クレイジービッチについての実話
──MIYACHIさんとのコラボは何がきっかけだったんでしょうか?
VERBAL 最初に「WAKARIMASEN」を聴いたときからMIYACHIくんにはすごくシンパシーを感じていたんですよね。インターナショナルスクールで育って日本語も英語もどっちも中途半端な僕のことを「WAKARIMASEN」という言葉ですべて物語ってくれてる気がして。「WAKARIMASEN」のMVも面白かったので「いつかコラボしたいね」って☆Takuと話を温めてたんですけど、「Sheeza」の形がなんとなくできたときに、もう1人誰か入れたいという話になり、満場一致で「MIYACHIくんがいいね」となりました。
──なるほど。MIYACHIさんは今もアメリカに住んでるんですよね?
MIYACHI 今はニューヨークからフィラデルフィアに引っ越して、ニューヨークと行ったり来たりしてます。
VERBAL なんでフィラデルフィアに引っ越したの?
MIYACHI ニューヨークは家賃が高いから。もともとフィラデルフィアにあるテンプル大学でエンジニアの勉強をして、卒業してからは3年間くらいフィラデルフィアで音楽をがんばってた。「BAD & ブジ (MIGOS REMIX)」もフィラデルフィアで作った。
VERBAL エンジニアの仕事が見つからなかったからラップを始めたの?
MIYACHI 真面目にほかのアーティストのレコーディングをしていて、それも面白かったけど、やっぱり自分のこともずっとアーティストだと思ってたから……。
VERBAL 俺のほうがカッコいいのにと思いながら(笑)。
MIYACHI (笑)。でもエンジニアの勉強をして、ほかのアーティストをいろいろ見る経験がなかったら今みたいなレベルには行けなかったかもしれないから、よかったと思う。
──VERBALさんとはSkypeで最初に顔を合わせたとのことですが、「Sheeza」を最初に聴いたときどんな印象を持ちましたか?
MIYACHI VERBALのラップのエネルギーがすごいし、曲調が途中で変わる構成も面白かったです。どうやればもっとカッコよくできるか考えました。楽しかった。
JP THE WAVY 聴きたい!
VERBAL ちょうどアルバムのマスタリングが終わったところなんだよね。
──せっかくなんで今聴いてみますか。
(「Sheeza feat. MIYACHI」を聴く)
JP THE WAVY ヤバい……2人ともめっちゃラップうまいですね。
VERBAL 後半のMIYACHIくんのフロウヤバくない? 一瞬「これどうなんの?」って思ったら超固めてきてひさしぶりにビビッときました。
MIYACHI ありがとうございます。
VERBAL 僕のヴァースに合わせて「あの子は」で歌い始めてくれたのもうれしかったです。リリックは恋愛的な内容だけど実話なのかな?
MIYACHI はい。最初にSkypeで「どんな曲ですか?」という話になったときにVERBALが“Crazy Bitch”についてだと言ってて。
VERBAL そういう言い方はしていないと思うけど。
一同 (笑)。
MIYACHI でもだいたいそんな感じで……。
VERBAL 破天荒な女性っていう意味だったんですけど(笑)。まあ翻訳するとそういう感じかもしれないけどね。
MIYACHI ちょうど最近“Crazy”の人と別れたから書きやすくてよかった。あんまりこういうことを書く機会もないし。
VERBAL ははは(笑)。
MIYACHI VERBALのフロウも超ヤバいと思う。VERBALのリリックにある「メガネかけてパリミキ」の“パリミキ”ってなんだろうとか日本人の友達と調べた。
一同 (笑)。
VERBAL なんも考えてないような言葉を最後にパンチラインとして出そうと思って(笑)。カニエ・ウエストとかMigosとか海外のアーティストもすごいマジなこと言ってるのに、オチは超軽かったりして。ストーリー性を持たせつつ、最後はサクッと締めるのが好きでよくやるんですよね。最初は☆Takuを笑かそうと思って書いて、MIYACHIくんのラップが入ったら録り直すつもりだったんだけど、☆Takuが「これがいいよ」と言うのでそのまま残すことになりました。衝動のバイブスだからって。何回も撮り直して結局1テイク目がよかったってなることありますよね。
JP THE WAVY めっちゃありますね。
日本のアーティストと海外の架け橋に
──最後に2人とコラボした感想を改めて教えてください。
VERBAL さっきも話した通り「こういう人たちがいたらいいな」と自分が思い描いていたようなスーパーヒーローが日本のシーンに来てくれたみたいでうれしかったし、自分が学んできたのとは違うヒップホップの角度や新しい風を感じられたので一緒に楽曲を作ってて楽しかったですね。改めて日本ってカッコいいなとも思えました。
──グローバルに活動するVERBALさんから見て、日本のヒップホップシーンはどのように映っていますか?
