LiSA「残酷な夜に輝け」インタビュー|全身全霊を懸け歌う「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」主題歌 (2/2)

梶浦由記は悲しみを、LiSAは希望を

──「鬼滅の刃」におけるLiSAさんと梶浦さんのタッグは「from the edge」(「テレビアニメ『竈門炭治郎 立志編』」エンディングテーマ)に始まり、「炎」(劇場版「無限列車編」主題歌)、「明け星」「白銀」(テレビアニメ「無限列車編」オープニングテーマ / エンディングテーマ)と続いてきました。以前のインタビュー(参照:LiSA「明け星 / 白銀」インタビュー)では、「明け星」は梶浦さんの色に染まろうとして、「白銀」は自分自身のまま向かっていったとお話されていましたが、「残酷な夜に輝け」はいかがでしたか?

さっきお話ししたように、梶浦さんは悲しみを悲しみのまま表現してくださって、私は希望を表現する側だと思いつつも、曲のパートによってその立場が切り替わる部分もあるんですよね。例えばサビでは自分自身だけど、「匂い立つ闇から生まれた」からは梶浦さんになってみたり。私は「鬼滅の刃」を読みながら、よく「自分が同じ立場になったときに、鬼にならない選択肢を取れるか?」と考えるんですが、ある意味それと同じように、紙一重な部分があるかもしれません。そうした揺れ動きが、1曲の中で見えるといいなと思っています。本編を観てからは、「夢見ていたんだ 君が側にいて」のパートで浮かぶイメージが変わりました。聴くときの心情やタイミングによって、鬼側にも鬼殺隊側にも、そして自分にも思いを寄せられる、そんな曲だと思います。

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──「紅蓮華」の頃から数えると6年の時が経ちましたが、「今のLiSAだから歌えるアニメ『鬼滅の刃』シリーズの主題歌」について言語化するとしたら?

炭治郎は最初の頃から比べると、すごく強くなっていますよね。私も同じように、「紅蓮華」の頃は必死だったんです。……今も必死ですけど(笑)、当時は無防備な必死さがあったというか。今は少し落ち着いてきたし、歌も荒々しく感情をぶつけるというよりは、呼吸や感情のコントロールを楽曲の中でできる筋肉が付いた。炭治郎と同じように、私も成長していると感じます。

──これまで5曲の「鬼滅の刃」主題歌を歌ってこられましたが、LiSAさんの中で「鬼滅の刃」の主題歌に共通するもの、また歌う際に必要なものはなんだと思いますか?

“戦い続ける気持ち”ですね。

LiSA
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LiSAが印象に残った場面は?

──Aimerさんの歌う「太陽が昇らない世界」も主題歌として映画を盛り上げていますが、お聴きになっていかがでしたか?

Aimerちゃんの曲も、本当にすごかったです! Aimerちゃんと話したときに「映像を見ながら歌って、すごく気持ちが盛り上がりました」と言っていましたね。まさにAimerちゃんの歌が、セリフや炭治郎たちの勢いと絡み合っていくような感覚がありました。

──Aimerさんもこれまでに梶浦さんの楽曲を数多く歌ってこられましたが、「残酷な夜に輝け」については何かおっしゃっていましたか?

「難しい歌ですね。どうやって作ったか知りたいです」と言っていました。研究熱心な子なので(笑)。

──なるほど(笑)。LiSAさんが映画をご覧になって、特に印象的だったシーンは?

印象的なシーンしかないので難しい! けど……炭治郎と猗窩座が邂逅するシーンは、すごく心に残りました。猗窩座に出会い、因縁の対決が始まる。花江(夏樹)さんの演技が本当にすごくて……私も叫びたいくらいでした。観てもらったら絶対に伝わると思うのですが、「鬼滅の刃」という作品は、絵も演技も主題歌も劇伴も、関わってる全員が作品に対して敬意を払い、命を懸けて臨んでいるんです。「この素晴らしい作品を絶対に届けなくてはならない。絶対に誰ひとりとして手を抜かない」という覚悟で、全員で無限城に向かっていく。そんな気迫を、本編を観てすごく感じました。

