音楽ナタリー PowerPush - kradness×Ryu☆

ジャンルを飛び越える歌い手の挑戦

ボルテに僕の曲が入るなんて

──kradnessさんは「SOUND VOLTEX」のヘビーユーザーだそうですね。

kradness そうなんです。最初にプレイしてからもう2年半ぐらい経ちますけど、いまだに熱中してやってます。

──2013年にkradnessさんがリリースした1stアルバムのタイトルが「KRAD VORTEX」で、これはもちろん……。

kradness ゲームのボルテから来ています(笑)。ちょうどアルバムを作る頃にめちゃくちゃハマってて。それと英語の「VORTEX」には「旋風」という意味があるので、1stアルバムで旋風を巻き起こしたいって意味も込めてタイトルにしました。当時はまさかボルテに僕の曲が入ることになるなんて、思ってもみませんでしたけど(笑)。

Ryu☆ ボルテ以外の音ゲーもやるの?

kradness

kradness 「beatmania IIDX」とか「Dance Dance Revolution」もやったことはあったんですけど、一番熱中したのはボルテですね。ボルテって鍵盤だけじゃなくて「アナログデバイス」っていう“つまみ”があるんですけど、それを回す爽快感がたまらないんですよ。

Ryu☆ あの“つまみ”が肝なんだよね。ド派手にエフェクトもかかるから、自分がちゃんとプレイしてる感じが出る。

──「SOUND VOLTEX」にはRyu☆さんの曲も数多く入っていますが、kradnessさんがRyu☆さんを知るきっかけも音ゲーだったんですか?

kradness そうですね。「beatmania」だったか「Dance Dance Revolution」だったかは覚えてないんですけど、音ゲーをやっていると「あ、この曲もRyu☆さんだ」ってことがあって。

Ryu☆ お、ニコ動じゃないんですね。

kradness ニコ動で公開されている“かっこいい音ゲー曲集”みたいな動画で聴いたことはあったかもしれないんですけど、しっかりRyu☆さんの曲を意識したのはやっぱり音ゲーですね。当時はまさかこうやって一緒にお仕事ができるなんて夢にも思っていなかったです。

Ryu☆ 最近は「ニコ動で知りました」っていう人も多いんだけど、海外から突然Facebookとかでメッセージが飛んでくることもありますね。「jubeat」とか「REFLEC BEAT」、「SOUND VOLTEX」は韓国や中国といったアジアを中心に海外でも人気ですから。北米では昔から「Dance Dance Revolution」が人気で、それで知りましたというメッセージを送ってくれる人もいます。kradnessくんはどう? ニコ動で活動してても海外から反応ってあるでしょ?

kradness ニコ動はやっぱり中国とか台湾とか、基本的にアジア中心ですね。僕はYouTubeにも動画をアップロードしてるんですけど、そこだと英語のコメントが多いんですよ。

Ryu☆ すごいよね。日本語の曲でも全然気にせずに聴いてくれて、ファンになってくれるんだから。

kradness そうなんですよね。日本語だけど受け入れてもらって、反響があるのは面白いです。

音楽にとってネットは超重要な媒体

──以前、ナタリーでEXIT TUNESが主催するイベント「ETA」の特集のときに(参照:「EXIT TUNES ACADEMY FINAL SPECIAL 2014」特集)、Ryu☆さんはニコ動などで活動しているゲームの実況者に注目しているとおっしゃっていましたが、“歌ってみた”などのネットミュージックシーンはどう見ているんでしょうか?

Ryu☆ 最近は“音楽=ネットで聴く”みたいな状況が広がっていると思うんですよ。若い子に「何で音楽聴いてるの?」って質問すると「YouTubeで」って返ってくる。だからCDが売れないって言われることが多いけど、今、手売り文化中心の同人シーンがどんどん盛り上がっているんです。

kradness

kradness 歌い手さんの中でも、自分で音源を制作して手売りしている人は多いですね。

Ryu☆ そう。結局インディーズのレーベルすら通してない音源をどうやって売るのかっていうと、ネットで知ってもらうしかないんだよね。だから音楽にとってネットはメディアとして超重要だと思ってます。

kradness まさに僕がこうやってCDを出すことができるのは、ネットのおかげですし。

Ryu☆ kradnessくんはまさに実感してると思うんだけど、「YouTubeで聴く」「ニコ動で観てる」っていう子も、興味を持てばCDを買ってくれるんだよね。だからプラケースの色に凝ってみるとか、ジャケットを作り込んでみるっていう戦略はまだまだ通用する。結局はアイデア勝負なんじゃないかなって思っています。

──動画を公開する側であるkradnessさんは、ネットをうまく使おうと何か工夫されていることってありますか?

kradness あまり戦略的に何かをやっているわけではないんですけど、僕はニコ動とYouTube両方で曲を公開していて。2つのサイトだと注目される曲が違うのが面白いなと思っているんです。

Ryu☆ あ、そうなんだ。

kradness ニコ動だと王道な感じのボカロ曲がすごく伸びるんですけど、YouTubeだとダンスチューンとういうか、ちょっとテクノっぽい曲が伸びる傾向にあって。そもそもVOCALOIDの曲はロック調の曲が多いっていう背景があるからなんですけど、ニコ動を中心に活動している歌い手さんで、テクノ押し、EDM押しの方ってあまり見当たらないんです。だからこれはチャンスかなと思って、「WAVE」とかボカロ曲の中でもテクノ寄りの曲を意識して歌っているんです。

