lyrical school|5つの個性がビートを刻む ガールズラップの可能性

キムヤスヒロ×大久保潤也(アナ)インタビュー

ポップスセンスでリリスクの幅を広げたキーマン

──CONNECTONEからのデビューというのはどういった流れで決まったんですか?

キムヤスヒロ

キムヤスヒロ 今の5人での形ができてから「これはどこに行っても通用するな」という確信が持てて、去年の秋の新木場STUDIO COASTワンマン(参照:lyrical schoolツアーファイナルに新曲大量投入「いつだって今が最高」)にはいろんな方をお呼びして観ていただいたんです。その中で手を挙げてくださったのがCONNECTONEさんで。CONNECTONEさんとしても、レーベルとしてさらに音楽的に面白くしていきたいところに、リリスクはハマるんじゃないかというイメージができたらしくて。ここなら今までやってきたことの延長でスケールアップさせていけるかなと。

──5月にCONNECTONEへの移籍発表があり(参照:リリスク2度目のメジャーデビュー!ニッパーくんと共に世界へ)、その場でさっそく移籍第1弾楽曲「LAST DANCE」が披露されました。この曲は大久保さんの作詞ですが、大久保さんはどういうきっかけからリリスクに楽曲提供することになったんですか?

大久保潤也(アナ)

大久保潤也 参加したのは前の体制のラストアルバムになった「guidebook」(2016年11月発売)からですね。リリスクの楽曲をずっとやっていた泉水マサチェリーとは古い音楽仲間で、彼が作ったリリスクの曲にスクラッチを入れたりとか、たまにお手伝いしてたんです。それである日彼から「歌詞を書いてみない?」って締切3日前にオファーがあったんです(笑)。個人的にずっとアイドルの作詞はやってみたかったので、半ばゴーストライター的に書いて。

──それが「DO IT NOW!(HEY!HEY!HEY!)」ですね。

キム 僕は泉水さんにオファーしたはずなんだけど(笑)。「内容がいいので今回はいいですけど、勝手に別の人にオファーしないでください……」って。

大久保 特にアイドルとも接点がなかったし、リリスクのことをそんなに知ってるわけじゃなかったから、3日間しかない中で、2日間はひたすら調べました。映像とか観まくって。その2日でかなり惹かれましたね。そのときはここまで深く関わるようになるとは思っていませんでした。

──現体制の第1弾シングル「夏休みのBABY」も大久保さんでしたし、今や節目を担当するキーマンのような役割に。

キム 「guidebook」が当時のラストアルバムになってしまったので、そこから地盤を固めないとなと思っていて。活動初期からお世話になっている泉水さんや坪光成樹さん、高橋コースケさん、ALI-KICKさんといった作家さんがいる中で、大久保さんは「DO IT NOW!(HEY!HEY!HEY!)」一発で「リリスクに合う曲を作ってくれるんじゃないか」という予感があったんです。ポップス的なセンスで幅を広げてくれるんじゃないかと思って、勝手にチームに組み入れました(笑)。

大久保 それで「夏休みのBABY」のときに初めて泉水とタッグでお願いしますと正式なオファーを受けたんです。

オールドスクールからトレンドまで違和感なく

──「夏休みのBABY」はどういうオーダーがあったんですか?

キム もともとtengal6は当時はまだ新しかった「ラップアイドル」という枠組みの中で、「ラップに触れてこなかった女の子が集まってラップユニットを組んだらどんなグループになるか?」というコンセプトで活動を開始したんですね。そういうのも引っくるめて「清純派ヒップホップアイドル」って名乗ってました。けど、それは誤解を恐れずに言えば2010年的というか、今だとあり得ないと思うんですよ。himeがそうであるように、ちっちゃいときからヒップホップに触れていて、ラップを聴くことが珍しくない環境で育った男の子も女の子も増えてきている今、新体制を始めるにあたってはそのコンセプトからは一旦離れないといけなかった。つまりシンプルに「ヒップホップアイドル」「アイドルラップ」という言葉の意味を一から考えなきゃいけない。そのとき、プロデューサーとしては恥ずかしい話、メンバーと一緒に手探りでやっていくしかないと思ったんです。だからこの体制の初期の曲には、具体的に新しい体制であることを打ち出していくようなコンセプトが存在しないんですよ。

──なるほど。

キム 「夏休みのBABY」とカップリングの「Concrete Jungle ~Boy meets Girl~」、あと「つれてってよ」の3曲は事前に制作を進めていて。それまでのリリスクには「そりゃ夏だ!」とか「FRESH!!!」とか、夏の曲に盛り上がるキラーチューンが多くて、どうしても夏になるとさんざんセットリストに組み入れていくことになるんですね。そんな中で、新体制になったリリスクが昔の曲だけで盛り上がっているのはすごくモヤッとするだろうなと。泉水さんと大久保さんには「とにかくライブで盛り上がる夏曲を作ってほしい」とお願いしました。現状は狙い通り、ブチ上げ曲になっていますけど。

