Little Glee Monsterかれん&アサヒインタビュー|「ヴァニタスの手記」OPテーマで挑んだ新たな試み

Little Glee Monsterの19枚目のシングル「Your Name」がリリースされた。

表題曲はテレビアニメ「ヴァニタスの手記(カルテ)」第2クールのオープニングテーマで、“愛することは名前を呼ぶことである”というメッセージが込められたラブソング。さらにシングルには彼女たちも音源化を熱望していたレミオロメン「3月9日」のカバーや、昨年12月に大阪・フェスティバルホールで行われたツアー「Little Glee Monster Live Tour 2020→2021 >BRIGHT NEW WORLD<」最終公演のライブ音源も収められている。

音楽ナタリーではメンバーを代表してかれん、アサヒにインタビュー。現在は長期静養に専念している芹奈を含む5人が参加したシングルへの思いを、活動とプライベートの近況も交えながらたっぷり語ってくれた。

取材・文 / 川倉由起子撮影 / 須田卓馬

“再出発”という気持ちで1年をスタートさせた

──年明けの東京・中野サンプラザホール公演(「Little Glee Monster "BRIGHT NEW WORLD PARTY 2022"」)が2日間中止となりました。その後、長期静養を発表した芹奈さんには焦らず体を休めてほしいと願うばかりですが、お二人はライブを中止にせざるを得ない状況下でどんなお気持ちでしたか?(参照:Little Glee Monster芹奈が長期静養へ

アサヒ 中止自体もそうですし、開催ギリギリに中止を発表してしまったことは皆さんに本当に申し訳なかったなと思っています。その分、今年は4人でできることを精一杯がんばっていきたいです。

かれん アサヒと同じで、ファンの皆さんがライブを楽しみにしながらいろいろ準備したり、待ってくれていたりしたのにそういう決断になってしまい、本当に心苦しかったです。4人でなんとかできないかと、こちらもギリギリまで話し合って可能性を探ったんですが、残された時間を考えると難しくて。その分……じゃないですが、今年は今まで皆さんにもらった恩を返していけるように活動をしていきたいなと思っています。

左からかれん、MAYU、manaka、アサヒ。

左からかれん、MAYU、manaka、アサヒ。

──「5人でステージに立ちたい」という気持ちも強かったんでしょうか?

かれん そうですね。

アサヒ 5人で回っていたツアーの最後のアフターパーティという位置付けだったので。

かれん 残念ではありましたが、「また新たにみんなでがんばっていこう」と話し合って今年1年を始められましたし、本当に今は“再出発”という気持ちが強いです。

「これ、リトグリ!?」とざわつく視聴者

──2022年の第1弾シングル「Your Name」は、「透明な世界」(2021年12月発売)に続いてアニメのテーマソングです。

かれん 「ヴァニタスの手記」という作品は今回初めて知って観させていただいて、パリの景色を描いた作画もきれいだし、アニメ全体の世界観も本当に素敵だなって。楽曲にはそのイメージに寄り添うような、今までの私たちにはなかったヨーロッパっぽい要素も入っているので、また新たなリトグリが生まれたなと思います。

──「ヴァニタスの手記」は19世紀のパリを舞台にした“スチームパンクファンタジー”ですね。どこか物悲しくミステリアスなサウンドと、エフェクトがかかった皆さんのボーカルが、今までになく新鮮です。

かれん アニメで曲が流れたときに、リトグリのファンの方もそうじゃない方も「これ、リトグリ!?」と驚いていて。そういう反応が多くて、新しい姿を見せられたかなと思ってとてもうれしかったです。

──「透明な世界」のときもそういう反響が多かったとお伺いしました。「リトグリって言われなきゃ気付かない」と(参照:Little Glee Monsterアサヒ&manakaインタビュー)。

かれん 何かのテーマソングを歌うときは、その作品の雰囲気に合わせて楽曲を書いてもらうことが多くて。タイアップをさせていただくことで私たちも新たなジャンルにチャレンジできているので、そういう機会はすごくありがたいなと思います。

アサヒ しかも今回は、シングルのアートワークや衣装もパリっぽいビンテージな世界観で。

かれん みんな、全身真っ黒。

アサヒ 歌だけじゃなく、ビジュアル面でもアニメの世界に寄り添って作品を作れたのかなと思います。

かれん サウンドも、アコーディオンの音色が古きよきパリを演出しているのかなって。サビ前のアコーディオンでグッと引き込まれるというか、そこで曲の雰囲気が一気に変わりますね。

かれん

かれん

manaka

manaka

エフェクトをかけることに抵抗はない

──それにしても、リトグリがここまでがっつり声にエフェクトをかけるのは初めてですよね。

かれん そうなんです。すごく新鮮でした。いつもの自分たちと違う表現というところで、ライブで歌うのも楽しみだなって。

アサヒ 当たり前ですが、レコーディングのときは普通に歌っていたので、完成した音源を聴いたときはびっくりしました。しかもハモリにもエフェクトがかかっていて、「ライブで歌うとどんな感じになるんだろう?」と不思議で。

──今まで生の声を大事に届けてきた皆さんですが、正直、エフェクトに抵抗はなかったですか?

