Kroi特集|“素のKroi”を見せた初の日本武道館ワンマンを振り返る

昨年3月にメジャー2nd EP「MAGNET」をリリースし、11月からは対バンツアー「Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4」で豪華アーティストたちと競演してバンドとしての地力の強さを音楽リスナーにアピールしたKroi。テレビアニメ「アンダーニンジャ」「ぶっちぎり?!」のテーマ曲を担当したことや、メディア露出の機会が増えたことで彼らの存在を知ったという人も少なくないはず。

そんな勢いに乗るKroiにとって、1月20日に行われた初の東京・日本武道館ワンマンライブ「Kroi Live at 日本武道館」が1つのターニングポイントとなったことは間違いないだろう(参照:Kroiは行けるところまで行く、ファンに誓った初日本武道館ワンマン「もっとデカいステージで踊れたら」)。彼らはこの日、満員の武道館でインディーズ時代から現在に至るまでのバンドの進化を見せつけるように、鬼気迫るパフォーマンスでファンを釘付けにした。今回のインタビューではメンバーに武道館ワンマンを振り返ってもらいつつ、最新シングル「Sesame」や年内リリース予定のメジャー3rdアルバム「Unspoiled」について語ってもらった。

取材・文 / 黒田隆太朗撮影 / TAGAWA YUTARO(CEKAI)
スタイリング / Minoru Sugaharaヘアメイク / Katsuki Chichi

Kroiらしいカオスが詰まった「Sesame」

──今回のインタビューでは1月に行われた初の日本武道館単独公演を皆さんと振り返りたいのですが、まずは武道館ライブの直前にリリースされたメジャー2ndシングル「Sesame」について聞かせてください。この曲はテレビアニメ「ぶっちぎり?!」のオープニングテーマですが、制作はどのように進めていったんですか?

内田怜央(Vo) アニメの世界観に当て書きしました。中華料理屋や日本のお寺、神社みたいなところが出てきたり、いろんな文化が折り混ざった作品なんですけど、そういうごった煮感は自分たちの得意なところでもあると思っていて。ただ、「ぶっちぎり?!」は我々にはない元気さやポップさがあるので、「自分たちにないものを表現してみる」というのが課題でした。それで、ごった煮感にプラスして、サビにパンチ力を加えるというか、アニメに負けないパワーや明るさを落とし込むことは意識しました。

関将典(B) タイアップということもあってキャッチーな曲ではあるんですが、かなりKroiらしい曲になったと思います。異国感みたいなものがごちゃごちゃに入っているカオスさが僕ららしいのかなって。

内田 “ヤンキーアニメ×アラビアン”のような世界観が面白いアニメなので、アラビア要素を曲に入れているんです。

内田怜央(Vo)

内田怜央(Vo)

千葉大樹(Key) 怜央はそういうところを塩梅よく入れ込むのがうまいなと思いました。マイナーキーなんですけど、その中でもちょっとエスニックに聴こえるスケール感を使っていて、そういう細かなニュアンスで成り立っているんですよね。

──長谷部さんはギターを弾くうえで意識したことはありますか?

長谷部悠生(G) 以前「Finch」という曲を作ったときにアコギを入れたことでエキゾチック感が出たので、「Sesame」でもベースのユニゾンのところではアコギを弾いています。

──なるほど。「Sesame」は踊れる曲でもありますよね。

 はい。踊れるかどうかという部分はかなり力を入れました。ストリングスが入ったことで上モノがゴージャスになった分、下のリズム隊がどれだけ縦の踊れる感じを聴かせられるかを意識したというか。

益田英知(Dr) メロディも強い曲だと思っています。僕はドラムを叩くうえで普段は引っかかりを作ることを大事にしているんですけど、今回はあえて引っかかりすぎないような、耳に心地よく自然に展開するように仕上げました。

──冒頭のアレンジはクラシック的な発想からきているんですか?

内田 いえ、どちらかと言うとミュージカル的な発想です。いわゆる「千夜一夜物語」的なイメージ(笑)。

メンバー間でも意見が分かれる曲を作っていきたい

──Kroiはさまざまなジャンルの要素を自分たちの音楽として消化していますが、サウンド面で言うと以前、「MAGNET」のインタビューで千葉さんが「『Cosmic Pillow』のSFっぽいイントロがダサい」と話していたのが印象的だったんですよ(参照:Kroi「MAGNET」インタビュー)。

千葉 Kroiはけっこうクソダサい曲がありますからね。

内田 (笑)。

 最近は「Correction」(2020年7月発表の2ndアルバム「telegraph」の収録曲)もダサいとメンバー間で話題です(笑)。

──それで言うと「Sesame」はいかがですか?

千葉 ちゃんとダサいとこあるよね?

益田 イントロ、ダサいよなあ。

 ラストのサビ前もダサいでしょ?

──ギターのポロロンってところですか?

