上京してカッコいいバンドにたくさん出会って、悩んだ時期もあった

──5月27日には、いよいよメジャーデビューとなるミニアルバムが発売されます。

寺井　そうですね。これは半分以上が新曲で、ライブでもほとんどやってない曲もあって。1曲目の「夕焼けルーシー」をリード曲にしたかったので、それを軸にバランスを見て組んでいった というか。

浦山　幅広く僕らを表現できる選曲にしました。

──「夕焼けルーシー」は皆さんにとってどんな曲なんですか？

寺井　テーマとしては、昔の僕ら、最初のライブの頃を思い出そうっていうのがあって。というのも、東京って刺激が多いじゃないですか？ カッコいいバンドが本当にたくさんいて、上京し てからヘコんだ時期もあって。ライブの曲順やMCとか、今まであんまり考えたことなかったことまで考え出して、けっこう悩んでたんですよ。

──環境の変化が、ひとつの試練を生んだんですね。

寺井　はい、曲もぜんぜんできなくて。でも、そんなときにすごく救われたことがありまして。メンバーがいるっていうことはすごいありがたいことなんだなって改めて気付いたんです。知り合いがぜんぜんいない街でも2人がいるっていうのが心強くて、3人でずっとやっていきたいって思いが強くなって。そんなことを考えてたらバンドを組んだ当初の気持ちを思い出し、それを表現したくてこの曲を書いたんです。みんなでわけのわかんな い曲とかコピーとかやって。夕焼けをバックにギター背負って帰って、また早く弾きたい！ みたいな。そんなあの頃の景色と気持ちを詰め込んだ感じですね。

──そういう具体的なストーリーが最初からあったんですね。寺井さんが曲の中で生きてる、って感じがします。

寺井　完全にそうですね。近くのバス停から実家までの情景がね（笑）。あと、“ルーシー”っていう言葉は、浦山が持ってた赤いレスポールの名前で……。

浦山　ジョージ・ハリスンがクラプトンからもらった赤いレスポールがあって、僕のギターも同じ色をしてたんですよ。で、それにジョージ・ハリスンが“ルーシー”って名前をつけてたので、僕も、と（笑）。

寺井　その「やるぞ！」っていう浦山の当時の気持ちや、夕焼けをバックに走った気持ち。ギターの赤と夕焼けが僕の頭の中で合致して「来た！」って思って。

澤本　なかなか曲ができなくて、みんな悩んでどんどん落ちていった時期もあったんです。でもやっぱり音楽って楽しいものだし、そういう最初の頃の気持ちを大事にしよう、取り戻そう っていうのは考えましたね。

「マッシュ」は、作ってたとき本当に眠たかったんですよ（笑）

──「マッシュ」は遠距離恋愛の曲と思っていいんですか？

澤本　一番わかりやすいのはそうだと思います。これは、“おやすみ”っていう言葉をまず使いたくて。ありきたりな言葉だけど大切にしたいなって思ってて、最初に僕が歌詞の枠組みをダ ーッと書いて。でも僕が書くといつも甘えん坊な歌詞になってしまうので（笑）、世界観を統一するために、その後は寺井に預けて。

──メロディも柔らかくて、おやすみソングのような曲になってますよね。

澤本　ですよね。これ、作ってたとき本当に眠たかったんですよ（笑）。で、そのとき“おやすみ”って使えたらいいなーって思って。

──3人のコーラスにも厚みがあって、それが包み込むように温かくて。

寺井　僕らはスリーピースだし、限られた中で膨らみを出そうと思って。レコーディングで楽器を乗せる方法もあるんですけど、まずは3人の純度を高めたかったので今回コーラスを多用した 感はあります。「マッシュ」は特にそうですね。でもそれが自分の中で自信になったというか、これもいけるんだなって思いました。

浦山　昔からコーラスは自然と曲作りの段階から入れてて。昔は地のハモリのみとかだったんですけど、今は楽器的な捉え方というか、裏でメロディみたいに流れてたり。「ハルカナ、ハル」もそうですね。