LiSA
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自分の限界を試してみたい

──LiSAさんが5月に日本武道館で行ったソロデビュー14周年記念ライブ「LiSA LiVE is Smile Always~RiP SERViCE~」では「明け星」が1曲目を飾り、「炎」はストリングスを交えて披露され、アニメ「鬼滅の刃」シリーズの楽曲が重要な役割を果たしていた印象を受けました。

それは正直たまたまで、特別な意図は何もなかったんです。でも私はライブを作るときに自分の気持ちと向き合うところから始めるので、無意識に「残酷な夜に輝け」を見据えていた部分もあるかもしれませんね。今の私は、来年4月にソロデビュー15周年を迎える前に、自分の限界を試してみたいというモードでいます。新しい形を作るために、1回常識を崩したい。100点を取れる方法を知っているけど、それをあえて使わないようにするというか。

──100点を取ろうと思えば取れるけど、あえて違うアプローチを試す?

はい。いつも自分にハードルを課していないと、活動を続けていくのは私にとってはけっこう難しくて。ちゃんと自分自身を知ったうえでソロデビュー15周年イヤーを祝うために、一度自分の限界を見たいと思ったのが「RiP SERViCE」というライブでした。そこで最初に歌う曲は、絶対に「明け星」だと思ったんです。時を経て、梶浦さんが描いてくださった「明け星」の中に、今の自分の表現したいことがありました。

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──原点に帰って、限界をどんどん超えて、新たに生まれた自分と15周年を迎える。本当にLiSAさんにはいつも、飽くなき精神とエネルギーを感じます。

本当ですか? 私は「みんなはどうやって、毎日モチベーションを保って過ごしてるんだろう?」と思っていますよ(笑)。最近気付いたんですけど、私はすごく心配性なんですよね。今この瞬間にきちんと取り組まないことで、将来の自分が後悔することが怖い。そういう不安がずっとある気がします。

──一瞬一瞬を大事にしたい。ある意味“もったいない精神”というか。

そうです。夏休みの宿題は受け取った瞬間に手をつけて、夏休み前に終わらせるタイプでした(笑)。

──(笑)。15周年に向けては、さまざまな企画を用意しているんでしょうか?

はい。今年のLiSAの活動のテーマは「PATCHWORK」で、6月に北米ツアーをやって、夏はフェス出演。秋から来年までツアーを回って、4月に15周年を迎えます。

──もっと長く活動されているような感覚があったので、個人的には「まだ15周年なんだ」と、少し意外に感じました。

私は「紅蓮華」が6年前と聞いてびっくりしたんですよね。10周年も作品と一緒に迎えたし、気付けばキャリアの半分近くをアニメ「鬼滅の刃」シリーズと一緒に過ごしているんだなって。「紅蓮華」リリース以降に過ごした時間が、すごくあっという間に感じます。

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プロフィール

LiSA(リサ)

6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンドGirls Dead Monsterの2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。2014年1月に初の東京・日本武道館ワンマン「LiVE is Smile Always ~今日もいい日だっ~」を行い、翌2015年1月には日本武道館2DAYS「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~」を成功させた。2019年4月にシングルとしてリリースしたテレビアニメ「鬼滅の刃」のオープニングテーマ「紅蓮華」が大ヒットを記録し、同年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2020年には映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌「炎(ほむら)」で「第62回日本レコード大賞」大賞を受賞した。2024年9月から全国8都市を回るアリーナツアー「ソニー銀行 presents LiSA LiVE is Smile Always~COCKTAiL PARTY~ [SWEET&SOUR]」を開催。2025年3月にテレビアニメ「俺だけレベルアップな件 Season 2 -Arise from the Shadow-」のオープニングテーマ「ReawakeR(feat. Felix of Stray Kids)」を収録したシングルをリリースし、5月に日本武道館でソロデビュー14周年ライブを行った。7月に映画「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章」の主題歌「残酷な夜に輝け」をシングルとしてリリース。