音楽ナタリー PowerPush - kradness×Ryu☆

ジャンルを飛び越える歌い手の挑戦

ここまで攻めてる歌い手はいない

──今回のアルバム「KRAD MATRiX」はRyu☆さん作曲の「CRITICAL LINE」をはじめとしたダンスミュージック調の曲と、これまでのkradnessさんが“歌ってみた”動画で公開してきたボカロ曲のカバーの割合が半分ずつぐらいになっています。アルバムを通して聴いてみてkradnessさんの挑戦的な面と、これまでの“歌ってみた”の流れを大事にする面、2つの側面がバランスよく配置されているという印象を受けました。

kradness そうですね。けっこう曲順にこだわったんです。いつも僕の歌を聴いてるファンの方々は、やっぱりロック調のボカロ曲のイメージが強いと思うので、テクノ調の曲ばっかりが続かないように、うまく散りばめる形になったと思います。

──しかもただ曲をバランスよく配置するだけじゃなくて、164さんの代表曲の1つ「天ノ弱」をダブステップリミックスで収録するという新しい試みもされていて。

kradness もともと「天ノ弱」がとても好きだったので、今回はさつき が てんこもりさんにリミックスをお願いしたのと、原曲を作った164さんにもご協力いただいて、いい意味でこの曲をぶち壊してもらおうと思ったんです(笑)。

Ryu☆ 僕も聴いたときは「こういうのアリなんだ」ってビックリしました(笑)。すごくよかったよ。

左からRyu☆、kradness。

kradness もともとの楽曲のよさをちゃんと残してるけど、バンドサウンドを全然ベクトルが違うジャンルの音楽にアレンジするっていう、かなり面白い曲になったと思います。

Ryu☆ 歌い手さんの中でもここまで攻めてる人ってあんまりいないんじゃない? ジャンルをちょっと変えて歌おうって人は。

kradness そうかもしれないです。バンドサウンド寄りな方が多いので、四つ打ち系のダンスミュージックを歌おうっていう人はあまりいないと思います。

Ryu☆ やっぱり差別化は大事だから(笑)。その攻め方はすごくいいと思いますね。

──アルバムの初回限定盤にはkradnessさんが作詞作曲を担当した「終局のリベリオン」が収録されています。この新曲は、前作「KRAD VORTEX」の書き下ろし曲「二重人格サバイバル」とは全然ベクトルが違って。前回が王道のロック系の曲だったのに対し、今回は電子音を混ぜたテクノ調のサウンドなのは、ご自身のベクトルの変化が表れているからなんでしょうか?

kradness そうなんです。今回この曲を書くにあたって、これまで自分が好きだったアニソンやゲーム音楽、テクノ調のダンスミュージックのエッセンスを入れられないかなと考えていて。例えばバトル系のゲームでの戦闘曲とか、アニソンチックな感じを意識しながら曲を作りました。

Ryu☆ この曲って編曲を担当したのがNhatoくんなんだね。たぶんクラブ系では若手ナンバー1の人なんじゃないかな。

kradness そうなんです。今回は僕が作ったメロディをもとにアレンジしてくれて。すごく頼りにさせてもらいました。

──今回の書き下ろし曲の制作はスムーズに進みましたか?

kradness 作曲はNhatoさんのおかげもあってスムーズだったんですけど、作詞が大変でしたね。僕は起承転結を意識して作詞をするんですけど、ちゃんと最後の“結”できっちり終わりを迎えるのがなかなか難しくて。けっこう迷いながら作業をしてました。まだまだ作詞については学ぶべきことが多くて、常に勉強しながら作ってます。

──普段はボーカリストとして活動しているkradnessさんにとって作詞作曲はどういう位置付けなんでしょうか?

kradness

kradness 実は僕、作家としての活動にもすごく興味があるんです。僕は今、歌い手として活動してるわけですが、歌声ってどんどん変化していくから、ずっと同じ声でそれこそ50歳、60歳まではやっていけないと思っていて。だから自分が音楽で今後もずっとやっていくためには、作詞作曲ができることが1つの強みになるし、僕が作った曲を素敵な声のボーカリストに歌ってもらえたらすごくうれしいかなって思ってるんです。

Ryu☆ すごく先を見てるんだね。曲を作れるの本当に強みになるから、すごくいいと思うよ。

kradness でも今はまだまだボーカリストとして活動できるから、自分が好きなアニソンやゲーム音楽っぽい曲を作って、自分で歌っていくのがすごく面白くて。どんどんチャレンジしていきたいですね。

