m-floが語る、充電でも休止でもない“リミナル期間”という選択──櫻井翔、Diggy-MO'、RIP SLYMEらと刻んだ25周年の結晶 (2/3)

「SUPERLIMINAL」というタイトルに決まるまで

──☆Takuさんは、懐かしさと新しさのバランスをどう考えていましたか?

☆Taku 新しさをどう出そうかと一番悩んだのは「KYO」のときですね。

──「KYO」の発売時にインタビューした際、☆Takuさんは新しいm-floを出し切れていないと感じ、模索していたと話していましたよね。それがアルバム完成まで2年かかった理由でもあると。

☆Taku 今回はそういう悩みは全然なくて、バランスを考えたのはインタールードくらい。それ以外は自然と手癖が出ちゃうけど、それでいいと考えていたんです。ありがたいことに外部からプロデュースの依頼をたくさんいただけているのも大きくて。現場でのインプットが多いし、そこで感化されたものを、そのまま入れていけばいいと思ってたんですよね。

──今回のインタールードでは、特にイントロの作り方が懐かしかったです。

☆Taku 海外では、ストーリーライティングでセルフオマージュをしたり、同じセリフを繰り返し使うことを“韻を踏む”と言ったりするんです。僕は物語を書くのが好きだし、好きな物語は韻を踏んでいるものが多いんですね。今回のインタールードは、1stアルバムの「Planet Shining」をオマージュしたBGMやナレーションにしていて、“韻を踏んでる”んですよ。ただ、どれくらい踏むかというバランスは、VERBALと相談しました。

──本作はインタールードで4つのセクションに区分されています。それぞれのセクションにテーマなどは隠されているんですか?

☆Taku 聴き手はそういうふうに意識すると思うし、それを考えながら聴いてもらえるのはありがたいんですけど、曲順はVERBALと話しながら直感で並べていきました。この曲のあとはこの曲が気持ちいいよね、とか。

VERBAL 曲の雰囲気を見ながらね。テンポが近い場合もあれば、コード感が似てるからというパターンもあるし。

☆Taku 潜在意識ではいろいろと考えているんだと思うけど、そこまで意図的に組み立てたわけじゃなくて。今回のインタールードの置き方や曲順は、ジャズミュージシャンのインプロビゼーションに近いなって思う。でも、並べてみたら結果的にぴったりだったな、という印象ですね。

☆Taku Takahashi

☆Taku Takahashi

──各インタールードの命名はVERBALさんですか?

☆Taku 僕が書いて、VERBALが赤ペンを入れる感じです。m-floの曲タイトルはVERBALに放り投げることが多かったんだけど、今回は時間がなかったから2人で考えようと。面白かったのは、このタイトルどう?って、2人同時に同じ案が出たこと(笑)。

──それは、どれですか?

☆Taku 「>>A E I O U」ですね。これは2人とも同じタイトルが一発で浮かんでた。

──アルバムタイトルの「SUPERLIMINAL」も2人で考えたんですか?

VERBAL もともと☆Takuが「サブリミナル」とか「ダブリミナル」とか言っていて。でも、それだとちょっと堅くなるっていうのも、☆Taku自身わかってるんですよ。「それだとm-floっぽくなくなるね」「そっか、そっか」とか言いながら、最終的に僕が「SUPERLIMINAL」というアイデアを出しました。お互いの気持ちいいゾーンがわかっているから、そこを刺激し合ってる感じなんですよね。

☆Taku VERBALは絶対にひとひねり入れたがるんですよ。ひねりを入れるのがうまいから。

──MCネームがVERBALですからね(笑)。

LISA 言葉の人ですから(笑)。

トップシークレットマンしのだとDiggy-MO'を迎えた理由は

──ここからは話題曲の制作背景について教えてください。「GateWay(m-flo loves Diggy-MO' & しのだりょうすけ)」に、トップシークレットマンのボーカル、しのだりょうすけさんと、元・SOUL'd OUTのラッパー、Diggy-MO'さんを迎えた理由は?

☆Taku まず、しのちゃんとm-floが一緒にやるっていうのがありえないことでしょ? そこにもう1つ、あり得ないことが重なったら面白いなと思って。Diggyは今、アニメのサントラとか作家作業で忙しいみたいだから、ダメ元で聞いてみたんです。そしたら(Diggy-MO'のモノマネをしながら)「やるよ」って(笑)。

LISA あはは。そんなふうに言った?(笑)

VERBAL それ、どっちかっていうとジャイアント馬場みたいだよ(笑)。

──☆Takuさんの目から見た、しのださんの魅力は?