 そうです。

長谷部 しっかりとした音楽理論を持っている皆さんにストリングスを入れていただいたので、ゴージャスなラスサビに入る前に、そのセクションを聴いてもらうのがすごく恥ずかしかった(笑)。

長谷部悠生(G)

長谷部悠生(G)

千葉 真面目に聴いたら「こいつら曲作るの苦手なんだろうな」と思うはず。

一同 (笑)。

長谷部 逆に言えば、その人たちが絶対できないようなアレンジをやっている。

内田 そうそう。だから楽曲の構造を俯瞰して見るとすべての禁忌を犯しているという(笑)。音楽的な理論に則って作ると「別にこれやんなくてもいいじゃん?」となるんですよね。でも、やっぱり俺らが存在している意味が欲しいので、あえてダサいこともやっていきたい。

千葉 それで言うと「Sesame」のダサさにも意味があるよね。

益田 でも、俺はラスサビ前の部分はいまだにいるのかな?と思いながら聴いている。

内田 本人たちが半信半疑のまま曲を出しているという(笑)。

千葉 最高じゃん、それ。

内田 今後も意見が割れる曲を作っていきたいです。

武道館は特別な場所だった

──1月20日に行われた初の武道館公演、本当にいいライブでした。

 会場が大きくなると準備期間が重要になるので、早めにセットリストを決めないといけなかったんですよ。なので7月くらいから演出チームと打ち合わせを重ねて、夏ぐらいには第1案を出したりと早くから動いていて。その時点ではどういうライブになるのかもわからないので、セットリストの想像も全然つかなくて苦労しました。メンバーやスタッフチームからも意見をもらい、セットリストを組んでからはそれに見合う演出を練っていって、当日は自分たちでも自信を持っていいライブだったと言えるようなパフォーマンスができました。

──Kroiのミュージックビデオのディレクションも手がける新保拓人さんの演出も素晴らしかったです。

千葉 演出については、メンバーはほぼほぼ関さんしか関わっていないので、俺らもゲネや本番で見て「スゲー!」って思いました。

 セットリストをもとにLEDの使い方や全体のバランスを何度もディスカッションしながら仕上げてもらったんですよ。新保さんも根を詰めてライブ前日の朝方まで最終仕上げをやってくださって、ご自身が満足の行くところまでやり切って本番に臨んでくださったことで、あの素晴らしい演出につながったのかなと思います。

──益田さんは当日のライブについて、どんな感想を持っていますか?

益田 当日の天気が曇りのち雨だったので、Kroiっぽいなと思いました。「晴れないんかい!」という。

益田英知(Dr)

益田英知(Dr)

千葉 ……え、それだけ?

 今日の取材、何しに来たんだよ(笑)。

──益田さんのドラム、相当気合いが入っているように見えましたけど。

益田 会場の空気に圧倒されるかな、と思っていたんですよ。でも、いざ武道館のステージに立ったら気持ちが負けることはなかったので、和気あいあいとみんなのプレイに耳を傾けながら演奏できた感じがありました。あと怜央のMCが思ったよりユルくてびっくりしました。

千葉 そうだね。もうちょい堅めでくるかなと思った。

内田 いや、俺もうそういうのはやめようと思って。武道館で堅いMCをやっちゃったら、ずっとやんなきゃいけなくなるから。

千葉 確かにね。MCの命運を決める日だったのかもしれない。

内田 今後大きいステージに立ったときに悟られたくないんですよ。「今日絶対こういうMCだよね」って思われたら少し恥ずかしいじゃないですか(笑)。

──なるほど。

内田 武道館では“今までのKroi”を見せたかったので、いつものステージに近いものを持ってけたらなと思っていました。ただ、それを意識しすぎちゃった結果、逆に変に気合が入ってるところはもありましたね(笑)。やっぱり武道館は立ってみたらすごかったです。それは会場がデカいからというのではなくて、エモい雰囲気になりすぎないようにしようとは思っていたんですけど、MCのときに自然とインディーズの頃を思い出したりして。先輩方もおっしゃる通り、そういう気持ちにさせる武道館のステージは音楽家や表現者にとって特別な場所なんだと実感しました。

長谷部悠生の母も熱くなるステージ

──オーディエンスの雰囲気から何か感じ取るものはありましたか?

内田 お客さんも真剣だった気がしますね。普段のライブではもう少し「関さーん!」みたいな声が上がるんですよ。

益田 でも、悠生のお母さんは客席から「悠生ー!」って叫んでたよ。

──長谷部さんの名前を呼んでいたのは、お母さんなんですか?

長谷部 俺は全然気付かなかったんですけど、メンバーもそうだって言うし、エゴサしたら「たぶんメンバーのお母さんが息子の名前を呼んでてエモかった」って書かれてて。

Kroi

Kroi

──いいですね、そういうの。

長谷部 初めてお母さんの奇行が見られたのは、LIQUIDROOMでのライブだったんですよ。ライブ中に1人だけペンライトを振っている人がいて、やだなあと思っていたんです。そしたら、あとからうちのお母さんだったということが判明して。

 (笑)。

長谷部 それから「目立つのはやめてくれ」って言っていたんですけど、武道館は我慢できなかったみたいです。