音楽ナタリー PowerPush - kradness×Ryu☆
ジャンルを飛び越える歌い手の挑戦
kradnessが2ndアルバム「KRAD MATRiX」をリリースした。
今作には「BEMANI」シリーズのトラックメーカーとして知られるRyu☆作曲の「CRITICAL LINE」や、歌い手・れをるとのデュエット曲「鬼KYOKAN」、kradness自身が作詞作曲を手がけた「終極のリベリオン」などを収録。アルバムはダンスミュージックからおなじみのボカロ曲カバーまで幅広い楽曲を楽しむことができる1枚に仕上げられている。
アルバムの発売を記念して、ナタリーではkradnessとRyu☆の対談を企画。「CRITICAL LINE」制作の背景や、別ジャンルで活躍する両者から見たネットと音楽の関係について思うことなどを話してもらった。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 上山陽介
音ゲーサウンドד歌ってみた”
──今作には「CRITICAL LINE」というRyu☆さんの書き下ろし曲が収録されています。歌い手さんに楽曲を提供するのは今回が初めてですか?
Ryu☆ そうですね。声優さんに曲を書くことはありましたけど、ニコ動で活動する歌い手に曲を書いたのは初めてです。
──kradnessさんはそもそもどういう経緯でRyu☆さんに楽曲提供を依頼したんでしょうか?
kradness もともと僕が音ゲー好きで、Ryu☆さんの「Second Heaven」とかは「beatmania IIDX」や「SOUND VOLTEX」でもプレイしていたんです。同じEXIT TUNES所属だし「Ryu☆さんが書いた曲を歌ってみたい」と思って提案させていただきました。
Ryu☆ ありがとうございます。もう「喜んで!」って感じですぐにOKの返事をしました。ただ「EDMをお願いします」っていうお題をいただいて、ちょっとビックリしたんですよ。「そうくるか」と思って。
──どちらかというとRyu☆さんはハッピーハードコアやユーロビート的なサウンドが多い印象があります。
Ryu☆ そうですね。キャッチーな感じの音楽が多いんです(笑)。これまでEDMに近いサウンドを作ったことはあったんですけど、しっかり取り組んだことはなくて。だからいろいろ研究しながら作ったのが今回の「CRITICAL LINE」なんです。
kradness すいません、大変なお願いをしてしまったみたいで。
Ryu☆ いえいえ。おかげですごくいい勉強になりました。
“まさに音ゲー”な1曲
──kradnessさんは最初にこの曲を聴いたとき、どういう印象を持ちましたか?
kradness シリアスな感じがすごくカッコよくて、歌録りが楽しみで仕方がなくなった記憶があります。Ryu☆さんの曲の中では若干BPMが遅めなんですけど、ライブでやったら絶対お客さんのテンションが上がる曲だなと思いました。
Ryu☆ ありがとうございます。ちなみに「CRITICAL LINE」っていうタイトルは僕が付けたんですよ。
──「CRITICAL」は、kradnessさんがよくプレイしているというKONAMIの音楽ゲーム「SOUND VOLTEX」でプレイヤーの操作がうまくいったときに出てくる言葉で、「CRITICAL LINE」はこのゲームにも収録されていますよね。ゲームのことをイメージしてタイトルを付けたんでしょうか?
Ryu☆ 確かにイメージはしてたけど、それだけじゃないですね。kradnessくんの“歌ってみた”の代表曲「WAVE」の雰囲気と、ボルテ(※「SOUND VOLTEX」の略称)のイメージ、そこに自分が作った曲の雰囲気をかけ合わせた着地点がこのタイトルだったんです。
kradness 「CRITICAL」って、ボルテの中ではプレイヤーを鼓舞する言葉なんです。“まさに音ゲー”って感じのタイトルですごくうれしかったです。
Ryu☆ 歌詞もいい感じに仕上がっていますよね。
kradness 作詞はかなきさんという方に担当していただいています。かなきさんには依頼の際に「CRITICAL LINE」というタイトルに合わせて「“的を射る”ような、シリアスな雰囲気の歌詞を」とお願いしていて。曲調に合わせてリアリティあふれる歌詞を書いていただいたので、すごく気に入っています。
初めての実写PV
──「CRITICAL LINE」はkradnessさん本人が出演しているビデオクリップが公開されています。実写でPVに出るのは今回が初めてですよね?
kradness 初めてです。
Ryu☆ PV、すごくカッコよかったよ。
──なぜ実写PVにしようと?
kradness 「CRITICAL LINE」はいつもとは違う、新しい感じのPVにしたくて。今回PVの監督をしていただいた大月荘さんにボルテが大好きな事を話したら、ゲームにすごく興味を持ってくれたんです。PVにするならボルテの筐体とか映像も使えたらいいなという話が出て、メーカーのKONAMIさんにも協力していただき、実際にボルテをプレイしている僕の映像が出てくる、という作品に仕上がりました。
──YouTubeやニコニコ動画などで反応を見ていると、実写であることに驚いているファンも多いようでした。
kradness そうなんですよ。僕のビジュアルってこれまでずっと二次元のイラストだったので、驚きのコメントをたくさんいただきました。
──PVではkradnessさんの顔は影で隠れていますが、実写のPVに出演するのに抵抗感はなかったんですか?