☆Taku まずはトップシークレットマンのサウンド。パンクやオルタナティブに、ロックのハードコアとダンスミュージックのハードコアが加わって、さらにハイパーポップの要素も入っていて、まさに縦横無尽という言葉がぴったり。しかも、それらを1つの楽曲にする力がある。あと、歌詞が初期衝動の塊で、すごく異質でありながら、同時にすごく今な感じがあるんですよね。

──「GateWay」は、トップシークレットマンの音楽性に寄せて制作したんですか?

☆Taku 僕自身がトプシのライブを観に行くくらい好きなんで、トプシ感は求めました。ロックテイストなものはm-floも何度かやっているし、1曲の中で展開がどんどん変わっていく作り方も、もともとm-floが得意とすることだし。

──制作はどのように?

☆Taku 最初のデモは、しのちゃんにギターを弾いてもらって作っていったんです。彼のパソコンから生ドラムの音を入れてもらったり、ロシアンハードコアとか四つ打ちの要素を入れたりして、トプシに寄せた形である程度まで作って。そこから、しのちゃんが「m-floっぽいのを期待してるんで」ということで、僕がバトンを受けて味付けしていきました。

──後半、Diggyさんが出てくるところでビートがガラッと変わります。

☆Taku そこはDiggyのラップが乗ることを想定して作ったんです。Diggyの別曲からAIで生成したアカペラを乗せてハマるかどうかを確認していたくらい。

──Diggy-MO'のラップは、笑っちゃうくらいDiggy節が炸裂してますよね(笑)。

LISA 確かに(笑)。

──意味より衝動が先に来るラップというのかな。言葉の断片を高速で投げつけてグルーヴを作っていく感じ。

☆Taku それがDiggyのよさだから。

──あと、「GateWay」には☆Takuさんの潜在意識にある破壊衝動が現れているようにも思いました。

☆Taku 今、それがすごく強いんですよ。

──☆Takuさんは、本作収録の「You Got This」のような流麗な楽曲を手がける一方で、たまにそういう一面も顔を出しますよね。

LISA そうですよね。

☆Taku 今の社会がのびのびしづらくなっていることを、とても窮屈に感じていて。その感覚をついXでポロッと言ってしまうこともあるけど、やっぱりそれは曲で出していくことが一番大事だなと思っているんです。そういう意味では、初期衝動の強いしのちゃんと今回コラボできたことは、すごくよかったんじゃないかと思ってます。

櫻井翔が胸アツなリリックを書いてくれた

──櫻井翔さんがラップで参加した「come again *Reloaded」は、以前「ベストアーティスト2024」(日本テレビ系)で共演したときのバージョンとは違う仕上がりになっていますね。

LISA 私は歌を録り直してるんですよ。

VERBAL 僕もラップを録り直してる。

──櫻井さんのラップも増量していますが、彼とのレコーディングで印象的だったことは?

VERBAL スタジオに1人でふらっと現れて、「いいすか、やっちゃっても?」って録ってくれたのが驚きでしたね。準備もバッチリで、「ちょっとここ、もう1回やっていいですか?」と細かい部分にこだわりながらも、作業は決してダラダラしない。その感じが印象的でした。

VERBAL

VERBAL

──櫻井さんのラップパートには、A Tribe Called Questの「Scenario」の冒頭に出てくる有名なラインを引用したフレーズが出てきますし、m-floとの懐かしい出会いのエピソードも描かれています。

VERBAL 「ベストアーティスト2024」に僕らの出演が決まったとき、櫻井くんが総合司会だったからワンチャン飛び入りしてくれるんじゃないか?と思って声をかけたら「やりましょう」と快諾してくれて。だったら自分でリリックを書いてみたら?ってお願いしたら、昔、バワリーキッチンやロータスで話した思い出を盛り込んでくれたんです。すごく胸アツなリリックを書いてくれてうれしかったです。

──「come again *Reloaded」を作るにあたり、☆Takuさんはどんなことをイメージしたんですか?

☆Taku ジャージークラブを世界的に注目される前から作っていたK Bowさんというプロデューサーがいて。僕は彼の作るサウンドが大好きで、インスタでつながったのを機に、「come again」のブートリミックスを密かに2人で作っていたんです。そのトラックをハメたら面白いんじゃないかと思って、K BoWさんにOKをもらって今回使うことにしました。