Ryu☆

Ryu☆ YouTubeのほうが海外ユーザーが多くて、海外と日本で注目される曲が違うからかもしれないね。ここ数年、洋楽のチャートではEDMの曲が上位を占めててすごく人気なんだけど、日本でそこまでは流行しなかった感じがして。自分がクラブによく行ってたトランスブームの1998年から2000年ぐらいはそういうズレってなかったと思うんだけど。2000年以降、Daft Punkが世界的ヒットを出して、ベースが「ブリブリ」鳴り始めてからかな、かなりズレちゃった。でも昨年から今年にかけてEDMも日本で本格的にきていると思うんです。SEKAI NO OWARIの「Dragon Night」がEDM調のアレンジなんだけど、あれがすごく広まったから。あと三代目 J Soul Brothersとかもですね。

kradness 確かに三代目 J Soul Brothersの「O.R.I.O.N.」とかはド直球のEDMでしたし。日本でも海外の流行に敏感な人はいて、けっこう作家さんとかもEDM寄りで楽曲を作ってきてるなって感じはしてるんですよ。

──kradnessさんがEDMに興味を持ったきっかけはなんだったんですか?

kradness もともとはアニソンやゲーム音楽が好きだったのが入り口ですね。8bitの音とかがいいなって思っていたのが、だんだん電子音全般が好きになってきて。バンドサウンドももちろん好きなんですけど、今は本当にEDMにハマっています。

Ryu☆ kradnessくんは世界的な流行のほうに足を踏み出してるから、日本では先駆けている存在になってると思うよ。

kradness ニューアルバム「KRAD MATRiX」2015年3月4日発売 / EXIT TUNES
初回限定盤 [CD+DVD] 2808円 / QWCE-00425 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 2268円 / QWCE-00426 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. CRITICAL LINE / Ryu☆ feat. kradness
  2. 鬼KYOKAN / じーざす(ワンダフル☆オポチュニティ!)feat. kradness×れをる
  3. 愛迷エレジー(KRAD MATRiX Ver.) / DECO*27 feat. kradness
  4. contourless / かめりあ feat. kradness
  5. ブレインズガイスト / うたたP feat. kradness
  6. ノーナイデンパ / YM feat. kradness
  7. 威風堂々 / 梅とら feat. kradness
  8. ドゥーセドーケ / YM feat. kradness
  9. ぼくらの16bit戦争(KRAD MATRiX Ver.) / sasakure.UK feat. kradness
  10. フィクションコール / Last Note. feat. kradness
  11. 天ノ弱(dubstep remix) / さつき が てんこもり feat. kradness
  12. Chromatic / みきとP feat. kradness
  13. -ERROR / niki feat. kradness
  14. 終極のリベリオン / kradness(※初回限定盤のみ収録)
初回限定盤DVD収録内容
  • CRITICAL LINE(MV)
  • 鬼KYOKAN(MV)
  • kradTVディレクターズカット版
Ryu☆ ニューアルバム「Seventh Heaven」2015年2月4日発売 / 2700円 / EXIT TUNES / QWCE-00432 / Amazon.co.jp
「Seventh Heaven」
収録曲
  1. Second Heaven 2k15 / Ryu☆
  2. Din Don Dan(Ryu☆Remix) / Ryu☆ feat. Mayumi Morinaga
  3. PARADISE BLUE(SH Mix) / Ryu☆
  4. Illusion(SH Mix) / Ryu☆
  5. Sakura Mirage(Extended Mix) / Ryu☆
  6. Seventh Heaven / Ryu☆
  7. Alive or Alive?(Ryu☆Remix) / Another Infinity feat. Mayumi Morinaga
  8. By Your Side / Ryu☆
  9. R U Ready? / Ryu☆
  10. Run Run(Ryu☆Remix) / Ryu☆
  11. Age de la Lune / 青龍
  12. Tonnerre / 雷龍
  13. 桜月風 / 桜龍
  14. Maser! Maser! / 機龍
  15. Narcissus At Oasis(白龍Remix) / Ryu☆
kradness(クラッドネス)

動画共有サイトを中心に活躍する男性シンガー。2011年に“歌ってみた”動画を初投稿。2012年に投稿した「いーあるふぁんくらぶ」の歌唱動画がニコニコ動画で10万再生以上を記録し、殿堂入りを果たす。ネット上での活動だけでなく「EXIT TUNES ACADEMY」や「XYZ TOUR」といったライブイベントにも多数出演している。2013年には1stアルバム「KRAD VORTEX」をリリース。2015年3月に2ndアルバム「KRAD MATRiX」を発表した。

Ryu☆(リュウ)

男性ダンストラッククリエイター。2000年、コナミの音楽ゲーム「beatmania IIDX 3rd style」の公募に送った楽曲が同ゲームに採用され、以来「BEMANI」シリーズの主力トラックメーカーとして活躍。現在に至るまでゲームのサントラを多数手がけている。2009年にRyu☆名義の1stアルバム「starmine」を発表し、翌年の2ndアルバム「AGEHA」はオリコン週間アルバムランキング最高17位をマーク。2011年には3rdアルバム「Rainbow☆Rainbow」、2012年には4thアルバム「Sakura Luminance」をリリースした。またその一方でトラックメーカーStarving Trancerとプロデューサーユニット、Another Infinityを結成。「BEMANI」シリーズに楽曲を提供するほか、女性ボーカリストDaisy×Daisyの歌うテレビアニメ「FAIRY TAIL」のオープニングテーマ「永久のキズナ」を制作し、Another Infinity feat. Mayumi Morinaga名義のアニメ「ゆゆ式」エンディングテーマ「Affection」を発表している。2015年2月、7作目となるアルバム「Seventh Heaven」をリリースした。