VERBAL ある市場調査があったんだけど、世界で一番クリエイティブな都市はどこかって世界の20代の若者5000人に聞いたら大体みんな東京だと答えるんですよ。でも東京の若者は日本に対して自信がない。海外から日本に帰ってくるたびに思うんですけど、こんなにカルチャーが詰まった街は世界中探してもなかなかないんですよね。安全だし、食べ物もおいしいし、胸張って世界に向けて発信したらいい。この間、上海に行ったときに「ジャパニーズアーティストが出るから!」って誘われた現地のパーティにKOHHくんが出てきて超盛り上がってて。海外に行くと「日本のアーティストが戦える時代なんだよな」って改めて思いますし、例えばJPくんとMIYACHIくんがコーチェラとか出てても全然違和感ないんですよ。
JP THE WAVY どうなんだろう。でもすごくいろんなラッパーが増えていて、そういう可能性はあるし、面白いシーンになっていると思いますね。
MIYACHI VERBALとかがいなかったら今みたいにはなっていない。自分が子供の頃、テレビにアジア人が出てくることは少なかったし、アジア人がカッコいいとは思えなかった。VERBALたちがアーティストとしてアジアのカッコいいところを見せてくれたおかげだし、僕もアジア人のカルチャーを見せることをがんばりたいですね。
VERBAL 僕は日本のアーティストを海外に送り込むための座組を常日頃から考えていて、架け橋になれたらいいなと思いますし、アーティストのクリエイティブが世界で評価されやすい土壌を作るのが近年の目標です。アーティストが自分でレーベルを探してA&Rを探して売り込みに出てっていうドサ回りをしていたら、それだけで疲れちゃうじゃないですか。アーティストとしてカッコいい音楽を作ることに集中できる環境作りが自分の使命かなと思っています。
公演情報
- m-flo 20th Anniversary Live "KYO"
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- 2019年11月22日(金) 東京都 Zepp Tokyo
- 2019年11月23日(土・祝) 東京都 Zepp Tokyo
<出演者> m-flo
ゲスト:Crystal Kay / Emyli / 日之内エミ / JP THE WAVY / melody. / Minami(CREAM) / MINMI / YOSHIKA / and more
※出演日割りは後日発表
- m-flo(エムフロウ)
- 1998年にインターナショナルスクールの同級生だった☆Taku TakahashiとVERBALの2人で活動をスタート。LISAをボーカルとして本格的に始動し、1999年7月に1stシングル「the tripod e.p.」でメジャーデビューを果たした。2001年リリースの2ndアルバム「EXPO EXPO」は80万枚というセールスを記録するも、翌年LISAがソロ活動に専念するためにグループを脱退。2003年になると、VERBALと☆Takuはさまざまなアーティストをゲストボーカルに迎える“Loves”プロジェクトを始動。Crystal KayやBoA、Dragon Ash、坂本龍一、CRAZY KEN BAND、野宮真貴といったバラエティに富んだゲストを迎えた3rdアルバム「ASTROMANTIC」がヒットし、2005年には初の日本武道館でのワンマンライブを成功させた。2008年、41組のアーティストとのコラボレーションが実現した“Loves”シリーズに終止符を打ち、VERBALと☆Takuは新たな可能性を求めてプロデュースやリミックス業、自身のブランドや別ユニットなど、個々のフィールドで活躍。2017年にLISAがカムバックし、15年ぶりにオリジナルメンバーでの活動を再開した。2019年7月には「mortal portal e.p.」を、11月には活動20周年を記念したオリジナルアルバム「KYO」を発表した。
- VERBAL(バーバル)
- 1975年東京生まれのラッパー、プロデューサー、DJ、デザイナー。1999年7月にm-floのメンバーとしてシングル「the tripod e.p.」でメジャーデビュー以降、TERIYAKI BOYZ®やPKCZ®、HONEST BOYZ®のメンバーとしても活躍。独自のコネクションを活かし、数多くのアーティストとコラボレーションを実現している。またファレル・ウィリアムスやカニエ・ウェスト、アフロジャックなど、海外アーティストとの交流も深い。音楽活動をする一方、2008年よりファッションブランド・AMBUSH®を立ち上げ、自らCEOも務める。2016年の株式会社LDH JAPANの執行役員および国際事業部プロデューサー就任を経て、2019年には同社取締役に就任した。
- JP THE WAVY(ジェイピーザウェイビー)
- 1993年生まれのラッパー。2017年5月にYouTubeで公開した「Cho Wavy De Gomenne」をバイラルヒットさせ、その1カ月後にはSALUをフィーチャーしたリミックスバージョンを公開してさらに話題を呼ぶ。その後、加藤ミリヤやMINMIらの楽曲にも参加。アメリカ・オースティンで開催されたイベント「SXSW 2019」に出演するなど海外でも注目を集めている。
- MIYACHI(ミヤチ)
- 1993年2月12日、ニューヨーク生まれのラップアーティスト。クラシックピアニストの両親のもとで高校生の頃から作詞などの創作活動を始め、テンプル大学で音響工学を学ぶ。2018年2月に配信リリースしたシングル「Wakarimasen」では「英語わかりません 英語わかりません」と繰り返す中毒性の高いサビが話題となり、Spotifyの人気チャート「バイラルトップ50(日本)」で1位を獲得。同曲を収めた1stアルバム「WAKARIMASEN」を2019年7月にリリースした。またこれまでにRADWIMPSやm-floなどのライブに客演で参加しているほか、ストリートファッション誌「NYLON JAPAN」「Ollie」にモデルとして起用されるなど幅広く活躍している。
※記事初出時、収録曲のタイトルに誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
2019年12月20日更新