音楽ナタリー Power Push - 石毛輝(the telephones)×山口一郎(サカナクション)対談

フェス常勝バンド2組の問題意識

未来の音楽に嫉妬したい

山口 フェスがここまで影響力を持つようになると、フェスにマッチしないミュージシャンはいったいどこに行けばいいのかっていう問題もあるよね。例えばテンポが遅いとか、アコースティック形態だとか、歌がないとか。そういうタイプの音楽がどういうルートで世の中に発信されて、その楽しみ方を誰が教えるのか。今はそこが欠落してる気がする。

石毛 そうですね。

山口 俺は未来の音楽に嫉妬したいんだよ。10年後20年後30年後に若いバンドが出てきたとき「うわ、こいつらカッコいいな」って言いたくて。だって自分はいろんな音楽に影響受けて今の音楽を作ってるわけで、ということは未来の音楽には今の自分たちの活動が影響を与えるわけだよね。20年後にラジオから流れてきた曲が「はいはい、なるほどね」ってレベルのものだったらすごく嫌だし、そこには自分の責任もあると思うから。

石毛 自分たちが上の世代から教えてもらったことをちゃんと下の世代に伝えなきゃいけない。そういう時期が来てる気はしてますね。

山口 だからフェスとは違う音楽体験の場所を作る必要があると思ってて。フェスが音楽の入口だとしたら、じゃあその入口からどこに連れて行くのかっていうね。あのさ、俺にとってフェスっていうのは「RISING SUN ROCK FESTIVAL」なんだよね。

石毛 あー、そうか(笑)。

山口一郎(サカナクション)

山口 ライジングサンは「MOON CIRCUS」っていうクラブミュージックのステージもあったりして、そこでロックファンが初めてクラブミュージックを体験したりして。だからサカナクションの音楽=ライジングサンだと思ってるの。要するにデカいステージからアンダーグラウンドなシーンまで表現するスタイルっていうか。

石毛 なるほど。

山口 でも今「MOON CIRCUS」みたいなステージがあるフェスは限られてる。そういう遊び方を知ってる人が少ないから作りにくいんだとは思うんですけどね。あとこの間びっくりしたのが、TOKYO FMでやってる「サカナLOCKS!」でDJの授業やったんだけど、みんなDJって言ったらロックDJしか知らないの。

石毛 時代ですね(笑)。

山口 だから曲が鳴ったらライブのときと同じ動きをするんだよ。でも俺らの世代の人間にとってのDJって違うじゃない? リズムとリズムを混ぜあわせて2つの曲を1つに聴かせて、1時間2時間の長いスパンでストーリーを作って、空間を演出するものでしょう。今の若いリスナーにはそういう感覚がないんですよね。フェスでの機能的なDJしか体験したことがないから。だから俺たちみたいにフェスで戦ってきたミュージシャンが、もっと違った音楽の楽しみ方を提示していかないと、音楽の世界がどんどん狭くなっていくんじゃないかっていう危惧があるんだよね。

石毛 「NIGHT FISHING」(サカナクションがオーガナイズするパーティ。初回は2015年7月に東京・LIQUIDROOMで開催)はどうでした? まさにそういう狙いで始めたわけでしょ?

山口 うん、「NIGHT FISHING」がフェスとは違う意味を持つ、音楽の遊び場になったらって思う。もちろんそれがフェスの一部としてあってもいいと思うけど。

石毛 「NIGHT FISHING」がフェスに出張するの面白いですね。

山口 ミュージシャン自身がそういう空間を提供するってことがこれからの時代必要だと思うから。音楽で交流する場というかさ。

10歳の男の子が「Akufen聴いてます」って

石毛 サカナクションが今度出すアルバム(8月5日リリース「懐かしい月は新しい月 ~Coupling & Remix works~」)とか、リミキサー陣すごく豪華だけど、今の10代の子たちは知らない気がするんですよね。

山口 知らないと思う。でもこないだ「サカナLOCKS!」でテクノの聴き方講座みたいな感じで、Akufenかけながら「皆さん歌の次に何を聴きますか?」「歌がない音楽はどの音を追いかけますか?」みたいなことをやったの。

石毛 おお、すごい(笑)。

山口 そしたら10歳の男の子が「あのラジオ以来Akufen聴いてます」って。

石毛 最高だ(笑)。

左から石毛輝(the telephones)、山口一郎(サカナクション)。

山口 自分が好きなサカナクションがいいって言ってる音楽はいいはず。それで信頼して聴いてみたらAkufenのよさを見つけたと。これって純粋なサイクルでしょ。啓蒙って言うとおこがましいけど、こんな遊び方あるんだよっていう。

