ナタリー PowerPush - Large House Satisfaction

都会の怒りをワンルームで爆発させる3人組

ちっちゃいアンプを並べて、3人で顔を付き合わせて作曲してる

──曲作りに関しては、どのように進めることが多いですか?

賢司 曲作りは、要司の家でちっちゃいアンプを並べて、ああでもない、こうでもないって言いながらやっていくスタイルですね。たまに大きなスタジオで作業をすると、3人の距離が遠くて、話したりできないから逆にやりにくかったりして(笑)。

──でも、こんなにラウドなアルバムの曲作りを、自宅でちっちゃい音でやってるっていうのも面白い話ですよね。

要司 考えてもみなかったけど、そういえばそうですね(笑)。でも、どうしてそういうことになっているのか、自分たちでも説明がつかない。

賢司 うーん。あえていうなら、このアルバムのような激しいテンションで日常を生きてる人っていないと思うんです。だからこそ、3人が顔を付き合わせる近い距離から渦を作り出して、それを作品に反映させているということなのかもしれないですね。

リアリティを感じるのは小さな怒り

──歌詞はダークなテンションというか、怒りや退廃的な言葉がつづられていますけど、それはこの3人が生み出す渦の原動力だったりもするんでしょうか?

要司 歌詞は結局のところ僕が毎日感じている鬱憤の塊だったりして、しかもそれは誰に共感してもらいたいというようなものでもない。ただそういう感情が言葉として表れてしまっている感じ。

──生活していて、どんなときに怒りの感情が湧き上がってくるんですか?

インタビュー写真

要司 ニュースで報道されている大きな犯罪に対する怒りみたいなものももちろんありますけど、自分にとっては日々生活していて出会うこと。例えば、順番を守らないやつ、電車で横入りするおばさんとか(笑)。そういう些細なことが溜まりに溜まって、歌詞に出てくるんです。だから歌詞を書くときはシラフじゃいられなくて、酒を飲みながら書きます。そうすると過去にあったことがフラッシュバックしてきて、怒りが言葉に変換されるんです。

──そういう怒りって、人であふれかえる都会生活ならではのストレスという気もします。

賢司 3人とも東京生まれ、東京育ちなんで、それはそうだと思いますね。日常生活における小さな怒りは誰にもあると思うし、僕らがリアリティを感じるのはそういう小さな怒りだと思っています。

要司 あと歌詞に関していえば、3月に出したシングルの「Traffic」では、韻を踏んだり、言葉をリズムに乗っけて遊んだりもしているんですけど、その部分ではヒップホップグループの降神からめちゃくちゃ影響を受けていたりもして。

──このアルバムでは「愛脳」という曲で「愛脳」と「I Know」を引っかけたり、「尻軽」と「Silly Girl」を掛け合わせていたりしますもんね。

要司 そうですね。英語の発音で日本語にも聞こえる言葉を使ったり、そういう部分でも(降神からの)影響は大きいと思いますね。

──Large House Satisfactionの音楽は、グループ名に反して日常の些細な怒りを3人がワンルームで増幅して爆発させている、と。

賢司 しかも今回のアルバムは既存の曲も2~3曲あるんですけど、ほとんどは書き下ろしたものなんですね。だから今この瞬間の思い、現在進行形のバンドが表現されたものというか。

──ちなみに、バンド名にある「Satisfaction」(満足)を感じる瞬間って、どういうときだったりします?

賢司 やっぱりライブですかね。ライブでお客さんがたくさん集まって、すごい盛り上がって、打ち上げで乾杯する瞬間が最高だなって思いますね。

要司 うん、俺もやっぱりライブ後の乾杯する瞬間だなー。

田中 僕はライブで盛り上がってる、まさにその瞬間ですね。というのも、僕は全くお酒が飲めないので、乾杯する瞬間っていうのはよくわからないんですよ(笑)。

「Phantom」ミュージックビデオ

Large House Satisfaction(らーじはうすさてぃすふぁくしょん)

小林賢司(B)、田中秀作(Dr)、小林要司(Vo, G)によるスリーピースバンド。高校で同級生だった小林賢司と田中のバンドに、賢司の弟である要司が加入して2005年に結成された。2010年にリリースされたTHE BLUE HEARTSのトリビュートアルバム「THE BLUE HEARTS “25th Anniversary” TRIBUTE」に参加し、「チェルノブイリ」をカバーした。そして2012年3月に1stシングル「Traffic」、9月に2ndフルアルバム「HIGH VOLTEX」を発表。