音楽ナタリー Power Push -「LONDON NITE」35周年特集
「ロック興しの旅は終わらない」大貫憲章が語るロンナイの35年とこれから
曲に合わせて吉川晃司がダンスの練習
──「LONDON NITE」には藤原ヒロシさんをはじめ、のちの東京カルチャーを牽引するそうそうたるクリエイターの方々も遊びに来ていたんですよね。
ああ、ヒロシはしょっちゅう遊びに来てましたね。でも彼はまだ学生だったし、今みたいにファッションアイコン的な存在になるとは思ってなかったですけど。
──当時ツバキハウスで開催されたファッションコンテストで藤原さんが優勝したというエピソードが残っています。
彼はスタイリッシュというか独特のファッションをしてましたね。革ジャンにボンデージパンツで、髪型はリーゼントでしたから。パンクとロカビリーが一緒になったような格好をしていて。ヒロシはファッションコンテストで優勝してロンドンに行ったんですよ。それで帰国してから注目を集めるようになって。彼は行動力がすごかったから、現地でヴィヴィアン・ウエストウッドとかと知り合いになったりして。
──ほかに印象に残っているお客さんはいますか?
吉川晃司くんはすごく目立つお客さんでしたね。彼は、いつも曲に合わせて踊りの練習をしてるんですよ。すごい勢いで足を蹴り上げたりして(笑)。ナベプロ(渡辺プロダクション)の新人らしいみたいな話は聞いてたんだけど、ある日テレビを観てたら彼が歌番組に出てきて、「あ、アイツだ!」って(笑)。あとはTHE BLUE HEARTSを結成する前の甲本ヒロトくんとか。彼はザ・コーツっていうモッズバンドを組んでいて、モッズの連中とよくツルんでました。来日した海外のアーティストもよく遊びに来てくれましたよ。ジョニー・サンダースとかイギー・ポップとか。
──ツバキハウス時代の「LONDON NITE」では海外のアーティストのライブも頻繁に行われていたそうですが。
そうですね。僕がよく覚えてるのはStray Catsのライブ。確か1時間半近く演奏したのかな。「涙のラナウェイ・ボーイ」(原題:「Runaway Boys」)とかヒット曲をバーッとやって最後にまたヒット曲をやって締めるみたいな構成だったんですけど、途中で誰も知らないようなカントリーとかブルースのカバーばかり立て続けに演奏し始めて。
──バンドのルーツになっているような曲を。
最初は盛り上がっていたお客さんも、あまりにマニアックな曲ばかり彼らが演奏するものだから途中から座り込んでしまって。でもメンバーはそういう状況にもかかわらず黙々と演奏を続けてるわけです。最初は僕もびっくりしたんですけど、いわゆる営業モードじゃなくて、自分たちのコアな部分を知ってもらいたいという気持ちで演奏してるんだろうなということに途中から気付いて。そういう意味では、すごく貴重なライブを観ることができたなと思いますね。
自然と新陳代謝していった客層
──イベントを続けていく中で客層は徐々に入れ替わっていった感じですか?
中にはずっと遊びに来てくれるお客さんもいましたけど、イベントを続けていくうちに自然と新陳代謝していった感じで。僕も細かく客層の変化をチェックしてるわけじゃないから具体的にどう入れ替わっていったのかはよくわからないです。ただ僕自身はイベントをスタートしたときから変わらず、どんなお客さんにも楽しんでもらおうと思って、その時々でみんなが盛り上がれるような曲をかけるようにはしていました。
──「ロックで踊る」というイベントのテーマが根付いてきたと感じられたのは、どのあたりの時期になりますか?
スタートから1年ぐらい経って集客が安定してきた時期ですかね。みんな違和感なく踊ってくれるようになったなって。最初の2カ月とはえらい違いですよ(笑)。80年代の中盤ぐらいには、すっかり根付いたんじゃないですかね。その頃にはツバキハウス以外でも、いろんなハコでロック系のクラブイベントが開催されるようになって。ロカビリーやネオアコとかジャンルに特化したイベントをやる人たちも出てきましたね。
──その後、「LONDON NITE」は1987年のツバキハウス閉店以降、幾つかのお店を経て、2011年まで新宿のCLUB WIREを拠点に開催されることになりました。
CLUB WIREでやってた時期が一番長かったですよね。たぶん20年近くやったのかな? でも風営法の影響でCLUB WIREが閉店しちゃって、「LONDON NITE」を一旦やめざるをえなくなっちゃったんです。もちろん自分としては続けていきたかったんですけど、一緒にやってるDJたちに今後どうしていきたいかということも確認しなくちゃいけなかったんで。その結果、「一緒にやっていきましょう」と言って残ってくれたのが今のメンバーなんですよ。そこからいろんなお店を転々としつつイベントを続けて今に至るっていう感じなんですけど。
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- Contents Index
- 大貫憲章インタビュー
- 「LONDON NITE」35周年に寄せて
The 35th Anniversary LONDON NITE X’mas Special 2015
- 2015年12月19日(土)東京都 LIQUIDROOM
OPEN / START 15:00 - BAND:BRAHMAN / SHERBETS / THE MAN / THE ZOOT16 / LEARNERS / BUFFALO’3 / and more
- DJ:大貫憲章 / ヒカル / 稲葉達哉 / SHOJI / YOSSY / katchin' / U-ichi / YU-TA / and more
大貫憲章(オオヌキケンショウ)
音楽評論家 / DJ。1951年2月22日生まれ。1971年から音楽評論家として執筆活動を開始する。またNHKラジオ「若いこだま」への出演を皮切りに「全英TOP20」「サウンドプロセッサー」「ロックディメンション」といったラジオ番組のDJやTVK「ミュートマ・ワールド」のVJなどを担当。現在自らがDJを務める番組「Kenrocks Nite - Ver.2」がInterFM897にて毎週木曜日23:00より放送されている。1980年からロック系クラブイベント「LONDON NITE」を新宿ツバキハウスにてスタート。以降、「ロックで踊る」をテーマに掲げ35年にわたり同イベントを開催している。2015年12月19日には東京・LIQUIDROOMにて「LONDON NITE」の35周年イベント「The 35th Anniversary LONDON NITE X’mas Special 2015」が行われる。