音楽ナタリー Power Push - LOUDNESS
増田勇一が聞く、“すごい4人組”の輪廻飛翔
LOUDNESSが、結成35周年を記念した作品「SAMSARA FLIGHT~輪廻飛翔~」をリリースした。
本作の完全期間限定生産盤はCD2枚、DVD1枚で構成されており、DISC 1には彼らの1stアルバム「THE BIRTHDAY EVE~誕生前夜~」、2ndアルバム「DEVIL SOLDIER~戦慄の奇跡~」、3rdアルバム「THE LAW OF DEVIL'S LAND~魔界典章~」の収録曲からメンバーがセレクトした全12曲のセルフリメイク音源をパッケージ。またDISC 2はLOUDNESSの全楽曲の中から投票で選ばれたナンバーが収録されるファン選曲のベストとなる。そしてDVDには2015年9月に東京・渋谷公会堂で行われた「THUNDER IN THE EAST」の完全再現ライブの模様が収められている。
音楽ナタリーでは本作の発売を記念して、二井原実(Vo)、高崎晃(G)にインタビューを実施。インタビュアーには彼らと親交の深い音楽ライター・増田勇一氏を招き、海外フェスでの手応えや初期曲と向き合って感じたことなどをじっくりと語ってもらった。
取材・文 / 増田勇一 インタビュー撮影 / 西槇太一
世界で通用するバンドに
──海外のフェスへの出演が続いていますね。これまでにスウェーデンの「Sweden Rock Festival」、ベルギーの「Graspop Metal Meeting 2016」、フランスの「Hellfest Open Air Festival」と、3カ国のフェスを回ってきたわけですが、手応えはいかがでした?
高崎晃(G) めっちゃ調子よかったよね?
二井原実(Vo) うん。出来がすごくよかった。
高崎 “いつものLOUDNESS”をばっちりキメられたし。今、本当にバンドが一丸となって1つの目標に向かって進んでるな、という実感がある。海外に行くたびに、現地での手応えもデカくなってきてるし。
二井原 演奏が進むにつれて人がどんどん増えてくるんですよ。普通ああいうフェスとかって逆じゃないですか。2、3曲聴いてどんなものかわかったらフェードアウトしていくパターンが多いでしょ?
高崎 それは……ちょっと寂しいやんな。
二井原 でもLOUDNESSの場合はその逆で。例えば「Sweden Rock」は、出番が14時頃だったし、ちょうど転換中に大雨が降ってたせいもあるんだけど、始まる前はステージ前に2列ぐらいしかお客さんが居なくて。ところが1曲2曲と演奏していくにつれ、ゾンビのごとく人が群れをなしてきて、4曲目ぐらいになると人であふれ返っていてね。
──LOUDNESSはその名のごとく音がめちゃくちゃデカいから、その爆音がゾンビたちを引き寄せるんですよ、きっと。
二井原 そう思うでしょ? ところが実はけっこう音量規制が厳しくて。
高崎 ただ、そういう数値的な規制があっても、抜けて聴こえてくる音というのが絶対あると思うんでね。しかもLOUDNESSはやっぱり、そういうデカい場所に合ってるんだと思う。歌も、演奏も、楽曲もね。デカい会場になればなるほどLOUDNESSの魅力が発揮されるようになるというか。すごく遠くまで音が飛んでる実感があるし、自分自身、その波動がわかるようになってきてる。そういうものによって人をたくさん吸い寄せることができるようになってきてるんじゃないかというのは今回改めて思いましたね。
──先ほど「バンドが一丸となって1つの目標に向かって進んでる」という発言がありました。バンドが今、目標としているのはなんなんでしょうか?
高崎 やっぱり“世界”です。つまり、世界で通用するバンドになること。それが結成当初からの目標だったし、それを目指し続けることを樋口(宗孝 / 高崎と共にLOUDNESSを創設したドラマー。2008年没)さんとも熱く約束してたし。あの人の熱いロックスピリットを、俺らも継承しながらやってきたつもりだから。
──その思いは今も変わらない、と。実際、この時期に欧州のフェスを転戦するというのは恒例になってきつつありますけど、回を重ねるごとに状況が変わってきているのは感じますか?
二井原 例えば7月の半ばに出演する「ROCK FEST BARCELONA」については、去年初めて出たんだけども、そのときのライブがきっかけになって、今年も呼んでもらえてるわけなんですね。今年「Sweden Rock」から声がかかったのは、そのときの評判が広がったからでもあるはずだし。
──フェス同士に横のつながりがあるわけですよね。
二井原 うん。実際、そういう場に出ることを虎視眈々と狙ってるバンドは世界に何万といるわけでしょ? その中から出られるアーティストなんて、ほんの一握りじゃないですか。そこでこうしてピックアップされるというのは光栄なことだよね。出演順も、去年は午前中とか昼間だったのが今年は夕方になっていたり、どんどんおいしいところに組まれるようになってきていて。
高崎 「Hellfest」も時間は早かったけどメインステージだったしね。「Graspop Metal Meeting」はメインじゃなかったけど、屋根のあるところだったから雨が降ってて好都合だったし(笑)、結果的には屋根のあるところから人があふれ出してた。あれは1万人ぐらいおったんちゃう? しかも今度の「ROCK FEST BARCELONA」での出演順がすごくよくてね。その日のヘッドライナー、Iron Maidenの直後なんですよ。去年はJudas Priestの2つ前で。だからこのままもうちょっとがんばったら、ホンマにトリとして出演できるフェスも出てくるかもしれない。だからなんか……むしろ日本でのほうが待遇が悪いよね(笑)。
逆に今の若い子らには新しく聴こえるんじゃないか
──そんなさなかにこうしたメモリアルで、今年ならではのアイテム「SAMSARA FLIGHT~輪廻飛翔~」が登場するわけです。初期3作品の中から曲をセレクトして再録しようという発想の発端はなんだったんですか?
