音楽ナタリー Power Push - 石毛輝(the telephones)×山口一郎(サカナクション)対談

フェス常勝バンド2組の問題意識

the telephonesが無期限活動休止前最後のライブ「the telephones presents Last Party ~We are DISCO!!!~」を11月3日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで開催する。これを受けて音楽ナタリーでは、the telephonesの石毛輝と、このイベントに出演するサカナクションの山口一郎による対談を企画した。

ロックとダンスミュージックの境界を溶かし、アンダーグラウンドとポップフィールドを自在に行き来する2バンドのフロントマンが今抱える問題意識とは? 対談はフェス文化のあり方から、未来の音楽シーンの形がどうあるべきかまで多岐に及んだ。

取材・文 / 大山卓也 撮影 / 上山陽介

 
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フェスで盛り上がるためにバンドをやってるわけじゃない

山口 前に2人で飲んだのいつだったっけ?

石毛 2カ月ぐらい前ですかね。ひさびさでしたけど。

山口 そのときにも話したけど、the telephonesが活動休止するって聞いて俺は本当に悲しくて、喪失感があって。なんで休止するのか、実はまだ自分の中で納得できてないんだよね。今日はそこを改めて石毛くんから聞きたくてさ。

石毛 そうきましたか(笑)。いろんな理由があるんですけど、このままthe telephonesを続けると楽しさが減ってきちゃうんじゃないかっていう話になったんですよね。

山口 音楽を作る楽しさが減るってこと?

石毛 それはないです。ただ、今はメンバー4人の考えがたぶんちょっとずつ食い違ってきてて。音楽以外のそれぞれの生活とかも含めて。それでみんな悩んじゃったんで、じゃあ長く続けるために思い切って今は休もう、みたいな。

山口 なるほどね。セールスとか動員とか、そういうことが例えば今よりもよかったら状況は変わってたと思う?

石毛 うーん、ゼロじゃない。変わってたかもしれないです。今やっぱりCDは売れなくなってるし、いろいろ難しいところはあるから。

左から石毛輝(the telephones)、山口一郎(サカナクション)。

山口 俺はthe telephonesの活動休止って1つの時代の終焉だと思うんだよね。だってthe telephonesってカッコいいしさ、ライブも盛り上がるし、フェスの動員もすごいし。そのバンドの活動休止をきっかけに、フェスってなんなんだろうとか、音楽との接し方についてとか、そういう議論がもっと起こるべきだと思うんです。だってあれだけフェスで存在感があって、the telephonesが出るからフェス行くって人もたくさんいる状態なのに。

石毛 うん、フェスに出ればお客さんも集まるし、確かに盛り上がるんですよ。でも別にそれを求めてバンドやってるわけじゃないから。どっちかっていうとフェスよりワンマンに来てほしいし、俺らの周りのシーンの面白いイベントにも遊びに来てほしい。ってことをもう何年も言い続けてきて。でも結局シーンの流れを大きく変えるまではいかなかったなっていうのは今思ってます。

山口 まあね。自分たちでイベント企画しても、なかなかお客さん集まらなかったりして。その点フェスはすごく機能的だし、音楽を楽しむ入口としては……。

石毛 めちゃくちゃいいと思いますよ。

山口 うん、今一番人が集まる場所がフェスなのは確かだよね。でもそればっかりになっちゃうのには違和感ある。

石毛 あとミュージシャンが、フェスを意識して曲を作ったりするのがなんだかなって思いもあります。年間スケジュールが決まってて、俺らの場合は春にツアー、夏前にリリース、夏フェス出て秋にツアーと制作。「俺そういうサラリーマンみたいなことしたくなくて音楽やってるはずなんだけどな」って(笑)。そこはスタッフも含めて何回も議論したけど、結局そのループから抜けられなかったんですよね。自分たちがフェス向きのバンドだっていうのも自覚してたから、結局フェス仕様のセットリストを変えられなかったし。

山口 音楽って、“浴びる音楽”と“探す音楽”っていうか、体験の仕方が2種類あると思うの。でも今はフェスに代表されるような“浴びる音楽”のほうにだけ人が集まるようになってる。それが問題な気がしてて。で、その問題について唯一議論できたバンドがthe telephonesだったし、1つ時代に爪痕残そうみたいなつもりで、OGRE YOU ASSHOLEと3バンドで「version 21.1」(2009年から2012年まで行われたライブイベント)っていうイベントを始めたりもしたわけだし。

石毛 あの3バンドはみんな違うことやってたけど、思ってたことは一緒ですからね。どうなんだろ、爪痕残せたのかな。

the telephonesとサカナクションを一緒に聴くと意味合いが変わる

山口 今、バンドやってる若い子たちと話してて「音楽を始めるきっかけは?」って聞くと、日本のバンドの名前を挙げるんだよね。

石毛 多いですよね。それが悪いわけじゃないですけど。

山口 うん、悪いわけじゃない。ただ音楽を始める動機として、フェスで観る日本のバンドだったり、フェス自体の影響がすごく大きいんだなってのは思うわけ。“浴びる音楽”しか与えられてなくて、つまり楽しみ方がディズニーランドと一緒なんだよね。でもそもそも音楽ってそういうものじゃないはずじゃん。

