ナタリー PowerPush - Large House Satisfaction

都会の怒りをワンルームで爆発させる3人組

Large House Satisfactionが最新アルバム「HIGH VOLTEX」をリリース。ナタリーではこれを記念して、メンバー3人にインタビューを行った。

2000年代のロックンロールリバイバル以降のバンドである彼らがアンプで増幅して爆発させるのは、誰もが日々の生活で感じる小さなフラストレーションだという。今回の特集では、そんな感情がどのようにして渦巻くバンドグルーヴに生まれ変わるのか、東京ネイティブのロックンロールトライアングルにその秘密を訊いた。

取材・文 / 小野田雄 インタビュー撮影 / 高田梓

俺らよりカッコいいバンドは観たことない

──新作「HIGH VOLTEX」は攻撃的な勢いが渦巻いているロックンロールアルバムですね。

インタビュー写真

小林賢司(B) ありがとうございます。

──本作は凄まじいテンションの作品に仕上っていると思うのですが、2005年のバンド結成からここまで7年、Large House Satisfactionの歴史は必ずしも順風満帆ではありませんでした。そんな中3人が自信を失ったり、バンドとしての危機を迎えた瞬間は果たしてあったんでしょうか?

賢司 まあ、この7年間は確かにいろいろありましたよね(笑)。でも、ライブをたくさんやってきて、いろんなバンドも観てきて、もちろんそこにはカッコいいバンドもいっぱいいましたけど、心の底には「俺らよりカッコいいバンドは観たことない」って思いがあって(笑)。それは最初から変わらないんですよ。いろんなことがあった7年間でしたけど、その間に「俺ら、ダメだな」って思ったことは1回もないかもしれない(笑)。

小林要司(Vo, G) うん、ないですね(きっぱり)。

田中秀作(Dr) (ちょっと控えめに)……まあ、ないかなあ(笑)。

──はははは(笑)。

賢司 その後、バンドとしてはそれなりに変化はしてきているんですけど、実際のところ、ここまでやってきたこと、そしてこれからやっていきたいことの根本はバンド結成の時点から変わってないんですよ。

──その変わっていない部分というのは?

賢司 言葉では表現しづらいんですけど、あえて言葉にするならパンチ力とパワーがあって、ジャンルや時代に関係ない、強いエネルギーの塊のような音楽ですね。

Large House Satisfactionは腰に来る感じ

──皆さんは、これまでどんな音楽を聴いてきたんですか?

賢司 日本だとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやBlankey Jet Cityを聴きつつ、Hi-STANDARDやその後のGOING STEADYやMONGOL800も通ってきましたし、海外ではLED ZEPPELINやAC/DCなんかも聴いてきましたね。

──3人が20代半ばから後半世代であることを考えると、音楽的にはやはり2000年以降のロックンロールリバイバルの影響が大きかったりします?

賢司 そうですね。THE STROKESとかTHE WHITE STRIPES、JETなんかが出てきたときはすごいびっくりして、「海外からこういうバンドが出てきたなら、日本でもイケるんじゃないかな」とは思った。でもその後、日本は海外ほどのロックンロールリバイバルは起きてないと思っているので、これからかな、と。まあ、仮に日本でリバイバルが起こらなかったとしても、俺らは自分の音楽をやればいいやって。

要司 それも3人とも思ってることですね(笑)。

──はははは(笑)。

賢司 俺らはただラウドなだけでなく、自分たちなりにメロディも重視しているし、誰かの真似をしているわけではなく、自分たちのフィルターを通してものを出すことを心がけていて。

田中 勢いだけ、あるいはただ凝ってるだけなのもイヤだというか、いろんなことをやりたいという意味でワガママな3人だったりもしますし。

要司 それに3人ともロックだけが好きなわけじゃなく、ブラックミュージックの深いグルーヴや特殊なグルーヴが好きだったりするので、それを硬派でハードなロックに組み合わせていったら面白いんじゃないかな、と。そういう意味でグルーヴを重視している点がこのバンドの大きな特徴だと思っていますね。

──わかりやすくいうなら、縦ノリだけじゃなく、横ノリも含まれているのがLarge House Satisfactionだ、と。

要司 そう、腰に来る感じ。

田中 僕の好きなドラマーは、LED ZEPPELINのジョン・ボーナムだったり、ジミ・ヘンドリックスのバンドで叩いていたミッチ・ミッチェル、最近のプレイヤーでは中村達也さんだったり、パワードラマーでありつつ、独特なリズム感を持っている人だったりするんです。けど、グルーヴに関してはそこまで深く考えてなくて、気持ちいいところに落とし込んでいるだけなんですけどね。まあ、でも、あえていうなら、僕は普通のドラマーだと思われたくはないので、このバンドのグルーヴに関していえば、そういう気持ちが一番大きいかもしれないです(笑)。

──このアルバムで、ロックの定型の8ビートで叩いているのは「タテガミ」だけですもんね。

田中 そう。だから、普段叩かない8ビートの「タテガミ」は自分にとって珍しいというか、アルバムの中に8ビートの曲があったほうがいいんじゃないかなって思って叩いたくらいなんですよね。

Large House Satisfaction(らーじはうすさてぃすふぁくしょん)

小林賢司(B)、田中秀作(D)、小林要司(Vo, G)によるスリーピースバンド。高校で同級生だった小林賢司と田中のバンドに、賢司の弟である要司が加入して2005年に結成された。2010年にリリースされたTHE BLUE HEARTSのトリビュートアルバム「THE BLUE HEARTS “25th Anniversary” TRIBUTE」に参加し、「チェルノブイリ」をカバーした。そして2012年3月に1stシングル「Traffic」、9月に2ndフルアルバム「HIGH VOLTEX」を発表。