LISACHRIS×Maika Loubté対談+ゲスト・鎮座DOPENESS&lIlI交えたインタビューでコラボEPを紐解く

LISACHRISとMaika LoubtéによるコラボEP「Hana炎」が配信リリースされた。

「Hana炎」はLISACHRISが手がけたトラックをもとに、2人が9カ月におよぶ共同作業を経て完成させた作品。Maikaのクールなボーカルと、ゲストである鎮座DOPENESSの熱を帯びたラップの対比が印象的な「Hana炎 feat. 鎮座DOPENESS」や、MaikaとLISACHRIS、そして2人目のゲスト・lIlIのそれぞれ異なるボーカルが溶け合うエレクトロナンバー「emoh feat. lIlI」など全4曲が収められている。

音楽ナタリーでは、LISACHRISとMaikaに取材を実施。2人の出会いから、お互いにシンパシーを感じるポイント、「Hana炎」の制作エピソードを聞いた。また特集の後半には、本作のフィーチャリングゲストである鎮座DOPENESSとlIlIを交えたインタビューも掲載する。

取材・文 / 小野田雄撮影 / Yuki Kawashima

LISACHRIS&Maika Loubtéインタビュー

スタジオでのセッションから生まれたコラボEP

──お二人ともナタリー初登場ということなので、まずはそれぞれの近年の活動から聞かせてください。Maikaさんは2019年のアルバム「Closer」でご自身の内面を描き、続く昨年のアルバム「Lucid Dreaming」では夢と現実のマージナルな領域を表現してみたりと、エレクトロニックミュージックを絵筆のように使われていますよね。

Maika Loubté 毎回、アルバムを作り終えるとやり切った気持ちになって、次の作品を作るときに新たな挑戦をしたくなるんです。だからエレクトロニックミュージックが基軸ではありつつ、自分のスタイルやイメージ、ジャンルに囚われず、挑戦したいことを自由に正直に形にした結果が「Closer」や「Lucid Dreaming」といった作品に表れているんだと思います。

──一方のLISACHRISさんはビートメイクやラップ、ボーカルだけでなく、ギターを演奏したり、はたまたガレージパンクバンド・Elto Klinhertzを結成したりと、表現の幅がどんどん広がっている印象を受けます。

LISACHRIS もともと私は学生時代にジャズバンドや吹奏楽でサックスを吹くところから音楽を始めたので、ここ何年かでまた楽器を演奏するようになったのは昔に戻っていってるような気がするんです。

──ジャンルや形態に囚われず、音楽を生み出し続けてきたお二人による今回のコラボレーションは端から見て意外に感じました。

Maika Loubté 意外かな?

LISACHRIS そうかも。

Maika Loubté (笑)。もともとはとあるアパレル系の音楽イベントでご一緒して、そこでお互いのInstagramをフォローし合ったんです。それで「LISACHRIS、カッコいいなあ」と思っていたら、去年LISAさんのほうから「一緒にスタジオに入りませんか?」と突然メッセージをくれて。そのときは私も意外に感じたんですけど、面白そうとしか思わなかったので具体的な話はしないまま、ただただ誘われるがままにスタジオに遊びに行って。そうしたら、なんか波長が合ったというか、嘘偽りなく、取り繕うことなく、LISAさんと接することができたんです。そこから時間をかけて今回のEPを出すところまでこぎ着けたという流れですね。

Maika Loubté

Maika Loubté

──LISAさんはなぜMaikaさんを楽曲制作に誘ったんですか?

LISACHRIS 去年の夏頃、私は絶望感を味わっていて、その時期に聴いていたMaikaさんの歌声や曲から伝わってくるヴァイブレーションに魂が癒やされたんです。だから次に何か作品を出すときは、自分や人を癒やすような作品を作りたいなって。そう思って、Maikaさんをお誘いしました。

Maika Loubté そして呼ばれたスタジオに行ってみたら、LISAさんが世間話をしつつ「今、こういう曲を作ってて」と、爆音でトラックを聴かせてくれて。私がその場で衝動的に「ちょっと歌ってもいい?」と、そのトラックに対してメロディを乗せてみたんです。それを3曲分やってみたのかな? そのときのやり取りは、私の中にあったLISACHRISのイメージがいい意味で裏切られる瞬間だったんですよ。

──というのは?