──確かに体制が変わるうえでの難しさみたいなものは大きいですよね。

キム 完全にヒップホップアイドルっていう言葉の意味を定義し直さないといけないなって。himeやminanはあとから入ったメンバーというのもあって、あまり前に出て意見を言うタイプではなかったので、ちゃんとメンバーの意見を汲み上げながらやりたいと思っていました。もともと旧体制で振り付けが増えていったのも、初めから振りを入れることは考えてなかったんですけど、当時のメンバーに「振りを入れてもらわないとどう動いたらいいかわかりません」と言われたからなんです(笑)。今はhimeが……あるとき僕がいる楽屋に入ってきて、KANDYTOWNの動画を見せてきて「こんな感じでライブするのだめですかね?」って提案してくれたんですよ。「WORLD'S END」というアルバムは5人の中で今のリリスクの感じが固まる前にできた、開戦前夜のような作品だったけど、今回のアルバムはある程度形が見えてきた中で、変わり始めた瞬間をパッケージできたかなと思います。

lyrical school

──先ほどメンバー自身に心境や役割の変化について聞きましたけど、キムさんはどう感じていますか?

キム 確かに役割分担は自然とできてきたけど、役割が見つかったから安心と思っている子は1人もいなくて。それぞれ成長や変化のスピードにも差がありましたよね。risanoが前に出ていってガヤを入れるみたいなポジションはわりと早い段階でできあがったし、himeも元々はアイドル性の強いところから早めにグラデーションが入っていたと思うんですよ。minanも早々にポジションを見つけたけど、hinakoとyuuは長らく苦戦していて。hinakoは彼女の持つアイドル観をどうステージに落とし込むか悩んでいたし、yuuは立ち位置自体に悩んでいた。トライアンドエラーで「これはやっていい」「これはダサかった」を繰り返して今、というだけで、決して今のスタイルがゴールではないと思うんです。それぞれに合格点のパフォーマンスをしてくれていると思うけど、1年後同じように思えるか怪しいな、というぐらい変わり続けてきる感じはするんですよね。

大久保 僕も今回のアルバムを聴いて、それぞれのキャラができあがりつつあるなとは感じました。1曲1曲でというよりは、アルバムを通していろんな形で個性を出しながらそれぞれの役割ができているような。作詞の面でも当て書きがしやすくなりました。今回作詞した3曲はすべてそうですね。

──レーベルからこういう方向性でいきたいという指示はないんですか?

キム オールドスクールな曲からトレンド的なものまでバリエーション豊かな楽曲を違和感なくやれるグループって、実はそれほど例がないんじゃないかと思っていて。CONNECTONEさんはそれがリリスクの強みだと言ってくださっているので、やりたいことは一致しているのかなと。「あ、けっこう好き勝手にやっていいんだな」って(笑)。放任というわけではないですけど「こうしなきゃいけない」というのは特にないですね。アルバム制作も「この曲面白いね」と言いながら一緒に進めていけた感じはあります。CONNECTONEさんとのお話がある前からライブ用にどんどん曲を作っていて、作家さんが気持ちを入れて作ってくれたのも大きいですね。

大久保 「パジャマパーティー」も言ったら勝手に作った曲なんですよ。なんとなく「トラップみたいなものに挑戦すると面白いかもね」という話はしていて。

キム トラップにポップな要素を取り入れてやるならこのへんかな、という曲をリファレンスとして大久保さんにお送りして、大久保さんが「あー、わかるわかる」って。新木場STUDIO COASTに向けて急ピッチで曲作りを進めていて、PESさんにお願いした「Tokyo Burning」もその頃にデモが上がっていたのかな? まさに現行って感じの超カッコいい曲で、今のlyrical schoolならこっちの方向に振っても面白いことができそうだなという感触をつかんだんですよね。

変わりつつある今の瞬間をちゃんとパッケージしたい

大久保 いろいろ新しいことに挑戦していて、「パジャマパーティー」だったらトラップだったり、「LAST DANCE」なら今のダンスミュージックのトレンドの……ラップパートがあり、サビに向けて盛り上げていくビルドアップがあって、サビでガツンと盛り上がるんだけど歌が少なくなるみたいな構成をやってみたくて。

キム めちゃくちゃバランスいいですよね。リリスクなりの組み込み方というか。もともと第1弾シングルとして出すつもりではなく、アルバムの中の重要な1曲ぐらいの立ち位置だったんですけど、今後のlyrical schoolを示す曲として、メジャー行き一発目の曲としてMVも撮ったほうがいいだろうと思って。

──アルバムにはNONA REEVESの「LOVE TOGETHER」のラップカバーも入っていますが、このタイミングでカバーを入れたのはなぜなんですか?