「Seventh Heaven」は自分をアゲて作ったアルバム

──Ryu☆さんも2月に7thアルバム「Seventh Heaven」出したばかりです。以前ナタリーでは5thアルバム「Plan 8」のとき特集させていただいてますが(参照:Ryu☆「Plan 8」インタビュー)、Ryu☆さん自身がものすごく楽しんで作られた作品なんじゃないかという印象を受けました。

Ryu☆ 実際メチャクチャ楽しんで作りました。「Plan8」のあとに「We're so Happy」という“聴かせる曲”を多く盛り込んだ、ちょっと落ち着いた感じのアルバムを出したんですよ。その反動もあって、今回は正反対にテンションをふりきってやろうと。

kradness 僕も今回の「Seventh Heaven」を聴かせてもらったんですけど、Ryu☆さんらしいBPMが速めの曲がたくさん入ってて、テンションがすごく上がりました。

Ryu☆ ありがとうございます。「Plan8」って、自分の中ではわりと出し尽くした感じがあって。かなり手応えを感じた作品だったんですけど、今回は「Plan8」以上にハイテンションな作品を目指そうと思って作りました。「とりあえず自分をひたすらアゲよう」と思って、エナジードリンクを飲んで。たまにアルコールも入れてガンガン上げて作ってました。

kradness アルコール入れながらDTMができるってすごいですね!

Ryu☆

Ryu☆ えーとですね、曲を組むことはできるけど、音は作れないですね。お酒飲むと、低音がわかんなくなっちゃうから(笑)。

──収録されている曲も多彩で。ニコ動などで人気の“声ネタ”を盛り込んだ曲から、和の雰囲気のものや、チップチューンふうの音も入っています。

Ryu☆ そうですね。やりたいことをいろいろ詰め込んでいます。アルバム9曲目の「R U Ready?」ではファンコットに挑戦したんです。ファンコットっていうのはインドネシアのディスコミュージックなんですけど、四つ打ちじゃないハッピーハードコアみたいな感じで。

kradness 全然知らなかった。

Ryu☆ 4年ほど前にネットでファンコットを知って、いつかやらなきゃと思ってずっと研究してたんですよ。それが今回やっと形になったのでアルバムに入れています。今回のアルバムは楽しみながらも、自分が新しく挑戦したところと、古きよき自分のファンが好きなところをうまく混ぜながら、いい感じにまとめられたかなと思っています。

イベントに合った盛り上げ方を

──3月22日には「EXIT TUNES DANCE PARTY -beatnation summit 2015-」と題したライブイベントが開催されます。このイベントにはRyu☆さんとkradnessさんの出演が決定していますが、これはどういうイベントになるんですか?

Ryu☆ 2006年に「BEMANI」シリーズの作曲家やコンポーザーたちを集めてbeatnationというレーベルがKONAMIで誕生したんですよ。それで翌年の夏に、beatnationのアーティストが全員出る「beatnation summit」というライブをやりまして。今回はそれ以来、7年半ぶりの「beatnation summit」になります。

──「BEMANI」ファン待望のイベントというわけですね。

Ryu☆ もちろんその間に「BEMANI」系のイベントをやることもあったけど、「beatnation summit」としては7年半ぶり。今はガッツリ準備しているところです。

──イベントではお2人で「CRITICAL LINE」を披露するのでしょうか?

kradness はい。実は先日、「JAEPO」っていうイベントのKONAMIさんのブースでRyu☆さんと一緒にステージに立って、「CRITICAL LINE」を歌わせてもらったんです。KONAMIさんのブースだけあって、お客さんは音ゲーのファンが多くて、いつも立ってる「ETA」のステージとは全然違ったのが印象的で。

──どういう違いを感じましたか?

kradness ビーマニ系の曲は四つ打ちのダンスミュージックが多いから縦ノリが主流なんですよね。いつも僕が出ているETAとは全然お客さんの反応も違って。僕もイベントに合った煽り方や盛り上げ方を覚えていかないといけないなと思いました。

