ナタリー PowerPush - 黒崎真音

今後の方向性を提示する 新機軸シングルが完成

「Crimson roses」はドラマチックでサスペンスな雰囲気

──そしてカップリングの「Crimson roses」ですけど、さらに黒崎さんの趣味全開ですよね。

あはははは(笑)。

──「UNDER / SHAFT」以上に重くて、ダークで、ゴシック色が強くて。しかも6分超えの大作で、アレンジはものすごく複雑。正当派のハードロック系バラードが始まったかと思ったら、ひとつめのサビを抜けたところで高速メタルにテンポチェンジするし、そのあとまたバラードに戻って、アウトロの最後でピアノの不協和音がガーンっと鳴ったかと思ったら、その後ろに誰もが知ってる曲のループが薄く入っていたりするし。第一印象は「スゲー」の一言でした(笑)。

サウンドについては、完全に作曲とアレンジを手がけてくださった齋藤真也さんのおかげですね。元々「ライブでミュージカルチックな演出をしてみたい」という希望があって、打ち合わせのとき「ドラマチックで、サスペンスな雰囲気で」っていう断片的なイメージを齋藤さんにお伝えしたんですよ。齋藤さんにはデビュー当初、私が毎週やっていたライブに何回も来てくれたり、いろいろお話をさせていただいたりと、ずっと気にかけていただいていたこともあって「なんとなくわかる気がする」って言ってくださって。そして実際に届いたのが絶対に齋藤さんにしか作れない、あの「スゲー」曲だったんです(笑)。

いろんな要素を詰め込むことでCD全体を楽しんでもらいたい

──詞も「UNDER / SHAFT」とは別の意味での強さをたたえてますよね。

人を殺しちゃってますからね(笑)。

──なぜ殺しちゃいました?

シングル自体をホラーテイストにしようっていうテーマがあったので。というのも、最近「CDの価値が下がってきている」なんておっしゃる方もいますよね。実際にそういう面もあるとは思うんですけど、それなら私はCDを手にすることで新しい楽しみが生まれるようなものを作りたくて。収録曲全てが実は同じ世界観でつながっていたり、歌詞カードにもなんか仕掛けがしてあったりと、このCDケースの四角形の中にいろんな要素を詰め込むことで、CDという商品全体を楽しんでもらいたいんです。だから今回はPVにもホラー要素を入れてみましたし、通常盤と初回限定盤のジャケットが実は対照的な何かを表現していたりもするんですよ。で、そのジャケット撮影が終わったあと「Crimson roses」の制作に取りかかったんですけど、やっぱり「UNDER / SHAFT」やビジュアルの持つダークなイメージと連動させたほうが面白いだろうということで「後悔」をテーマにホラーな物語仕立ての詞を書いてみました。

──あ、ご自身の気持ちを反映させたというよりは、シングル「UNDER / SHAFT」のパッケージとしての美しさを考慮した上で創作した詞なんですか。

いや、もちろん自分の気持ちっていうのも取り入れてはいます。「Crimson roses」は人を愛しすぎたがゆえに殺しちゃったあと、後悔しながらひとり歌っているという物語になってまして。衝動的に人を殺しちゃった人っていうのは、それが本当に自分の意思でやったことなのか、それこそ悪魔みたいなものに乗り移られてやってしまったことなのかわからなくなって、すごく後悔するんじゃないかっていう気がするんです。

──文字どおり「魔が差して」行動しただけだからこそ後悔してしまう、と。

そうですそうです。テンポチェンジしているところの詞は、悪魔に乗り移られて狂気に駆られて歌っているイメージになっていたりしますし。もちろん人を殺したことはないんですけど(笑)、後悔っていうことについて考えていたとき生まれたのが「Crimson roses」の物語なんですよ。

自分の中の2人が常に戦っているイメージ

──それこそ恋愛であったりといった実体験にこそ基づいていないけど、黒崎さんの「後悔感」は色濃く反映されているわけですね。

実はこれ、恋愛の詞じゃないんです。というか多分私、2人いるんですよ。

──へっ?

昔から私の中には、すぐに落ち込むネガティブな自分と、元気になるポジティブな自分の2人がいる気がしていて。どちらが良くてどちらが悪いっていう話ではないんですけど、2人が常に戦っているイメージがあるんです。そして片方の存在に後悔させられることも結構あって。特に20代になってからはその意識が強くなっていて、1stアルバム「Butterfly Effect」に入っている「VANISING POINT」っていう曲も片方の自分に語りかける、もう片方の自分を振り払うっていう内容の曲ですし、これまでにも結構同じテーマで書いていたりするんですよ。「UNDER / SHAFT」も戦う自分と壊すことに疑問を抱いている自分の歌ですし。でも皆さんの中にもそういう面ってあるんじゃないですか?

──多かれ少なかれ二面性はあると思いますよ。ただその二面性を強く自覚した上で、ときには「UNDER / SHAFT」のようによりリアルな言葉で歌ってみたり、ときには「Crimson roses」のような物語に昇華させたりすることのできる人っていうのは相当珍しいとは思いますけど。

そうなんでしょうかね?(笑)

ニューシングル「UNDER / SHAFT」 / 2012年10月17日発売 / ジェネオン・ユニバーサル・エンタテインメント
ニューシングル「UNDER / SHAFT」CD+DVD 1890円 / GNCA-0245
ニューシングル「UNDER / SHAFT」CD 1260円 / GNCA-0246
CD収録曲
  1. UNDER / SHAFT
  2. Crimson roses
  3. UNDER / SHAFT(Inst)
  4. Crimson roses(Inst)
DVD収録内容
  • 「UNDER / SHAFT」PV
黒崎真音(くろさきまおん)

アニソンシーンを中心に活躍する女性シンガー。2000年代のアニソンに多大な影響を受け、音楽活動を開始する。2010年にテレビアニメ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」で全話異なるエンディングテーマを歌唱。これらの楽曲全てを収録したアルバム「H.O.T.D.」でCDデビューを果たす。その後もテレビアニメ「とある魔術の禁書目録II」やOVA「薄桜鬼 雪華録」のエンディングテーマ、映画「リアル鬼ごっこ3」「同4」「同5」の各主題歌、テレビアニメ「薄桜鬼 黎明録」オープニングテーマを担当。2012年10月にはアニメ「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のオープニングテーマを収録した5thシングル「UNDER / SHAFT」をリリースする。