石毛 うん、ミュージシャンを好きになってくれたら、そのミュージシャンが何を聴いてたのか一歩踏み込んで知ろうとしてほしいですよね。

山口 だからサカナクションもライブの中にDJタイムを入れたり、インストタイムを入れたりしてて。そしたら最初はどうしていいかわかんなくて棒立ちだった人たちがなんかこう揺れ始めるわけ。実際に地方とかで、例えば四国とかでライブの途中にDJコーナーを入れると、クラブミュージックバージンのお客さんが生まれて初めて横ノリで踊り出すんですよ。

石毛 めっちゃいいっすね。

山口 いきなりじゃないんだけど、2年3年ってツアーやってるうちに、縦ノリからいきなり横ノリに変わるの。こっちも、どうしたらみんな楽しめるようになるのかを考えて、照明暗くすればいいんだとか、低音もっと出せばいいんだとかだんだんわかってくるし。それで、そういう場所を作って、シーンが活性化することでもっと新しいバンドが出てくる気がするんですよ。

石毛 今のセンスを持ったバンドですよね。

山口 しかも日本の音楽をルーツにして自分たちの音楽を作ってるバンドがたくさんいるんであれば、余計に世界とは違う日本の新しいシーンが生まれるんじゃないかなと思うし。

石毛 それがもしかしたらロンドンでパンクが生まれたみたいに、日本から生まれる本当の意味での新しい音楽なのかもしれないですね。

the telephones presents Last Party ~We are DISCO!!!~

  • 2015年11月3日(火・祝)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
    OPEN 9:30 / START 11:30
    <出演者>
    the telephones / サカナクション / THE BAWDIES / 9mm Parabellum Bullet / dustbox / and more

イープラス 2次プレオーダー抽選受付

2015年7月29日(水)12:00
~2015年8月10日(月)18:00

the telephones ニューアルバム「Bye Bye Hello」2015年7月22日発売 / Virgin Records
「Bye Bye Hello」
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初回限定盤 [CD] 3024円 / TYCT-69084 / Amazon.co.jp
サカナクション カップリング&リミックス集「懐かしい月は新しい月 ~Coupling & Remix works~」2015年8月5日発売 / Victor Entertainment
「懐かしい月は新しい月 ~Coupling & Remix works~」
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通常盤 [CD2枚組] 3456円 / VICL-64337~8 / Amazon.co.jp
the telephones(テレフォンズ)

the telephones2005年に埼玉県浦和にて結成されたロックバンド。メンバーは石毛輝(Vo, G, Syn)、岡本伸明(Syn, Cowbell, Shriek)、長島涼平(B, Cho)、松本誠治(Dr)の4人。ポストパンク / ニューウェイブにも通じるダンスロックサウンドで各地のフェスを席巻し、2009年にEMIミュージック・ジャパン(現:ユニバーサルミュージック)と契約。同年7月にアルバム「DANCE FLOOR MONSTERS」でメジャーデビューを果たした。2011年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブ「SUPER DISCO Hits FINAL !!! ~そして伝説へ~」を開催。その後もコンスタントに新作をリリースし、2013年9月にはPOLYSICSと合同で初のヨーロッパツアーを敢行するなど、ワールドワイドに活動を展開する。結成10周年を迎える2015年3月にキャリア初のオールタイムベストアルバム「BEST HIT the telephones」をリリースし、同年5月に東京・日本武道館で単独ライブを開催。同年7月に7thアルバム「Bye Bye Hello」を発表。11月3日のさいたまスーパーアリーナ公演を最後に無期限で活動を休止する。

サカナクション

サカナクション山口一郎(Vo, G)、岩寺基晴(G)、江島啓一(Dr)、岡崎英美(Key)、草刈愛美(B)からなる5人組バンド。2005年より札幌で活動開始。2013年3月には6枚目となるアルバム「sakanaction」をリリースし、バンド史上初のオリコンCDアルバム週間ランキング1位を記録。トップ10にも4週連続でランクインした。幕張メッセ国際展示場9・10・11ホールでの2DAYS公演、大阪城ホール公演を含むアルバムリリースツアー「SAKANAQUARIUM2013“sakanaction”」では約8万人を動員。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に出場を果たした。2015年8月にはこれまでに発表したシングルのカップリング曲や、さまざまなアーティストによるリミックス音源をまとめた作品「懐かしい月は新しい月~Coupling & Remix works~」をリリース。10月より1年半ぶりとなる全国ツアー「SAKANAQUARIUM2015-2016」を開催する。また10月公開の大根仁監督の映画「バクマン。」の映画音楽を担当することも発表している。