音楽ナタリー Power Push - 石毛輝(the telephones)×山口一郎(サカナクション)対談

フェス常勝バンド2組の問題意識

やりたいことと求められてるものの乖離

山口 サカナクションが世の中に出てきたときにも、新しいスタイルのバンドだって言われたけど、でも本当に新しいものは売れないからね。世の中に評価されてる時点でもう新しくないんだよ。

石毛 うん、すごくわかります。

山口 だから今悩んでるのはそこでさ、今でも言われるんだよね、「先進的な曲ください」みたいなことを。タイアップとかでもそう。でも本当に先進的なことをやろうと思ったら、例えば紙をグチャグチャに丸めて、その音をマイクで拾ってディレイかけて「これが音楽です」って言ってもいいわけじゃん。

石毛 求められてるのはたぶん大衆に合わせた先進的・前衛的な音楽なんでしょうね。

山口 だからそこのバランス感覚が優れた人が新しいって言われるんだよ。本当の最先端をやろうとすると、それはロックじゃなくなるから。

石毛 俺はリスナーとしては最先端の、前衛的なものを聴くのが好きなんですけど、自分では作れないんですよね。あと自分がやるならポップミュージックだって決めてるとこもあって。趣味だったらいいけど、そうじゃないなら中世みたいにパトロンがいないと続けていけない。現代音楽は来世からやろうかなって思ってます(笑)。

山口 それで言うと、サカナクションは「グッドバイ / ユリイカ」を出したけどあれはあんまり売れなかったのね。テンポが遅いし派手じゃないから。その次の「さよならはエモーション / 蓮の花」もやっぱりセールスが伸びなくて。バランスを取ってやってきたつもりだったけど、その2枚を出して、自分のやりたいことと世の中に求められてるものが乖離してきてるのがわかった。

左から石毛輝(the telephones)、山口一郎(サカナクション)。

石毛 なるほど。

山口 求められてるのがどういうものかは理解できるんだよ。だから必要なのはそれを作るためのモチベーション、動機なわけで。それで始めたのが「NIGHT FISHING」なんだよね。

石毛 どういうことですか?

山口 外に向けて広く発信していくのは、あの場所に人を集めるためなんだっていう考え方。例えば100万人に向けて曲を作った結果、「NIGHT FISHING」に1000人来て、その1000人の人生が変わったら、がんばった甲斐があるって思える。だから1曲ずつで考えるんじゃなくて、そういう活動全部が自分たちの表現だし、それがロックだなって最近感じてるの。

石毛 なるほど。でも長年続けていくと、同じバランスでやってるつもりでも、実は求められることに応えるほうが大きくなって、自分がやりたいことがうまくやれなくなってきたりしません?

山口 曲だけで表現しようと思うとそうなるよね。そこは難しいとこで。

石毛 the telephonesも「DISCO!!!」って言うのが嫌いなわけじゃないし、そもそも好きでやってたことなんだけど、その先をどう見せるかっていうところで悩んじゃったんですよね。

山口 でも俺、the telephonesがいきなりアコースティックの曲出してもいいのにって思ってたよ。

石毛 超やりたいです(笑)。

山口 ライブとかも去年「RUSH BALL」で観たときかな、「おお、すげえ!」と思ったし。けっこうダブっぽい曲もあったり、サイケな感じもあって。俺「もっとサイケなことやれば」ってずっと言ってたんだよね。

石毛 うん、そういう深いところに連れていけたらいいですよね。

フェス主催者がミュージシャンに提案してほしい

山口 今日はフェスの話をいろいろしてるけど、別にフェスに対してフラストレーションがあるわけじゃないんだよね。でもアイデア求められたらありますよっていうだけで。

石毛 アイデアっていうのは?

