出すように、というのをライブでは一番意識してます。
REIA ライブでは自分たちが楽しむ気持ちが一番大事だなと思っています。あと、対バンイベントに出てMARUKADOに興味がない方がいると、逆に燃えるメンバーが多いんです。絶対振り向かせるぞ!って気持ちがあるので、それをもっと全面的に出していけたら、さらにグループとして強くなるんじゃないかなと思っています。