高崎 始めスタッフから、デビューアルバムをフルでリメイクできないかという話が上がってきて。そこで自分たちの意見として、デビューアルバムだけをやるよりは、最初の3枚からセレクトして録り直したほうが内容的にも濃いものになるし、より今の時代にも通用するようなアルバムになるんじゃないかと。
──それは当時を原体験していない世代などからもニーズがあるはずだという読みもあったわけですよね?
高崎 うん。ヨーロッパツアーとかに、親と一緒に観に来てる若い子たちがけっこういて、しかもあの時代の曲とかにものすごく反応してくれるんですよ。そういうのを実際に目にしながら、逆に今の若い子らには新しく聴こえるんじゃないのかな、と。
──メタルの捉え方も世代的にさまざま。僕らは1970年代のハードロックを経てきたわけですけど、のちの世代は当然のようにエクストリームなものを入口としていたりもする。確かにこうした時代の音楽にはあまりなじみがないのかもしれません。
高崎 そういう若い子たちは多いと思うんですよね。あらかじめヒップホップやEDMがそこにあって、それが当たり前になってる子たちにとっても、このへんの音楽というのは「何これ?」というような新鮮さのあるものなんじゃないかと思う。
二井原 確かに。僕は当初、この話が出たときはそこまで深くは考えてなくて。あくまで35周年記念の一環として、35年間サポートしてくれた人たちへの感謝の気持ちを込めた作品、という気持ちでしかなかった。ただ、できあがってから「今の世の中、LOUDNESSがデビューした頃には存在もしてなかった子供たちがほとんどなんだ」ということに気付いて。そういう人たちにとっての入門編として最適かもな、と思います。
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- ベストアルバム「SAMSARA FLIGHT~輪廻飛翔~」 / 2016年7月6日発売 / 日本コロムビア
- 完全期間限定生産盤 [CD2枚組+DVD] COZP-1186~8 / 7560円
- 通常盤[CD] COCP-39624 / 3024円
DISC 1(※共通仕様)
- STREET WOMAN
- THE LAW OF DEVIL'S LAND
- LOUDNESS
- IN THE MIRROR
- BLACK WALL
- ROCK SHOCK(MORE AND MORE)
- LONELY PLAYER
- DEVIL SOLDIER
- BURNING LOVE
- ANGEL DUST
- ROAD RACER ※通常盤ボーナストラック
- ROCK THE NATION
- TO BE DEMON
DISC 2(※完全期間限定生産盤のみ付属)
- CRAZY DOCTOR
- CRAZY NIGHTS
- IN THE MIRROR
- S.D.I
- DREAM FANTASY(夢・Fantasy)
- SOLDIER OF FORTUNE
- LOUDNESS
- GOTTA FIGHT
- LIKE HELL
- ARES' LAMENT(アレスの嘆き)
- SLAUGHTER HOUSE
- SPEED
- LET IT GO
- THE SUN WILL RISE AGAIN
- METAL MAD
- MILKY WAY
- GHETTO MACHINE
完全期間限定生産盤DVD 収録内容
LOUDNESS WORLD TOUR 2015 "THE SUN WILL RISE AGAIN"
30th Anniversary THUNDER IN THE EAST in JAPAN
2015.09.07(MON) at SHIBUYA KOKAIDO
- CRAZY NIGHTS
- LIKE HELL
- HEAVY CHAINS
- GET AWAY
- WE COULD BE TOGETHER
- RUN FOR YOUR LIFE
- CLOCKWORK TOY
- NO WAY OUT
- THE LINES ARE DOWN
- NEVER CHANGE YOUR MIND
LOUDNESS(ラウドネス)
1981年に結成されたヘヴィメタルバンド。オリジナルメンバーは二井原実(Vo)、高崎晃(G)、山下昌良(B)、樋口宗孝(Dr)の4人。同年アルバム「THE BIRTHDAY EVE~誕生前夜~」でデビューを飾る。1985年に日本人として初めてアメリカ「マディソン・スクエア・ガーデン」のステージに立つなど、海外でも高い支持を獲得する。1980年代後半からメンバーチェンジが続いたが、2000年にオリジナルメンバーで活動再開。リリースやライブを精力的に行い、海外展開も続けてきた。しかし、2008年11月に樋口が肝細胞癌のため逝去。2009年に入ると鈴木“アンパン”政行を後任メンバーとして迎え、同年5月に樋口のドラムトラックも使用した遺作「THE EVERLASTING -魂宗久遠-」をリリースした。さらに同年、初期の代表曲ばかりを演奏するライブツアー「CLASSIC LOUDNESS」シリーズもスタートさせ、多くのファンを驚かせた。2016年11月にデビュー35周年を迎えることを記念し、同年7月に記念作品「SAMSARA FLIGHT~輪廻飛翔~」をリリース。