音楽ナタリー Power Push - LOUDNESS
増田勇一が聞く、“すごい4人組”の輪廻飛翔
これはすごい4人組だ
──再録にあたり当時の曲と改めて向き合ってみて、気付いたことはありますか?
二井原 曲によっては35年ぶりくらいに歌ったわけでしょ? 普通だと、35年も前の音楽って古臭く感じるはずじゃないですか。ちょっと自分でもこっぱずかしく感じたり。ところが、そういうのが全然なくて。実際、当時の自分はまだ21歳やったし、タッカン(高崎)は20歳、ベースの山下(昌良)に至ってはまだ19歳……つまり平均年齢20歳で、未成年がいるぐらい若いバンドだったわけでさ。今の自分たちからすれば子供というか、ホントに自分の息子でも全然不思議じゃない年齢だったわけで。だからなんか、これはすごい4人組だな、と改めて思わされましたね。もちろん自分のボーカルに関しては稚拙な部分というのはたくさんあるんですけど、楽曲のクオリティとかアイデア、バンドの演奏のポテンシャルについては、手前味噌ながら「これはすごい!」と思えて。
──自分たちのすごさに一番気付きにくいのが自分たち自身なのかもしれません。
二井原 そうなのかもね。今回、スウェーデンのフェスではほかのバンドのステージもけっこう観たんだけど、35年以上続いてるバンドも当然いるわけですよ。ForeignerとかQueenとか。で、そういう人たちのステージって、やっぱ全然違うんですよ。なんで今その人たちがステージに立ててるかって言えば、すごい曲を持ってるからなんです。Twisted Sisterも出てたんだけど、当然のようによかったし、長く支持されてるのには理由があるなと思えた。で、ふと自分らのバンドのことを振り返ってみたら、35年経って、いまだにこうして欧米でライブをやってたりするわけです。そういう意味では自分らも同じように思ってもらえてるのかな、と。だから今回の作品を通じても、「ああ、35年生きてるバンドだな」ってことを実感しましたね。しかもこの3枚ってね、結成から2年ぐらいのうちに作ってるんですよ。
──すごいリリースサイクルでしたもんね、当時って。
二井原 1年にアルバムを2枚とか3枚とか、平気で作ってた時期だから。
──しかもLOUDNESSのアルバムの狭間にソロアルバムを出したり、ほかのアーティストの作品への参加があったり。高崎さんはかつて当時を振り返りながら「“ヘヴィメタルスタジオミュージシャン”のような生活だった」と言っていました。
高崎 うん。ただ、あの頃はもう、LAZY(LOUDNESSの前身にあたるバンドで、アイドル的な活動を強いられていた)時代みたいに毎日テレビ局に行くとか、そういう仕事は一切してなかったんで。その当時の活動といったら、国内でレコーディングして、あとはツアーに行くだけ。その2つしかすることはなかったんですよ。ツアーにしてもまだ国内だけだったわけだし。だから、全然やれてた。休むくらいだったらスタジオで何か作ったり練習したりしてるほうがええわけ。年に2枚みたいなことも全然無理なくできてたし、ホンマに冗談じゃなく、毎月1枚作れるぐらいやったと思う(笑)。
──でも、やっぱり20歳そこそこの自分を振り返れば「よくやってたな!」と感心させられるんじゃないですか?
高崎 そうですね。実際、LAZYの後半ぐらいにはすでにリフの構想とか、アイデアのピースみたいなものがいろいろとあって、それがLOUDNESSの2ndアルバムくらいまでは反映されてるんですよ。そこで3枚目を作ることになって、いざ自分たちの前に自由があって、もうどんな音楽でも作れるんだという環境になったところで、自分らの個性として何を出していくかっていうところでは悩みましたけどね。
──そういう意味では本当に3枚のアートワークが示すような、“誕生から自我の芽生えまで”みたいなプロセスにあたるわけですよね、この時期というのは。
二井原 そうですね。あの3枚のアートワークで成長していった少年が「DISILLUSION~撃剣霊化~」(1984年発表の4thアルバム)で戦士になり、さらに成長した姿が、今回のジャケット写真に納まっている兜を被った人なんですよ。
高崎 そいつの正体が実は冠徹弥(THE冠)だった、という(笑)。
二井原 立ったらお尻が丸見え、みたいな(笑)。
高崎 ライブやるとき、ステージの後ろで冠に座っといてもらおうか?(笑) それはともかく、今回こうしてリメイクしましたけど、企画モノとして作ったという感覚が自分には全然なくて。むしろニューアルバムをクリエイトしたという感じがする。若いときにやり残したこととかも今回全部できたという気がするよ。
──再録作品というのは世の中に少なくない数ありますけど、あからさまに楽曲のあり方から変えているものも多いですよね。でも「SAMSARA FLIGHT~輪廻飛翔~」はそうじゃない。曲を変えることが目的ではないのがよくわかります。
高崎 そうですね。それこそ「ROCK SHOCKS」(2004年発表のセルフカバー集)を作ったときは、アレンジから何から変えた曲もいくつかあったけど、今回はベーシックな部分では特に変えずに、その曲の持ってるソウルとかそういうものを一番大事にしながら作っているんで。ギターソロを変えたり、個々の音色が今のものになってるというのはありますけどね。結果、より魂が込もった作品になってるというか。スケジュールの空いてるときにスタジオに入って、5~6回ぐらいに分けて少しずつ作り続けてきたんですけど、ホントにすごく楽しみながらレコーディングできました。
