倉木麻衣が10月27日にニューアルバム「unconditional L♡VE」をリリースした。
コロナ禍の中で、「今の世界には何が必要なのか」「今の自分に何ができるのか」を模索したという倉木は、“unconditional LOVE=無条件の愛”というテーマを掲げてアルバムを作ることを決意。その結晶が、約1年半をかけて丁寧に作り上げた本作となる。「ONE LOVE」(ドラマ「ムショぼけ」主題歌)や「Can you feel my heart」(ドラマ「ラブコメの掟~こじらせ女子と年下男子~」主題歌)、「TOMORROW」(「劇場版オトッペ パパ・ドント・クライ」エンディングテーマ)、「ZEROからハジメテ」(テレビアニメ「名探偵コナン」オープニングテーマ)といった多数のタイアップ楽曲に、新たな魅力を感じさせる新曲を加えた全12曲を収録。そこには今の時代にこそ強く響きうる、さまざまな愛の歌が鳴り響いている。
音楽ナタリーでは倉木麻衣へリモートインタビューを実施。コロナ禍での感情の揺れ動きや、今回掲げた“無条件の愛”というテーマのルーツとも言える社会貢献活動への思い、そして本作に注ぎ込んだアーティストとしてのこだわりまで、じっくりと話を聞いた。
取材・文 / もりひでゆき
“無条件の愛”をテーマに据えた理由
──倉木さんは2019年12月にデビュー20周年を迎えましたが、その後すぐコロナ禍になってしまいましたよね。
そうなんです。20周年という大きな節目を迎えたことを機に、次に向けたステップをあれこれ考えていたんです。いろいろなコラボをしたり、さまざまな場所でライブをお届けできたらな、と思っていたんですけど、それがコロナの影響でできなくなってしまって……。そこで、去年は初めての配信ライブをさせていただいたりしながら、直接会えない分、アルバムとして新曲をたくさんお届けしようという気持ちを持ってスタジオに通う日々を過ごしていましたね。この1年半は制作に没頭する時間になりました。
──世の中が混沌としている中、アーティストとしてできることはやっぱり曲を作り続けることだと。
はい。ファンのみんなに直接会えない時間はすごく寂しいものではありましたけど、「歌手として今やるべきことってなんだろう?」と、考えることもできたんです。また、コロナ禍を過ごす中で生きていることの尊さや意味をより考えるようにもなったりして。「今を生きている私は、どう過ごして行くべきなんだろうか?」とか。そういった時間の中で、私はやっぱりみんなと一緒に愛を大事にしながら過ごしていきたいという気持ちが強くなったので、それを共有できるように、 “unconditional LOVE=無条件の愛”をテーマにした新しいアルバムを作ることを決めたんです。
──ニューアルバムのタイトルであり、テーマとなっている「unconditional LOVE」はコロナ禍を通してたどり着いた思いだったわけですね。
いろんなことを考える時間があったからこそ、今の自分としてはそれをメッセージとして伝えたいと思いました。あとは、昨年から今の環境、状況等でネガティブな気持ちになってしまう人がすごく増えているんじゃないかなと思うんです。コロナ禍の今、不安やストレスなどマイナスの感情を音楽によって少しでも緩和できたらいいなっていう気持ちもあったんです。なので、自分自身も含めて、気持ちが高まるような楽曲を作りたいなと思いながらアルバム制作をしていきましたね。
ボランティアに興味を持ったのは小学生の頃
──倉木さんが考える“無条件の愛”とはどんなイメージでしょうか?
すべての命あるものが、生きていることを幸せと感じられるように……と願う気持ちを持っていること。それが私にとっての“無条件の愛”ですね。誰の心にも“unconditional LOVE”はあると思うんです。でも、ネガティブな感情に襲われて、自分自身すらも愛せない状況になってしまうと、どうしても忘れがちになってしまうものでもあると思うんです。だから私は音楽を通して自分もそうですが、皆さんが本来持っている優しい感情を取り戻せるように、ポジティブになってもらえるようにお手伝いができたらなと常に思っています。
──倉木さんは音楽活動と並行して、社会貢献活動も積極的に行っていますよね。そこにも“無条件の愛”というテーマが大きく関係しているようにも思うのですが、どうですか?
そうですね。私がこういった活動に興味を持ったのは小学生の頃なんです。学校から自分の家までの道をきれいに掃除していく課外活動があって。それを経験したときに、近所の方たちに「ありがとう!」と言ってもらえたことがすごくうれしかったんですよね。よいことをして、周りの人にもハッピーな気持ちになってもらうことは素敵なことだなって、そのときにすごく思ったんです。そういった原体験があったので、歌手になってからもよりよい世界を作っていくために、少しでも力になれたらいいなという思いで、いろいろな活動をさせてもらうようになりました。
今も歌っているのはマイケル・ジャクソンがいたから
──社会貢献活動を本格的に開始したのは2006年でしたよね。
はい。当時、ケニアの副環境大臣をされていた環境保護活動家のワンガリ・マータイさんと対談する機会をいただいて。その経験を通してより環境保護の大切さを実感しましたし、マータイさんから「倉木さんの音楽で世界中の人に地球環境の大切さを伝えてください」というお言葉をいただけたことが大きな後押しにもなりました。そこから自分なりに、社会貢献に関していろいろ発信させていただくようになったのですが、そうするとまた新しいご縁に巡り合うんですね。カンボジアの寺子屋には音楽の授業がないから、現地の子供たちに音楽を通して楽しい思いをさせてあげませんか?とお誘いをいただきました。本当にさまざまな形でどんどんと輪がつながっていくんです。
──そういった活動を通して何かご自身なりの気付きはありましたか?
活動を始めてから22年目になるんですけど、“知る”ということがすごく大事だと改めて教えてもらいました。世界中にはいろんな活動をされている方がいて、それを知ると自分にできることが見えてくるし、私が発信することも、また別の人が何かの活動を始めるきっかけになることがある。そうすると自分の思いはみんなにつながっていると感じられるようになるんですよね。社会貢献というと難しく受け止められがちですけど、小さなワンアクションでもいろんなことが変わっていくと思うので、それを私は音楽を通しても発信していけたらいいなと思うんです。「何かを始めたいけどどうすればいいかわからない」という人にとって、私の存在がひとつのきっかけになってもらえたらいいなって。みんなの笑顔、みんなの幸せが私自身をうれしいと思わせてくれるものなので、これからも温かい愛をどんどん共有していきたいですね。
──そういった物事の考え方という部分で、シンパシーを感じるミュージシャンやアーティストもいたりしますか?
それはもうマイケル・ジャクソンですね。私は彼の持つフィーリングや世界観をすごくリスペクトしていて。マイケルの存在がなければ歌手を目指そうとも思っていなかったと思います。それに、自分はもちろん、すべての人に、そして世界に対しても愛を伝えようとする彼の活動には、私自身すごくインスパイアされているんです。マイケルの存在や、これまでの社会貢献活動の中で出会ってきたたくさんの人たちの思いが、私の音楽活動の根底には流れているんだと思います。それによって今までにやったことのない楽曲にも積極的にトライできる強さも生まれているような気もします。いろんなご縁は自分の音楽の幅を広げてくれるものでもあるので。
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完成させるまで絶対に死ぬことはできない!