フレッシュな感覚と今だから出せる歌声

──今回の楽曲に響いている倉木さんの歌声には、新たな表情を感じさせてくれる部分がありますよね。

今回はファルセットをいかにきれいに出すかっていう部分にこだわったんですよ。自分が得意とするキーの高い部分をうまく引き出してみようって。気持ちを開放して、とにかく楽しんで聴いてもらいたかったので。

──うん。めちゃくちゃ気持ちよさそうに歌っているのが伝わってくるから、聴き手も自然と笑顔になります。

わ、ありがとうございます！ 私自身、本当に気持ちよく笑顔で歌えたので、そういう部分がちゃんと伝わって「なんか心地いいぞ！」って思ってくださるのが一番うれしいです（笑）。今回はどこか歌手になりたての気持ちというか、「またゼロからスタートしたぞ」みたいな気持ちで歌ったところもあったんですよね。

──意識的にそういう気持ちで臨んだんですか？

自然とそうなったんです。曲自体、すごくワクワク感のあるサウンドになっているので、そこに気持ちを合わせて歌っていると、どんどんフレッシュな感覚があふれてきたというか。

──とは言え、その初心の上には15年分のキャリアがあるわけですからね。今しか歌えない歌にもなっていると思います。

ああ、確かにそうですね。自分として新しい世界観に挑戦したシンフォニックライブ（東京フィルハーモニー交響楽団によるフルオーケストラとのコラボレーションライブ。これまで2度開催）の中で、自分の高音の気持ちよさを改めて開拓できたんですよ。だからこそ今回の「Wake me up」ではファルセットにこだわったんです。そういう意味では、明らかにデビュー当時では出せない声だと思うし、今だからこそ歌えた曲ではあると思いますね。

──シンセのリフが印象的な4つ打ちのダンスナンバーでありつつも、全体的に柔らかな表情の歌声を乗せたことで、「魔女の宅急便」という作品にばっちりマッチしましたね。

シンセを使ったこういうタイプの楽曲は声を張ったほうがノリが出てよかったりもするんですけど、今回はあえて柔らかくスーッと歌ったんですね。それがこの曲のよさになると思ったので。サビでワーッと開放的になるサウンド感とともに、キキちゃんが空に向かって軽快に飛んでいくような雰囲気が表現できたんじゃないかなって思います。

2人の倉木麻衣

──今回はビデオクリップをメインに据えたDVDシングルとしてのリリースになるわけですけど、そこにはどんな意図があったんでしょうか？

自分の経験と「魔女の宅急便」という作品をリンクさせた強い思いを込めた曲になったので、音だけではなく、ビジュアルと合わせてよりダイレクトに伝えたいなと思ったんです。監督さんが楽曲からイメージしてくださったアイデアと、私の中にあったアイデアをミックスさせて映像を仕上げていった感じでしたね。

──PVには2人の倉木さんが登場していますね。

あの2人は、以前の自分と、そこからさらにパワーアップした自分みたいなイメージなんですよ（笑）。

──あーなるほど。パワーアップした倉木さんはかなり斬新なスタイリングですよね。ちょっとロックな雰囲気で。

新しい自分自身という意味で、今までにしたことがない前髪を作るっていうチャレンジをしましたね（笑）。ああいったロック的なファッションをすることで、変わっていくんだぞっていう決意を秘めた強い倉木麻衣が表現できたと思います。自分自身、すごく楽しみながらできました。

──楽曲では柔らかいボーカルを披露していますけど、PVではめちゃくちゃ叫んでいる表情のシーンがあったりもして。

この曲のメッセージは私の内側から出てきたものなんだぞっていうのを伝えるために「わー！」っと叫んでみました（笑）。ちょっと今までにない撮り方で、ファンの方にサプライズを起こしたいなって。

──あとは象徴的に扉が出てくるのも印象的でした。

希望を持って新しい扉をどんどん開けていこうよっていう気持ちを表現したくって。去年のツアーのステージセットにも扉があったので、それを観てくださった方は私が伝えたい意味をリンクさせて感じてくれるんじゃないかなって思いますね。

──で、PVではその扉から、「魔女の宅急便」でキキを演じている小芝風花さんが登場するというサプライズもあって。

そうなんですよ！ 試験前の大事なときだったみたいなんですけど撮影現場の九十九里海岸まで来てくださって。彼女は今16歳なので、デビュー当時の自分を思い出しちゃいましたね。私も音楽活動と勉強を両立させるのが大変だったなあって。なので、「テストがんばってね。大丈夫だからね」って、勝手にお姉さんぶってしまいました（笑）。