ナタリー PowerPush - 倉内太
最悪な毎日を軽くするブルース
1人だってことが寂しいし素晴らしい
──ストレートな質問で申し訳ないんですけど、倉内さんはなぜ歌ってるんですか?
なんでですかね……。歌ったり曲作ったりするのってけっこうしんどいんですけどね。やめようかなとか思ってもやめられない。やめられないから歌ってるんだと思う。
──なぜやめられないんでしょう?
うーん、やめたら全部なくなって何も残らない。餓死してしまうから。
──精神的な餓死ということ?
だと思います。たぶん終わっちゃうような気がします。
──歌を作るのはしんどいですか。
自分と向き合うから苦しいんですけど、でも同時に軽くなれるときもあります。人に言えない気持ちを自分の言葉でバレないように告白してる感じがあって。
──それは生きてること自体がしんどいから、歌にもそれが反映されるということですよね。何が倉内さんをそんなにしんどくさせてるんでしょうか?
うーん、しんどいだけでもないとは思うんですけど。でもセックスしても、約束しても、誰かと一緒にいても、結局は1人だっていうのが寂しいし、素晴らしい。
──わかる気がします。
つながりたいけど、つながりたくないみたいな。
──倉内さんが歌ってるのは一貫してそういう歌ですよね。
ふふふ(笑)。だからもっとそういう気持ちをいい感じに表現できるようになりたいです。
──じゃあやっぱりやめられない。
うん、そうですね。イメージとしてはやっぱり当時、あの倉庫で働いてたあの人たち。苗字しか知らないあの人たちが、最悪な毎日で、働いてるときにちょっと鼻歌にできるようなもの。そういう歌を作れたらいいなって思います。
──最後にこの「刺繍」というタイトルの意味を教えてください。
これは、このタイトルを考えなきゃっていうときが、だいぶしんどかった時期で。なんだかどんよりとしたものが体の内側に縫い込まれたような感じがしてた。だから「刺繍」なんです。
収録曲
- 時を踊る少女
- cry max
- 22.5
- イライラキラキラ
- 倉庫内作業員の遊び方
- 失神させたい
- どうしようもなく今
- 愛なき世界
- キッドのポエム
- 倉庫内作業員の休日
- 女の子が笑うと嬉しい
倉内太(くらうちふとし)
1983年埼玉県生まれのシンガーソングライター。小学校5年生でアコースティックギターを弾き始め、2005年にロックバンド・ヨーコ(後のヨーコヨーコ)を結成する。2008年、倉庫内作業員のアルバイトに採用されたことがきっかけとなり、意欲的に楽曲制作に取り組む。2012年11月に「倉内太と彼のクラスメイト」名義で1stアルバム「くりかえして そうなる」を発表し、2013年5月に2ndアルバム「刺繍」をリリース。また同年4月には三浦直之(ロロ)監督による映画「ダンスナンバー 時をかける少女」の音楽を担当した。