石毛 音楽っていうものの中にもっといろんなカルチャーが混ざってましたよね。いい音楽の中に全部が詰まってた。ファッションだったりその時代の空気だったり。でもそういう聴き方をする人はもう少ないのかも。

山口 自分たちの音楽を知ってもらう手段としてはフェスはすごく有効だし、これからも存在し続けると思うけど、その先のことを考えていかなきゃって思う。特に俺らみたいなバンドはフェスの恩恵を受けた側だから、シーンに対して恩返ししたいんだよね。でもそこをちゃんと考えてるミュージシャンってそんなにいなくて。

石毛輝(the telephones)

石毛 俺は自分たちの音楽も聴いてほしいけど、それ以上に特に若いリスナーにいろんな音楽を聴いてもらって、いい音楽体験をしてほしいって気持ちがずっとあるんですよね。だからthe telephonesは昔からあんまりワンマンやらなくて。

山口 そうだよね。

石毛 サカナクションと初めて対バンしたとき、なんていうのかな、自分たちのやりたいことを極力変えずに、どう大衆に攻めていくかをすごく考えてるバンドなんだって感じて、そういうバンドと俺たちみたいなバンドがいたら横の幅が広がる気がしたんです。the telephonesだけ聴いてるとそれだけなんだけど、the telephonesとサカナクションを一緒に聴くと意味合いが変わってくるというか。その年代のシーンみたいなのができていく気がしたんですよね。THE BAWDIESとかも含めて、音楽ジャンル的にはバラバラなんですけど。

山口 そこにフェスブームみたいなものがちょうどマッチして、俺らの世代のバンドシーンが一気に盛り上がった。若い子たちがフェスで盛り上がる音楽っていうか。

石毛 the telephonesはもともとはフジロックに出るのを目標にしてたんです。でも最近の若い子が目指すのは「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」なんだって。それも別に悪いわけじゃないんですけど、やっぱり俺らとはなんか違うんだよなあと思って。でも今仲のいい後輩とかは似たような志向を持ってて。LUCKY TAPESとかYogee New Wavesとか。SuchmosとかD.A.N.も面白いし。ああいう世代のバンドが次の面白い音楽を作っていってくれたらいいなと思ってるんですけどね。

the telephones presents Last Party ~We are DISCO!!!~

  • 2015年11月3日(火・祝)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
    OPEN 9:30 / START 11:30
    <出演者>
    the telephones / サカナクション / THE BAWDIES / 9mm Parabellum Bullet / dustbox / and more

イープラス 2次プレオーダー抽選受付

2015年7月29日(水)12:00
~2015年8月10日(月)18:00

the telephones ニューアルバム「Bye Bye Hello」2015年7月22日発売 / Virgin Records
「Bye Bye Hello」
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初回限定盤 [CD] 3024円 / TYCT-69084 / Amazon.co.jp
サカナクション カップリング&リミックス集「懐かしい月は新しい月 ~Coupling & Remix works~」2015年8月5日発売 / Victor Entertainment
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the telephones(テレフォンズ)

the telephones2005年に埼玉県浦和にて結成されたロックバンド。メンバーは石毛輝(Vo, G, Syn)、岡本伸明(Syn, Cowbell, Shriek)、長島涼平(B, Cho)、松本誠治(Dr)の4人。ポストパンク / ニューウェイブにも通じるダンスロックサウンドで各地のフェスを席巻し、2009年にEMIミュージック・ジャパン(現:ユニバーサルミュージック)と契約。同年7月にアルバム「DANCE FLOOR MONSTERS」でメジャーデビューを果たした。2011年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブ「SUPER DISCO Hits FINAL !!! ~そして伝説へ~」を開催。その後もコンスタントに新作をリリースし、2013年9月にはPOLYSICSと合同で初のヨーロッパツアーを敢行するなど、ワールドワイドに活動を展開する。結成10周年を迎える2015年3月にキャリア初のオールタイムベストアルバム「BEST HIT the telephones」をリリースし、同年5月に東京・日本武道館で単独ライブを開催。同年7月に7thアルバム「Bye Bye Hello」を発表。11月3日のさいたまスーパーアリーナ公演を最後に無期限で活動を休止する。

サカナクション

サカナクション山口一郎(Vo, G)、岩寺基晴(G)、江島啓一(Dr)、岡崎英美(Key)、草刈愛美(B)からなる5人組バンド。2005年より札幌で活動開始。2013年3月には6枚目となるアルバム「sakanaction」をリリースし、バンド史上初のオリコンCDアルバム週間ランキング1位を記録。トップ10にも4週連続でランクインした。幕張メッセ国際展示場9・10・11ホールでの2DAYS公演、大阪城ホール公演を含むアルバムリリースツアー「SAKANAQUARIUM2013“sakanaction”」では約8万人を動員。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に出場を果たした。2015年8月にはこれまでに発表したシングルのカップリング曲や、さまざまなアーティストによるリミックス音源をまとめた作品「懐かしい月は新しい月~Coupling & Remix works~」をリリース。10月より1年半ぶりとなる全国ツアー「SAKANAQUARIUM2015-2016」を開催する。また10月公開の大根仁監督の映画「バクマン。」の映画音楽を担当することも発表している。