「ヨルムンガンド」と黒崎真音サウンドとの共通点

──今回リリースされる「UNDER / SHAFT」ですけど、今回の「ひと夏の経験」が本当に活きていますよね。硬質なハードロックというこれまでの黒崎作品の路線を踏襲しつつも、サウンドはいつも以上に重いし、かなりダークだし。まさに進化形といった1曲になっています。

以前のインタビューでお話させていただきましたが、タイアップ曲の場合、私はあくまでアニメソングを歌わせて「いただく」立場。だから楽曲には作品の世界観を絶対に取り入れたいと思っていて、今回も「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」をイメージして制作したんですけど、「ヨルムンガンド」って私が前から打ち出したいと思っていた音楽性、ヘヴィロックやメタルにマッチしてるかなと感じたんです。

──銃火器や兵器という、まさにヘヴィメタルのメタファーである鋼鉄を扱った作品ですもんね。

それもあるし、あとは人の命だったり世界平和だったりを扱う、芯のしっかりした甘えのない作品じゃないですか。そういうところについても「私が元々好きだった音楽のジャンルに合わせることができるんじゃないか」って思えたので、普段はタイアップのある楽曲を制作するときにはあまりそういうことはしないんですけど、今回はスタッフに「こういう方向の楽曲でお願いします」って提案させてもらいました。

「UNDER / SHAFT」＝地上と空という両極の間にいる私

──その一方で詞も面白いですよね。「銃口」「黒煙」「グリップ」と「ヨルムンガンド」をイメージさせるキーワード、しかもすごく強い言葉を散りばめつつも、その実はっきりと何かを言い切ってはいない。

なんかそうなっちゃってますよね（笑）。

──最後も「Only one 信じたい」と願望で終わっちゃってますからね。「信じる」と言えてはいません。

信じたいから戦うし、そのために何かを壊すことも恐れないつもりではあるんですけど、壊すことがいいことなのか悪いことなのかはわからない。明日を手に入れるためだからってそれをするのは自分勝手な感じもするんですよ。ただ「そうしないといけないときもあるんだろうな」っていう気持ちもあったので、これから行動する人たちに向けた詞にしてみました。

──そうやって気持ちが揺れている感じも「ヨルムンガンド」の世界観と黒崎さんの共通点だったりします？

そうかもしれませんね。「ヨルムンガンド」って1stシーズンのアニメも全部チェックしたし原作のコミックも全部読むくらい大好きなんですけど、「私は物語の中の誰かにはなれないな」っていう作品でしたから（笑）。登場人物の言ってることって、みんなどこか正しくてどこか間違ってて、矛盾を抱えてますよね？

──ええ。「世界平和のためなら、人の死や多少の犠牲もいとわない」って、矛盾してますもんね。

でもヒロインのココが選択した平和の形も理解できなくはないんですよ。私は絶対嫌なはずなのに、一瞬「戦争っていうのは一概にいいものとも悪いものともいえないのかもなぁ」なんて思っちゃいましたし（笑）。私には発想できないことを突きつけてきて、新しい発見を与えてくれる作品だったから、これからのこととか、揺れる自分、自分の中にある二面性みたいなものをテーマにした詞が出てきたのかもしれませんね。実際タイトルの「アンダーシャフト」って「ヨルムンガンド」に出てくるフレーズではあるんですけど、楽曲表記の「UNDER / SHAFT」は「下＝UNDER」と、空に向かって立っている「軸＝SHAFT」の真ん中に「/＝私」がいる、という意味を込めていたりもしますし。「地上と空という両極の間にいる私」っていうイメージなんですよ。