かれん 全然なかったです。曲によってはそういう表現を取り入れてもいいなとずっと思っていたけど、今までタイミングがなくて。ライブでエフェクトをかけながら歌う曲はこれまでないですし、個人的には新たな試みに挑戦できることがうれしいです。

アサヒ 私も抵抗はまったくなかったですね。新しい歌声をファンの皆さんに届けられるという喜びだけでした。

──レコーディングで特に意識したところは?

かれん 前回の「透明な世界」に続き、そこまで張り上げて歌う感じではないのかなと。裏声をいかにきれいに響かせられるか……というのを私は気を付けて歌いました。

アサヒ 確かに少し淡々と歌うというか、すごく感情を込める感じでもなかったです。その絶妙なラインが難しいなと思いながら、がんばって歌いました。

かれん 完成版を聴いたときは、エフェクトをかけるという新たな試みの中でみんなの歌の個性がちゃんと出てるなって。

アサヒ 私は、1番Aメロの前のかれんのコーラス。「アーアー」って言うところが妙に好きです(笑)。

かれん あはははは。そこなんだ(笑)。

愛を伝えるってシンプルなこと

──「Your Name」は歌詞の意味を深く読み解きたくなるラブソングですが、皆さんはどう受け止めましたか?

かれん 私はサビの歌詞にグッと来ました。「愛すべきことは 何があるのだろう その名をきっと1回でも多く呼ぶこと」というフレーズは、初めて見たときにすごいパワーワードだなと感じましたね。

アサヒ 優しい言葉もたくさん詰まっているなと思います。「この手はきっと 1回でも多く拭うこと その涙を その為にあった」の部分とか、温かくて愛がこもっている歌詞だなって。

──共感する部分はありましたか?

かれん 名前を呼ぶということは普段何も考えずにやっている行動かもしれないけど、“愛を伝える”ってそれくらいシンプルなことでいいのかもしれない。1回でも多く名前を呼ぶことが大事かもしれない……という考えはすごくいいなと思いました。

アサヒ “愛”というと難しく考えがちだけど、名前を呼ぶ大切さを改めて気付かされましたね。

──たくさんの人と仕事で関わる2人は、誰かの名前を呼んだり、逆に呼ばれたりする機会も多いですよね。“名前”について日頃感じることはありますか?

かれん 初めて会うスタッフさんがメンバーの名前を1人ひとりちゃんと言ってくれるとうれしいですね。関心と愛を持って歩み寄ってくれているなと感じます。

アサヒ 確かに名前を呼ばれると、集中力が高まる気がする。最初に名前を言ってから話をされると、あとに続く言葉も入りやすくなるなと思います。

──ちなみにリトグリのメンバー同士は、出会ったときから呼び捨てだったんですか?

かれん いや、最初は「ちゃん」付けでしたね。「アサヒちゃん」って(笑)。

アサヒ 「かれんちゃん」って(笑)。いつから呼び捨てになったんだろう?

かれん 覚えてないな(笑)。自然と? みんなで「“ちゃん”付けはやめよう」と話し合ったのかな?

アサヒ どうだろう? でもオーディション時代は確実にみんな“ちゃん”付けだった。懐かしいね(笑)。

左からかれん、アサヒ。

左からかれん、アサヒ。

──歌詞に関連して、2人にとって「愛する」とはどういうことだと思いますか?

かれん お、難しい質問ですねー。

アサヒ 私は思いやりを持つことだと思います。

かれん 確かにそうだ。友達や家族に対して。

アサヒ メンバーに対してもそう。みんなに当てはまると思う。大切な人だからこそ、その人の気持ちを考えて行動したくなる。

かれん 私も少し考えが似ていて、相手を尊重することかなと思います。友達にしろ、恋人にしろ、家族にしろ、“親しき中にも礼儀あり”じゃないけど、近しい存在だからこそ甘えるんじゃなくて、今アサヒが言ったように思いやりを持って人間関係を築いていくのが愛かなって。

──なるほど。普段、活動をする中でメンバー愛を感じる瞬間はありますか?

かれん たくさんあります。

アサヒ ライブで自分の調子が悪いときに別のメンバーががんばってくれたり、フォローし合えたりするのはいいなと思います。ライブのMCでつまずいたときに助け舟を出してくれたり、そういうふとした場面で感じますね。