初期曲のイントロで雄叫びが上がる
──先ほどの発言にもありましたけど、ファンの側もまたこの当時の曲を求めているというのが興味深いですよね。
高崎 ヨーロッパのほうって、俺らがAtlantic Recordsと契約してからの作品ももちろんウケるんですけど、もっと初期の曲がより受けたりする不思議さがあるんですよね。当時、向こうのファンにとっては輸入盤のような形で初期のアルバムが出回ってたんですよね。
二井原 あの時代の曲をやると、イントロが流れた瞬間にお客さんが叫んだりしますからね。まあ、大概おっさんですけど(笑)。でもヨーロッパのファンに言わせると、4枚目の「DISILLUSION~撃剣霊化~」が最高だっていう声が多いんですよね。
──当時から欧州のファンには、アメリカでのメジャー契約を手に入れる以前のLOUDNESSを自分たちで見つけたというプライドみたいなものもあるはずですからね。それは僕らが、ものすごくカッコいい欧米の未契約バンドを見つけたときの感覚と同じなんだろうと思います。
高崎 うん。それはあるね。
二井原 だから「1枚目から4枚目までがLOUDNESSだ!」って言い切ってるファンの人もいますよね。極端な意見だけども(笑)。でもまあ実際、そこがルーツですからね。
高崎 「DISILLUSION~撃剣霊化~」は日本でもやっぱり人気が高いしね。
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- ベストアルバム「SAMSARA FLIGHT~輪廻飛翔~」 / 2016年7月6日発売 / 日本コロムビア
- 完全期間限定生産盤 [CD2枚組+DVD] COZP-1186~8 / 7560円
- 通常盤[CD] COCP-39624 / 3024円
DISC 1(※共通仕様)
- STREET WOMAN
- THE LAW OF DEVIL'S LAND
- LOUDNESS
- IN THE MIRROR
- BLACK WALL
- ROCK SHOCK(MORE AND MORE)
- LONELY PLAYER
- DEVIL SOLDIER
- BURNING LOVE
- ANGEL DUST
- ROAD RACER ※通常盤ボーナストラック
- ROCK THE NATION
- TO BE DEMON
DISC 2(※完全期間限定生産盤のみ付属)
- CRAZY DOCTOR
- CRAZY NIGHTS
- IN THE MIRROR
- S.D.I
- DREAM FANTASY(夢・Fantasy)
- SOLDIER OF FORTUNE
- LOUDNESS
- GOTTA FIGHT
- LIKE HELL
- ARES' LAMENT(アレスの嘆き)
- SLAUGHTER HOUSE
- SPEED
- LET IT GO
- THE SUN WILL RISE AGAIN
- METAL MAD
- MILKY WAY
- GHETTO MACHINE
完全期間限定生産盤DVD 収録内容
LOUDNESS WORLD TOUR 2015 "THE SUN WILL RISE AGAIN"
30th Anniversary THUNDER IN THE EAST in JAPAN
2015.09.07(MON) at SHIBUYA KOKAIDO
- CRAZY NIGHTS
- LIKE HELL
- HEAVY CHAINS
- GET AWAY
- WE COULD BE TOGETHER
- RUN FOR YOUR LIFE
- CLOCKWORK TOY
- NO WAY OUT
- THE LINES ARE DOWN
- NEVER CHANGE YOUR MIND
LOUDNESS(ラウドネス)
1981年に結成されたヘヴィメタルバンド。オリジナルメンバーは二井原実(Vo)、高崎晃(G)、山下昌良(B)、樋口宗孝(Dr)の4人。同年アルバム「THE BIRTHDAY EVE~誕生前夜~」でデビューを飾る。1985年に日本人として初めてアメリカ「マディソン・スクエア・ガーデン」のステージに立つなど、海外でも高い支持を獲得する。1980年代後半からメンバーチェンジが続いたが、2000年にオリジナルメンバーで活動再開。リリースやライブを精力的に行い、海外展開も続けてきた。しかし、2008年11月に樋口が肝細胞癌のため逝去。2009年に入ると鈴木“アンパン”政行を後任メンバーとして迎え、同年5月に樋口のドラムトラックも使用した遺作「THE EVERLASTING -魂宗久遠-」をリリースした。さらに同年、初期の代表曲ばかりを演奏するライブツアー「CLASSIC LOUDNESS」シリーズもスタートさせ、多くのファンを驚かせた。2016年11月にデビュー35周年を迎えることを記念し、同年7月に記念作品「SAMSARA FLIGHT~輪廻飛翔~」をリリース。