Maika Loubté 私は彼女のことをDJとして認識していたし、ヒップホップが揺るぎない主軸にあると思っていたんですけど、私と仲がいいYuksen Buyers HouseのメンバーとElto Klinhertzというバンドをやっていたり、最近でもギターでアブストラクトなフレーズを弾いている動画をSNSに上げていたりして、意外にバンドマンだったというか、不思議な人だなって。でも、一貫しているのは、誰にも媚びてない感じ。だからこそ信頼できる人だなと思っていたし、それに加えて、そのときに作っていた曲はすごくポップでグッと来るトラックだったこともすごく新鮮に感じたんです。

──音楽家らしく、最初のコミュニケーションがスタジオでのセッションだったわけですね。LISAさんはMaikaさんとのセッションはいかがでした?

LISACHRIS Maikaさんは即興で歌ってくださったメロディも素晴らしければ、人間的にもすごくしっかりしていて。そのあとに彼女に関わらせていただく中で、音楽の伝え方、広げ方やメンタルの面でもたくさんアドバイスをいただきました。

Maika Loubté そんなこと初めて言われたよ(笑)。

LISACHRIS 関係ないけどMaikaさんって、さそり座だっけ?

Maika Loubté そう、さそり座の女。さそり座は警戒心MAXって言われているんですけど(笑)、LISAさんに対しては素直でいられたんですよ。

聞かされていなかった鎮座DOPENESSの参加

──本格的な制作にはどのように取りかかっていったんですか?

Maika Loubté 後日、スタジオで録ったトラックを一旦送ってもらって、私のほうで歌を思いつく限り入れる作業をしていきました。最初は「Hana炎」の歌のパートを作って、それをLISAさんに送って、メールベースでやり取りして。あとは用事もないのに2人で井の頭公園に行ったり、よく一緒に遊んだりもしましたね。その合間に曲の話をして、「ああしよう」「こうしよう」「いいね」みたいなやり取りをする期間が何カ月も続いたんですけど、ある日、LISAさんから「『Hana炎』に鎮座さんのラップが入りました」と連絡が来て「え、マジで?」って(笑)。

LISACHRIS Maikaさんに鎮座さんのことは言ってなかったし、鎮座さんにもMaikaさんとの曲だとは伝えずにトラックを送っていたから、怒られたらどうしようとビクビクしてました(笑)。

Maika Loubté 鎮座さんって、歌心ある……と形容するのもおこがましいんですけど、唯一無二のラップをされていて。私も大好きだから、LISAさんからその話を聞いて「いいじゃん!」って。

──LISAさんが鎮座DOPENESSさんにお願いしようと思ったのはなぜ?

LISACHRIS 私がイベントでライブをやったときに、鎮さんが来てくださって。そのとき「これだと思う曲を送って」と言ってくださったんです。恐らく、鎮さんはヒップホップのビートが来ると予想していただろうし、私もそういうビートを送る気満々だったんですけど、私の中でこれだと思う曲がいくつかあって、その中の1曲が「Hana炎」だったんです。

LISACHRIS

LISACHRIS

──「Hana炎」は王道のヒップホップというより、ロック的なニュアンスが織り込まれた曲ですよね。

LISACHRIS 確かに。これはロックですよね。

Maika Loubté 展開も独特ですしね。

LISACHRIS 最初はヒーリング的な曲をイメージしていたんだけどね(笑)。

Maikaのリリックにぶっ飛んだ

──「Hana炎」というタイトルは最初から付けられていたんですか?

Maika Loubté 私が最初にトラックを聴いたときにはすでに付いていましたね。

LISACHRIS そう。これは私が花火大会に行ったときに作った曲なんですよ。

Maika Loubté その話は曲を作ったあとから聴いたんですけど、歌詞を書いて、歌を入れる際、そのタイトルから強い印象を受けました。

LISACHRIS 「天井から / 降り注ぐ絵」というMaikaさんの一節にはぶっ飛びましたね。

Maika Loubté でも当初はもっと涼しい、冷たい印象の曲だったんですよ。そこに鎮さんが加わったことで、温度が一気に上がった気がして。

LISACHRIS そう言えばMaikaさんが歌詞を送ってきたときに、「歌詞暗すぎワロタ」ってメッセージが付いていたもんね。

Maika Loubté そうそう(笑)。だから、私が担っているパートが陰だとすると、鎮さんは陽。

LISACHRIS それを受けて、私が歪み系のギターを入れたことで、全体として明るくなったと思います。