kradness 抵抗はありました。僕は主にネットで活動しているからよくわかるんですけど、ネット上の情報っていいことも悪いこともすぐに拡散されて広がってしまうので。例えば自分の姿が拡散されてしまうことで、どういうリスクが伴うのかというイメージができなかったんです。でも、今回は実写のPVに挑戦してみて本当によかったと思っています。
Ryu☆ それはファンのみんなが喜んでくれたから?
kradness そうですね。それと実写じゃないと今回のような映像作品はできなかったと思いますし。
──kradnessさんを含め、歌い手の多くはライブで普通に顔を出して歌っていますが、ライブで姿を現すのと、映像に出演するのはやっぱり違うんでしょうか?
kradness ライブってこれまでずっと聴いてくれていた人が集まってくれてるから、ある意味安心感があるというか、全然不安がないんですよね。ただPVだと、僕の姿を見る方々が不特定多数になるので、やっぱり心構えは違いましたね。
Ryu☆ kradnessくんはイケメンなんだから、バンバン出したほうがいいのに。
kradness 今回、アルバムの通常盤のジャケットに僕の写真が使われているんです。けっこういい手応えを感じたので、今後は徐々に姿を出していくことにも挑戦するかもしれません(笑)。
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- kradness ニューアルバム「KRAD MATRiX」2015年3月4日発売 / EXIT TUNES
- 初回限定盤 [CD+DVD] 2808円 / QWCE-00425 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 2268円 / QWCE-00426 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- CRITICAL LINE / Ryu☆ feat. kradness
- 鬼KYOKAN / じーざす(ワンダフル☆オポチュニティ!)feat. kradness×れをる
- 愛迷エレジー(KRAD MATRiX Ver.) / DECO*27 feat. kradness
- contourless / かめりあ feat. kradness
- ブレインズガイスト / うたたP feat. kradness
- ノーナイデンパ / YM feat. kradness
- 威風堂々 / 梅とら feat. kradness
- ドゥーセドーケ / YM feat. kradness
- ぼくらの16bit戦争(KRAD MATRiX Ver.) / sasakure.UK feat. kradness
- フィクションコール / Last Note. feat. kradness
- 天ノ弱(dubstep remix) / さつき が てんこもり feat. kradness
- Chromatic / みきとP feat. kradness
- -ERROR / niki feat. kradness
- 終極のリベリオン / kradness(※初回限定盤のみ収録)
初回限定盤DVD収録内容
- CRITICAL LINE(MV)
- 鬼KYOKAN(MV)
- kradTVディレクターズカット版
- Ryu☆ ニューアルバム「Seventh Heaven」2015年2月4日発売 / 2700円 / EXIT TUNES / QWCE-00432 / Amazon.co.jp
- 「Seventh Heaven」
収録曲
- Second Heaven 2k15 / Ryu☆
- Din Don Dan(Ryu☆Remix) / Ryu☆ feat. Mayumi Morinaga
- PARADISE BLUE(SH Mix) / Ryu☆
- Illusion(SH Mix) / Ryu☆
- Sakura Mirage(Extended Mix) / Ryu☆
- Seventh Heaven / Ryu☆
- Alive or Alive?(Ryu☆Remix) / Another Infinity feat. Mayumi Morinaga
- By Your Side / Ryu☆
- R U Ready? / Ryu☆
- Run Run(Ryu☆Remix) / Ryu☆
- Age de la Lune / 青龍
- Tonnerre / 雷龍
- 桜月風 / 桜龍
- Maser! Maser! / 機龍
- Narcissus At Oasis(白龍Remix) / Ryu☆
kradness(クラッドネス)
動画共有サイトを中心に活躍する男性シンガー。2011年に“歌ってみた”動画を初投稿。2012年に投稿した「いーあるふぁんくらぶ」の歌唱動画がニコニコ動画で10万再生以上を記録し、殿堂入りを果たす。ネット上での活動だけでなく「EXIT TUNES ACADEMY」や「XYZ TOUR」といったライブイベントにも多数出演している。2013年には1stアルバム「KRAD VORTEX」をリリース。2015年3月に2ndアルバム「KRAD MATRiX」を発表した。
Ryu☆(リュウ)
男性ダンストラッククリエイター。2000年、コナミの音楽ゲーム「beatmania IIDX 3rd style」の公募に送った楽曲が同ゲームに採用され、以来「BEMANI」シリーズの主力トラックメーカーとして活躍。現在に至るまでゲームのサントラを多数手がけている。2009年にRyu☆名義の1stアルバム「starmine」を発表し、翌年の2ndアルバム「AGEHA」はオリコン週間アルバムランキング最高17位をマーク。2011年には3rdアルバム「Rainbow☆Rainbow」、2012年には4thアルバム「Sakura Luminance」をリリースした。またその一方でトラックメーカーStarving Trancerとプロデューサーユニット、Another Infinityを結成。「BEMANI」シリーズに楽曲を提供するほか、女性ボーカリストDaisy×Daisyの歌うテレビアニメ「FAIRY TAIL」のオープニングテーマ「永久のキズナ」を制作し、Another Infinity feat. Mayumi Morinaga名義のアニメ「ゆゆ式」エンディングテーマ「Affection」を発表している。2015年2月、7作目となるアルバム「Seventh Heaven」をリリースした。