音楽ナタリー Power Push -「LONDON NITE」35周年特集

「ロック興しの旅は終わらない」大貫憲章が語るロンナイの35年とこれから

“ロック興し”が大きなテーマ

──一時の中断があったとはいえ、1つのイベントを35年にわたって継続するには並々ならぬエネルギーが必要だったと思います。大貫さんにとって一番のモチベーションはなんだったんでしょうか?

僕自身、楽しかったからというのが1つの大きな理由ではあるんですけど、続けていく中で、ある種の意地みたいなものが生まれてきたところはありますね。

──意地ですか?

大貫憲章

僕の中では“ロック興し”というのが大きなテーマになっているんですけど、ロックが持つ魅力をより多くの人たちに伝えたいなという気持ちが年々強くなっていて。僕は忌野清志郎くんと同世代なんですけど、彼も僕と同じような気持ちでずっと活動を続けていたんじゃないかと思うんですよ。彼の分まで、というとちょっとおこがましいんですけど、同世代の人間として、ロックの魅力を次の世代に伝えていくのが自分の使命なんじゃないかと思っていて。特に最近は洋楽を聴く人が減っちゃってるみたいで、それがすごく残念なんです。

──若者の洋楽離れはかなり深刻みたいですね。

僕は個人的にJ-POPという音楽が好きじゃないんですよ。もちろんJ-POPと呼ばれるものの中にもいい曲はあると思うんですけど、ほとんどが似たり寄ったりというか、何かの真似にしか思えないようなものばかりで。正直、「こんなの聴いて満足してるんだ!?」って思っちゃうんですよ。これだけ情報があふれている世の中ではあるけど、たぶんリスナーがいろんな音楽に触れられる機会が少ないんだろうなと思うんです。それを「まだまだいい曲がいっぱいあるよ」って教えてあげるのが僕の役目なんじゃないかって。DJは1時間あれば、違うアーティストの楽曲を20曲とか30曲とか紹介することができるわけですから。別に強要するわけじゃないですけど、どうせだったら、いろんな音楽を楽しめたほうがいいじゃないですか。

──より楽しみの幅が広がりますよね。

2014年2月に行われた「LONDON NITE X KENSHO’s Happy Birthday Bash」のバックステージにて。左より森雅樹(EGO-WRAPPIN')、大貫憲章、TOSHI-LOW(BRAHMAN)、渡辺俊美(THE ZOOT16 / TOKYO No.1 SOUL SET)。(写真提供:KENROCKS)

今の子たちはJ-POPに留まってしまってるような気がするんですよね。「日本語だからわかりやすい」みたいな声も聞きますけど、それはちょっと違うんじゃないかって。英語であろうがフランス語であろうが音楽に言語はあまり関係ないと思うんです。僕がロックに目覚めたのは中学時代だったんですけど、最初に洋楽を聴いたときはもちろん何を歌っているのか全然わからなかったです。でも、「なんだかわからないけどカッコいい!」みたいなところから興味を持ったんで。そういう人間の第6感みたいなものって、いつの時代も変わらないものだと思うんです。

──衝動を感じ取る能力というか。

要するに感性の問題だと思うんですよ。特に若い子たちにはもっとアンテナを張ってほしい。僕は産業能率大学という学校で年に1度講師をやらせてもらってるんですけど、授業でアンケートを取るとThe Beatlesを知ってる生徒とか、ほぼ皆無ですから。そういう状況を見るにつけ、「もっとがんばらなきゃ!」って思うんです。僕は還暦過ぎのおじいさんですけど、この風潮は絶対に変えなきゃいけない。そういう気持ちをずっと持ち続けてるからこそ、「LONDON NITE」を35年も続けることができたのかもしれないですね。

完全燃焼するまでずっと続けていきたい

──12月19日にはイベントの35周年を祝して、東京・LIQUIDROOMにて「The 35th Anniversary LONDON NITE X’mas Special 2015」が開催されます。

年末のライブは今年で25回目になりますね。毎年いろんなバンドに出演してもらってきたんですけど、今年もイベントにゆかりのあるバンドが出てくれることになって。

──BRAHMAN、SHERBETS、THE MAN、THE ZOOT16、LEARNERSなど豪華なバンドが名を連ねています。

大貫憲章(写真提供:KENROCKS)

本当にありがたいなと思いますね。「LONDON NITE」の長い歴史の中で出会った素晴らしいバンドばかりなので、彼らと一緒に35周年を迎えられるのが自分としても本当にうれしくて。普段夜遊びしない人たちも足を運んでもらいやすいように、当日は開演も15時と早めの時間になっているので、ぜひとも皆さんいらしていただいて音楽漬けになってほしいですね。

──では最後に、35年目以降の「LONDON NITE」について抱負を聞かせていただけますか。

これまで培ってきた関係性は大切にしつつ、若いバンドやDJとどんどんつながってロックの魅力を伝えていきたいですね。気力、体力が続く限り、完全燃焼するまで「LONDON NITE」は続けていきたいなと思っています。ロック興しの旅に終わりはないですから。

The 35th Anniversary LONDON NITE X’mas Special 2015
2015年12月19日(土)東京都 LIQUIDROOM
OPEN / START 15:00
BAND:BRAHMAN / SHERBETS / THE MAN / THE ZOOT16 / LEARNERS / BUFFALO’3 / and more
DJ:大貫憲章 / ヒカル / 稲葉達哉 / SHOJI / YOSSY / katchin' / U-ichi / YU-TA / and more
大貫憲章(オオヌキケンショウ)

音楽評論家 / DJ。1951年2月22日生まれ。1971年から音楽評論家として執筆活動を開始する。またNHKラジオ「若いこだま」への出演を皮切りに「全英TOP20」「サウンドプロセッサー」「ロックディメンション」といったラジオ番組のDJやTVK「ミュートマ・ワールド」のVJなどを担当。現在自らがDJを務める番組「Kenrocks Nite - Ver.2」がInterFM897にて毎週木曜日23:00より放送されている。1980年からロック系クラブイベント「LONDON NITE」を新宿ツバキハウスにてスタート。以降、「ロックで踊る」をテーマに掲げ35年にわたり同イベントを開催している。2015年12月19日には東京・LIQUIDROOMにて「LONDON NITE」の35周年イベント「The 35th Anniversary LONDON NITE X’mas Special 2015」が行われる。