山口 要するにフェスっていうものが莫大なお金になるってわかったわけでしょ。何万人も集まるし、それに伴ういろんな利権もある。でもそれに甘んじないで、多様な楽しみ方をちゃんと提示していかないと続いていかないんじゃないのって思うんだよね。

石毛 確かに1日に何十組も出るのにみんなそんなに音楽性が変わんないっていうのもね。もっといろんなステージ作ってもいいのになとは思いますけどね。

山口 あと音響もね。やっぱり音楽を楽しみに行く場所だから、ちゃんといい環境で聴かせてあげたいなと思うし。幕張メッセとかでも2チャンネルだけだから、後ろの人と前の人たちは温度差あるし。できればディレイスピーカー入れて後ろでもちゃんと聞こえるようにするとか。

石毛 サカナクションは幕張のライブでスピーカー何台入れたんでしたっけ?

山口 あのときは300台ぐらい(笑)。

石毛 あははは(笑)。

山口 それはワンマンだったけど、でもフェスだったらもっとできるだろうと思うわけ。主催者側がミュージシャンに対して「この空間で何かやりませんか」っていう提案をしてほしい。これだけスピーカー用意しました。使っても使わなくてもいいですよって。

石毛 それいいですね。

the telephones presents Last Party ~We are DISCO!!!~

  • 2015年11月3日(火・祝)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
    OPEN 9:30 / START 11:30
    <出演者>
    the telephones / サカナクション / THE BAWDIES / 9mm Parabellum Bullet / dustbox / and more

イープラス 2次プレオーダー抽選受付

2015年7月29日(水)12:00
~2015年8月10日(月)18:00

the telephones ニューアルバム「Bye Bye Hello」2015年7月22日発売 / Virgin Records
「Bye Bye Hello」
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初回限定盤 [CD] 3024円 / TYCT-69084 / Amazon.co.jp
サカナクション カップリング&リミックス集「懐かしい月は新しい月 ~Coupling & Remix works~」2015年8月5日発売 / Victor Entertainment
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the telephones(テレフォンズ)

the telephones2005年に埼玉県浦和にて結成されたロックバンド。メンバーは石毛輝(Vo, G, Syn)、岡本伸明(Syn, Cowbell, Shriek)、長島涼平(B, Cho)、松本誠治(Dr)の4人。ポストパンク / ニューウェイブにも通じるダンスロックサウンドで各地のフェスを席巻し、2009年にEMIミュージック・ジャパン(現:ユニバーサルミュージック)と契約。同年7月にアルバム「DANCE FLOOR MONSTERS」でメジャーデビューを果たした。2011年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブ「SUPER DISCO Hits FINAL !!! ~そして伝説へ~」を開催。その後もコンスタントに新作をリリースし、2013年9月にはPOLYSICSと合同で初のヨーロッパツアーを敢行するなど、ワールドワイドに活動を展開する。結成10周年を迎える2015年3月にキャリア初のオールタイムベストアルバム「BEST HIT the telephones」をリリースし、同年5月に東京・日本武道館で単独ライブを開催。同年7月に7thアルバム「Bye Bye Hello」を発表。11月3日のさいたまスーパーアリーナ公演を最後に無期限で活動を休止する。

サカナクション

サカナクション山口一郎(Vo, G)、岩寺基晴(G)、江島啓一(Dr)、岡崎英美(Key)、草刈愛美(B)からなる5人組バンド。2005年より札幌で活動開始。2013年3月には6枚目となるアルバム「sakanaction」をリリースし、バンド史上初のオリコンCDアルバム週間ランキング1位を記録。トップ10にも4週連続でランクインした。幕張メッセ国際展示場9・10・11ホールでの2DAYS公演、大阪城ホール公演を含むアルバムリリースツアー「SAKANAQUARIUM2013“sakanaction”」では約8万人を動員。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に出場を果たした。2015年8月にはこれまでに発表したシングルのカップリング曲や、さまざまなアーティストによるリミックス音源をまとめた作品「懐かしい月は新しい月~Coupling & Remix works~」をリリース。10月より1年半ぶりとなる全国ツアー「SAKANAQUARIUM2015-2016」を開催する。また10月公開の大根仁監督の映画「バクマン。」の映画音楽を担当することも発表している。