左からkradness、Ryu☆。

──イベントではお2人でステージに立つんですよね。

Ryu☆ そうですね。まだ予定ですけど、せっかくカッコいいPVができたので、映像もガッツリ流しながら派手にやりたいと思ってるんです。

kradness 僕もすごく楽しみです。

Ryu☆ メチャメチャ盛り上げましょう。

ライブ情報

EXIT TUNES DANCE PARTY -beatnation summit 2015-

  • 2015年3月22日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
    OPEN 15:00 / START 16:00
  • <出演者>
    MAIN ACT:beatnation(dj TAKA / DJ YOSHITAKA / L.E.D. / Sota Fujimori / 猫叉Master / kors k / Ryu☆)
    GUEST:TOMOSUKE / VENUS / wac / TAG / kradness / 松下 / Mayumi Morinaga / Xceon / Prim / Starving Trancer / Dai. / Halka / Yossy / and more
    OPENING ACT:beatnation RHYZE(DJ TOTTO / PHQUASE / かめりあ / P*Light / Hommarju)
kradness ニューアルバム「KRAD MATRiX」2015年3月4日発売 / EXIT TUNES
初回限定盤 [CD+DVD] 2808円 / QWCE-00425 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 2268円 / QWCE-00426 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. CRITICAL LINE / Ryu☆ feat. kradness
  2. 鬼KYOKAN / じーざす(ワンダフル☆オポチュニティ!)feat. kradness×れをる
  3. 愛迷エレジー(KRAD MATRiX Ver.) / DECO*27 feat. kradness
  4. contourless / かめりあ feat. kradness
  5. ブレインズガイスト / うたたP feat. kradness
  6. ノーナイデンパ / YM feat. kradness
  7. 威風堂々 / 梅とら feat. kradness
  8. ドゥーセドーケ / YM feat. kradness
  9. ぼくらの16bit戦争(KRAD MATRiX Ver.) / sasakure.UK feat. kradness
  10. フィクションコール / Last Note. feat. kradness
  11. 天ノ弱(dubstep remix) / さつき が てんこもり feat. kradness
  12. Chromatic / みきとP feat. kradness
  13. -ERROR / niki feat. kradness
  14. 終極のリベリオン / kradness(※初回限定盤のみ収録)
初回限定盤DVD収録内容
  • CRITICAL LINE(MV)
  • 鬼KYOKAN(MV)
  • kradTVディレクターズカット版
Ryu☆ ニューアルバム「Seventh Heaven」2015年2月4日発売 / 2700円 / EXIT TUNES / QWCE-00432 / Amazon.co.jp
「Seventh Heaven」
収録曲
  1. Second Heaven 2k15 / Ryu☆
  2. Din Don Dan(Ryu☆Remix) / Ryu☆ feat. Mayumi Morinaga
  3. PARADISE BLUE(SH Mix) / Ryu☆
  4. Illusion(SH Mix) / Ryu☆
  5. Sakura Mirage(Extended Mix) / Ryu☆
  6. Seventh Heaven / Ryu☆
  7. Alive or Alive?(Ryu☆Remix) / Another Infinity feat. Mayumi Morinaga
  8. By Your Side / Ryu☆
  9. R U Ready? / Ryu☆
  10. Run Run(Ryu☆Remix) / Ryu☆
  11. Age de la Lune / 青龍
  12. Tonnerre / 雷龍
  13. 桜月風 / 桜龍
  14. Maser! Maser! / 機龍
  15. Narcissus At Oasis(白龍Remix) / Ryu☆
kradness(クラッドネス)

動画共有サイトを中心に活躍する男性シンガー。2011年に“歌ってみた”動画を初投稿。2012年に投稿した「いーあるふぁんくらぶ」の歌唱動画がニコニコ動画で10万再生以上を記録し、殿堂入りを果たす。ネット上での活動だけでなく「EXIT TUNES ACADEMY」や「XYZ TOUR」といったライブイベントにも多数出演している。2013年には1stアルバム「KRAD VORTEX」をリリース。2015年3月に2ndアルバム「KRAD MATRiX」を発表した。

Ryu☆(リュウ)

男性ダンストラッククリエイター。2000年、コナミの音楽ゲーム「beatmania IIDX 3rd style」の公募に送った楽曲が同ゲームに採用され、以来「BEMANI」シリーズの主力トラックメーカーとして活躍。現在に至るまでゲームのサントラを多数手がけている。2009年にRyu☆名義の1stアルバム「starmine」を発表し、翌年の2ndアルバム「AGEHA」はオリコン週間アルバムランキング最高17位をマーク。2011年には3rdアルバム「Rainbow☆Rainbow」、2012年には4thアルバム「Sakura Luminance」をリリースした。またその一方でトラックメーカーStarving Trancerとプロデューサーユニット、Another Infinityを結成。「BEMANI」シリーズに楽曲を提供するほか、女性ボーカリストDaisy×Daisyの歌うテレビアニメ「FAIRY TAIL」のオープニングテーマ「永久のキズナ」を制作し、Another Infinity feat. Mayumi Morinaga名義のアニメ「ゆゆ式」エンディングテーマ「Affection」を発表している。2015年2月、7作目となるアルバム「Seventh Heaven」をリリースした。