キム アルバムコンセプトに「VHSに収録された番組」というのがあって、音楽番組やバラエティ番組、アニメーションとかいろんなバリエーションを考えている中で、アニメネタとして最初は80's、90'sのアニメソング風の曲を作ってヒップホップに落とし込もうと思っていたんです。でもそれだと中途半端な懐古趣味になりそうだなと思って、だったらアニメソングをラップでカバーするという方向性もありなのかなと。リリスクに相性のいいアニメってなんだろうなと考えているうちに……「パラッパラッパー」があるじゃんって。同じノーナでYOU THE ROCK★さんが参加している「DJ! DJ! ~とどかぬ想い~」を聴いて、「LOVE TOGETHER」もラップ絶対合うだろうなというアイデアがずいぶん前にあったんです。それが今回のアルバムコンセプトにうまくつながったので、提案をしてクリアランスを取りました。

lyrical school

──アルバムコンセプトとは別の部分で、「こういうアルバムにしなくちゃいけない」とか「こういうことはしたくない」みたいなところは明確にあったんですか?

キム いつもアルバムを作るときは、その前の作品でやらなかったこと、できなかったことを反映させているんですよ。さっきも言ったように、前の作品は今のlyrical schoolができあがる前に完成しちゃったんですよね。あれはあれでよくできたアルバムだと思っているんですけど、どうせだったら変わりつつある今の瞬間をちゃんとパッケージしたいという思いがあって。後半に比較的トレンドを意識したものが並ぶ構成というのは初めから考えていましたね。ただ、「そっちの方向に変わっていくんだ」と思われるのも嫌で、あくまでどっちもできる強みはアピールしていきたいし、今回のアルバムではそこがきちんと提示できたかなと思いますね。

「アイドルラップとはなんぞや」の答えが見えかかっているのかな

──lyrical schoolをどういうグループにしたいという理想形はあるんですか?

キム これは僕らの課題ですけど、お客さんには「Tokyo Burning」のようなメロウな曲でこそブチ上がってもらいたいんですよ。そりゃ夏曲をやれば盛り上がるけど、メロウな曲にピークを持っていけるような土台作りをしないといけない。そこはほかにどんな曲ができるか、どういう流れで組み込んでいけるかだと思うので。

──改めてメジャーでやる、という部分に強い意識はありますか?

キム あまりないですけどね。ただ言い方は悪いけどハクが付いたというか、やっぱりCONNECTONEさんに選んでもらえたことは、とりあえずここまでやってきたことは間違いじゃなかったんだなという確認にもなったので、安心して前に進めるなって。

大久保 より広く伝わる状況で面白いことに挑戦できるんじゃないですかね。PerfumeやNegiccoがアイドルとして新しい立ち位置を作っていったように、リリスクもまた新しいアイドルの形を作れる人たちなんじゃないかと期待しています。

──メンバーに望むことは?

キム グループの見え方としては、サクッとライブやってサクッと帰る、でもライブは最高。みたいな感じが理想なんですよ。こいつら地元でずっと一緒にやってきたのかな、みたいな。2018年の「TIF」でSMILE GARDEN(屋外ステージ)に出たときに、奥から5人がダラダラ出てくるのを観て「あーこれこれ」と思ったんですよね(笑)。ほかのアイドルさんはパパパッと出てきて板付きで始めるのに、リリスクは水飲みながらダラダラと出てきて、この感じはカッコいいなという手応えがあって。あの年の「TIF」でいろいろ見えてきたところはありますね。あの子たちは仲のいい友達から始まった関係性ではないですけど、楽屋ではそんなグルーヴが出ている気がして(笑)。「ヒップホップアイドルとはなんぞや」「アイドルラップとはなんぞや」というところでは、もしかしたら答えが見えかかっているのかなと思いますね。

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公演情報

lyrical school Tour2019 "BE KIND REWIND" SERIES

PART 1「lyrical school oneman live "BE KIND REWIND" at AKASAKA BLITZ」

  • 2019年9月13日(金) 東京都 マイナビBLITZ赤坂 <出演者> lyrical school

PART 2「PLAY」

  • 2019年9月21日(土) 大阪府 OSAKA RUIDO <出演者> lyrical school / 4s4ki / Mom
  • 2019年9月22日(日) 京都府 METRO <出演者> lyrical school / アナ(クラブセット)
  • 2019年9月28日(土) 千葉県 柏ThumbUp <出演者> lyrical school / 桜エビ~ず ※チケット完売
  • 2019年9月29日(日) 群馬県 高崎clubFLEEZ <出演者> lyrical school / サイプレス上野とロベルト吉野 / Young Hastle
  • 2019年10月6日(日) 新潟県 NEXS Niigata <出演者> lyrical school / JABBA DA FOOTBALL CLUB
  • 2019年10月19日(土) 静岡県 G-SIDE <出演者> lyrical school / 眉村ちあき
  • 2019年10月20日(日) 愛知県 VERSUS東海ホール <出演者> lyrical school / フィロソフィーのダンス

PART 3「FF」

  • 2019年11月9日(土) 大阪府 CLUB JOULE <出演者> lyrical school
  • 2019年11月17日(日) 福岡県 DRUM Be-1 <出演者> lyrical school
  • 2019年11月24日(日) 東京都 よみうりランド 日テレらんらんホール <出演者> lyrical school